見出し画像

Myセラピストは球団公式YouTube #球春到来

 2月に入ってからというもの、暇さえあれば YouTube ばかり見ている。「暇さえあれば」と書いたけれど、そもそも暇なんてない。

 立春をとうに過ぎたというのに空気を読まず降ってくる今年の雪のように、異動間近のわたしの上にも空気を読まない新たな仕事が投下されてきて、もっぱら仕事中は脳から煙が出ている。それでなくとも小さな可愛らしい脳味噌なのだ。オーバーヒートの ながら運転である。危険きわまりないので、頭のうえに砂時計を乗せて仕事するか、脳内メモリを増設したい。


 オーバーヒートしたまま帰宅した脳の冷却装置ラジエーターこそ、YouTube だ。もちろん、なんでも作用するというわけではない。よく効くのはプロ野球関連の動画で「川上井端のすべらない話」は大好物。でも、ラジエーターとしてとりわけ優秀なのは、球団公式チャンネルの春季キャンプ中継だったりする。


 残業して急いで帰宅し、コートと荷物を片付け、そのままキッチンに立つ。ここからが肝心。もやもやしたまま調理に向かってはいけない。怨念を野菜にぶつけ、包丁を肉にぶっ刺すことになりかねないからである。
 スタンドにスマホを立てかけ、午前と午後に分けて投稿されているキャンプ映像をスタートさせる。沖縄の北谷ちゃたんで開幕に向けて練習を重ねているドラゴンズ一軍の選手たちの姿が、次々と映し出されていく。ゆったり着たユニフォームの上からも、自主トレで大きくなった身体がわかり、そのめざましい変化に目尻が下がる。

 手を洗い、出汁をとっていると、小気味いいミットの音が響きわたる。キャッチャーからの声かけ、審判さんの判定、ピッチャーのリリース時に漏れる声、ボールが風を切る音までが聞こえてくる。この音はブルペンだ!と、画面を見ずとも思い当たる。投げこみを続ける音声を聞きながら、じゃがいもと人参を切り、玉ねぎをくし切りにして、豚肉に生姜とみりんと塩麹で下味をつける。
 鍋底で切った根菜を炒めはじめると、とつぜん規則的な打球音と選手の声に切り替わる。シートノックだ。活躍に期待して既にタオルを注文してしまった新人選手の動きや新たなポジションに取り組む選手たちの動きをついつい見たくなってしまうけれど、我慢して耳だけ北谷へ遠征することにする。
 玉ねぎが透きとおってきたら、鍋に調味料と水を足して加熱する。米を洗いながら画面をチラ見すると、以前も記事にした立浪監督がバット片手にバッティング練習を見つめていて、テンションが上がる!!! いや、まだ調理中だから我慢ガマン。圧力鍋で米を炊いて・・・。


 キャンプの YouTube 動画には選手やコーチや監督の声は入っているけれど、解説はない。だから画面を見ていないと、誰が何をやっている音かはわからない。
 それでも、引き締まったミットの音を、乾いた打球音を、グラウンドに響きわたる声を、活気のある球場の雰囲気を感じているだけで、さっきまで脳から出ていた煙が消えていく。おそらく脳波を録ったらα波が出ているにちがいないと思うほど、仕事のもやもやも積み残しも忘れている。
 だから、気分転換にはうってつけなのだ。家事の最中は聴き専だが、もちろん目からの栄養補給も忘れない。ラジエーター代わりの球団公式 YouTube は、わたしのセラピストかもしれない。


 以前は春季キャンプなんて、沖縄へ行って球場へ見に行くか、週末のドラゴンズ応援番組でしか見ることはできなかったけれど、今は公式さんがこうやって中継してくれるからありがたい。

 しかも、立浪さんが監督として初めてユニフォームに袖を通す瞬間の写真(この写真を全体表示したら、涙がこみ上げちゃった)や、キャンプの練習メニューや、これまた YouTube で中継してくれる紅白戦のオーダーを、twitterであげてくれたりもする。見ているだけでわくわくする。


 ドラゴンズの球団公式SNSは以前からフォローしていたけれど、2021シーズンの夏頃から何だか様子が変わった。

 練習の様子をグラウンドの至近距離から撮ってくれたり、ホームゲーム終了後の選手たちのハイタッチをベンチのなかから撮ってくれたり、ヒーローインタビューとは別に、試合直後の選手の様子やインタビューを流してくれたり、ホームのバンテリンドームの普段入れない場所(たとえば、記者席とか得点板の裏側とか)を見せてくれたりする。

 普段見られない角度から選手の素顔を垣間見れる。これって、ファンにとってはめちゃめちゃうれしいこと!


 こんなに変わるなんて、何が起きたんだろう?と思いつつも、充実してゆく動画を毎試合後にチェックし、ドラ友の野球部母たちにも「公式 YouTube 見てみて! なんか楽しいことやってるよ!」などと せっせと送りつけて、彼女たちも公式ファンに巻き込んだ。
 何が起きて公式SNSが変わったのかは、シーズン終盤になってから読んだある記事によって解き明かされた。

 文春オンラインの記事によると、昨シーズンから球団に大型新人が入ったとのこと。もちろん大型新人といっても選手ではなく、球団職員。岡田昌尚さんという、生粋のドラゴンズファンで、プロ野球の記者をしていた人らしい。彼の入社がきっかけとなり、球団公式SNSは大きく変化したそうだ。

 裏方のスタッフにスポットライトを当てた、とても好きな記事だったのでここに貼っておく。


 岡田さんをはじめ、広報に関わるスタッフのみなさんのおかげで、わたしの野球応援ライフはより楽しくなった。

 公式 YouTube チャンネルでは、2月11日・13日に紅白戦の模様を流してくれた。日本シリーズが終わってからというもの、ずっと試合に飢えていたので、試合形式で見られるというだけでわくわくする。しかも攻守両方、応援しているドラゴンズの選手のみという紅白戦。こんなに幸せな試合はない。
 そのうえ、定点撮影ではなく、ペナントレースの試合と同様に、ピッチャーやバッター、ボールの行き先に、ちゃんとカメラがスイッチングされる。バッターの名前や、BSOとランナーも画面脇に表示されている。さらに、攻守ともに好プレーがあれば、すぐさまリプレイ映像が流れるという細やかさ。
 残念ながら13日は天候の関係で予定が変更になり、紅白戦全部の中継とはならなかったが、解説がないだけでほかはテレビ中継と同じ。集中して楽しく観戦でき、充実した週末となった。

 今週半ばからは BIGBOSS 率いる日本ハムファイターズや DeNA や阪神との練習試合がはじまり、今月下旬にはオープン戦がはじまって、いよいよペナントレースの開幕へと向かっていく。


 球春到来。

 開幕投手は大野雄大投手か柳裕也投手か。
 開幕のオーダーは誰になるのか。
 ルーキーで一軍スタートとなるのは、誰なのか。
 今から楽しみで楽しみでしかたがない。



 開幕まで、あと40日。





左から、阿部寿樹内野手、高橋周平内野手、大野奨太捕手、福田永将外野手

※ ヘッダー画像に使ったこの写真は、2019年秋季キャンプにて撮影した写真です。


ここまで読んでくれたんですね! ありがとう!