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ことばの旅 #ことば展覧会

プロフィールに自ら選んで書いた言葉を、見失うときがある。

手のひらサイズの日常を、ことばを尽くして描きます

“手のひらサイズ”を綴るはずが、風呂敷を広げすぎて、うっかり成層圏を超えた流れ星まで描こうとするから、見失ってしまうのかもしれない。

 

このテーマで書きたいことは星の数ほど浮かんでくるし、こんなふうに、言葉を書き続ける自分自身を振り返るきっかけになるのだから、この企画は面白いし、参加できてうれしい。

深淵な「言葉の宇宙」をさまよいながら、今日も私は、“手のひらサイズの日常”を描こうともがくのだ。
“ことばを尽くして”。

思いをありのままに伝えたい! そう思うからこそ、探す。
「伝わることば」を書こうとすればするほど、ちょうどいい言葉が掴めない。
言葉を探す旅が始まる。

 

 

夏の高原で見上げる夜空。
きらきらひかるそれは、手を伸ばしたら取れそうで。
手に取るように見えているのに、届かなくて、もどかしい。

言葉って、星。
私を遠くから見守る、星。

 

☆ ☆

 

三日月に長い長いはしごをかけても、星には届きそうにない。
握りしめた拳をひらいてみると、星の欠片がひとつ、ふたつ、みっつ。
「うたは、いうこときいて、おりこうね」
「うたちゃんは、いいおねえちゃんだね」
「うたはしっかりしてて、たよりになるね」
ひらいた掌に血がにじむ。
降ってきた欠片をそっと両手でくるんだときには、たしかに、きらきらしていたのに。
星の欠片を変えてしまったのは、私。

言葉って、鎖。
私をがんじがらめにする、鎖。

 

☆ ☆ ☆

 

窓をノックしたその人は、不思議そうに見つめていた。
その人は尋ねた。
「うたちゃんは、どうしたいの?」
じゃらじゃらと音を鳴らしながら窓をあけると、三日月が笑った。
考えてもみなかったことを、考え始める。
がしゃんと落ちた鎖を見ると、光を残した星の欠片だった。

窓をノックした人たちは、おっかなびっくり覗いていた。
「うたさん、いっしょに遊びませんか?」
私もおっかなびっくり窓をあける。
考えてもみなかったことを、考え始める。
いっしょに星の欠片をひろって遊ぶと、星が瞬きはじめた。

昨日、はじめて窓をノックしたあの人は、尋ねた。
「うたさんは、これから、どういうものを書いていきたいの?」
窓をあけて、夜空にはしごを掛ける。
考えてもみなかったことを、考え始める。
この両手を開いてみたら、ふわりと星が舞いおりた。

言葉って、窓。
私があなたに出会う、窓。

 

☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 

私は、尋ねた。
「私の言葉って、何だろう」
心の奥を覗いてみると、きらきらひかる夜空がひろがっていた。
悲しい気持ちを言葉にすれば、星たちは静まりかえる。
幸せな気持ちを言葉にすれば、星たちは瞬きはじめる。
言葉は、私を裏切らない。

はしごを下ろして、星の欠片を探す。
ひろいあつめたそれは、私。
言葉って、鏡。
私の思いを映す鏡。

 

星あかりで机を照らし、私は書く。
私の物語を。

 

 

 

☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 

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ここまで読んでくれたんですね! ありがとう!