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インド版イップマン「RRR」感想

「RRR」バーフバリの監督の最新作とあっては見に行かざるを得ない。
近年、経済発展目覚ましく、もはや途上国とは言えないレベルまで成長を続けている。娯楽産業もしかり、インド映画の最高峰ともなるとハリウッドにまったく引けを取らない出来のものばかりだ。アクション、ドラマ、CG技術、なんといってもダンス。
そしてインド映画は、「RRR」で騎馬戦ガン=カタという新たなデンジャーゾーンに踏み込んでいくのだった。

時は1920年の英国統治時代。山深い村落に住む部族の虎殺しの若者ビームは、集落を訪れていたインド総督(英国人)にペット同然に誘拐された妹を救い出すためにデリーに潜伏していた。
もう一人の主人公、ラーマは警察組織で成り上がりを目指す若い将校。命令順守、数百の暴徒にもひるむことなく単身飛び込み、任務を達成する強靭な精神と肉体を持っていた。かと思えば学問にも精通し、難解な洋書を読み、英国人と流ちょうな英語で話す教養の高さも併せ持つ。彼もまた、使命を秘める者だった。
家族思いの大地を愛する男ビーム、都会の洗練さを持ち野心に燃える男ラーマ、正反対な2人の男は少年を火の海から協力して救い出す。
簡単なジェスチャーとアイコンタクトだけで作戦を理解し、それを躊躇なく実行する胆力と屈強な肉体を持っている2人が惹かれあうのは当然であった。ガンジス川と燃える原油の海、インド国旗を翻し少年を救い出す様はヒロイックかつ示唆的で、今思えば2人の行く末を暗示していた。

本作は三部構成になっており、一部はビームが妹を救い出すまでの話。二部はビームたちを逃がした罪で処刑されるラーマを救い出す話。そして三部が英国打倒を決意したラーマとビーム2人の軍神が英国総統を襲撃する話となっている。

インド人が宗主国の英国人に受けているひどい仕打ちから、この時の社会情勢を示し、妹を探すビーマの焦燥感とラーマの野望と葛藤が表現されている。打ち解け、兄弟同然となる二人。しかし、二人の使命は相容れぬものだった。妹を取り戻すために総督府に乗り込むビームと、総督府を狙う賊を捕えないといけないラーマ。
結局、友を売り渡すことで名誉ブリタニア人の地位を得たラーマは、計画の為に武器庫番に昇進した。彼の使命とは、反英武装組織に武器を横流しし、インドの独立を回復することだったのだ。
総督はインド人を震え上がらせ、反乱の芽を摘むためにビーマを大衆環視のもと鞭打ちの刑に処する残虐ショーを開催する。血にまみれ無様に許しを請う姿を晒すかに見えたが、ビームは責め苦に耐えつつインドの民を奮い立たせる歌を歌うのだった。
「武器とは銃にあらず。人と国を愛し、不当な扱いに屈しない勇気こそ本当の武器なのだ」
ビーマの姿に胸を打たれたラーマは自分の命、そして使命と引き換えに兄弟を助ける。

妹と共に逃げおうせたはいいものの、すでに非常線が張られ、ビームは帰れれずにいた。徐々に狭まる包囲網。あなや捕まるというときに、一人の美女の機転で切り抜けることができた。彼女はなんと、ラーマの婚約者で彼が処刑されると聞いていてもたってもいられず上京してきたという。彼女からラマの事情を聴いたビームは自分の浅博さを悔いて、兄弟を助け出し、彼女のもとに連れ帰ることを約束する。
タコつぼ牢獄を素手でぶち破ってラーマと共に基地を脱出するビーム。二人の前にはかなりの数の守備隊が道をふさいでいるのだ。ではどうするか。

その答えが騎馬戦ガン=カタである。

足を負傷しているラーマを肩車し野獣がごとく疾走するビーム。ラーマもただ背負おぶられているだけではない。殴る投げるはもとより、敵兵から奪ったライフルをアキンボ撃ちし立ちふさがる兵士を瞬殺!
ガン=カタは初級を修めるだけでも圧倒的な戦闘効率を誇るそうだが本当のようだ。たくさんの本の中にガン=カタ教本があったのだろう。いや、二挺小銃の分本場のクラリックより攻撃力は上と見ていい。
このシーンは本当に度肝を抜かれたので、まだ見てない人はぜひ劇場で確かめてほしい。

向かい合っていた二人がお互いの本心を分かることで、同じ方向を向き強大な波となった。ラーマが火、ビームが水だと本作中で語られる。すると民は森だ。ビームの気高さが人々を勇気づけ、ラーマの熱さが人々を滾らせた。燃え盛る山は火山の噴火となり、征服者を飲み込む溶岩の波としてインド中をはしるだろう・・・。

この映画、なんと3時間あるので劇場に入る前にうんこしてきた方がいい。途中でINTERRRBALと表示されるので、インドとかだと休憩挟むんだろうなw

難点は、タイトルでもふれているが、インド版イップマンと言っていいほどプロパガンダが強いw抗日運動時の傲慢な旧日本への作りこみも凄かったが、あの時代の白人様はあんな感じだったんだろうなというコテコテ具合。もちろん有色人種に優しい人もいたろうから、お嬢さんが白人の良心として出ている。白人は全部悪ってしちゃうと海外セールス見込めないしな。
イップマンを映画と割り切って楽しめる人なら大丈夫と思う。

これが作られた現インドは物凄い経済発展を遂げ、例えば有名なバイクメーカーのロイヤルエンフィールド(元はイギリス)はインド資本だし、KTM(オーストリア)と子会社のハスクバーナ(スウェーデン)もインド資本になってたりする。ウィスキーの輸入量も世界最大というし、女性の社会進出も進み、工場としてもマーケットとしての注目度も高い。
この映画は、これからはインドも先進国として独立して世界の表舞台に立っていこうと、国威掲揚を図る目的もあったのかなと思う。
イップマンが作られたのがGDP世界2位になる高度成長期だったのを考えると・・・、やっぱRRRはインド版イップマンやw!

CG技術も高いし、カメラワークや構図、色づかい、アクションも凝ってるので、普通に映画としての出来もかなり良い。いろんな映画のオマージュシーンもふんだんに盛り込まれている。作った人本当に映画すきなんだなと思う作品だった。


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