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音楽が聞こえる漫画に音楽をあててみた、劇場版ブルージャイアント

面白いと聞いていたが、原作40巻近くある。読むのをためらっていたところ、丁度よく劇場アニメ化の報せがきたので映画館に行ってきた。
多くの視聴者がそうであるように、筆者もまたジャズに詳しい方ではない。しかし、音楽を聴くのが好きという人であれば楽しめると思う。つまり、全人類がこの映画のターゲットという事である。

物語は大(別名デカチンの大)が、雪の降りしきる冬の仙台のクソ寒い河原でサックスの練習をしている狂人エピソードから始まる。雪の吸音効果に負けない圧倒的音圧を目指してくる日も来る日も練習を続けていた。高校卒業と同時に上京し、サックス一本で身を立てる武者修行の旅が始まる。
東京の大学に進学していた親友の玉田を頼り大(別名宿無しの大)は、昼はメンバー集めと売り込み、夜は土方バイトと練習というハードな毎日を送るのだった。

なけなしのバイト代から家賃を引き、残った小銭を握りしめてジャズバーを渡り歩く。気高い飢えが大にアジトと天才ピアニストと両方との運命的出会いを引き寄せた。それが雪祈だ。プロのジャズバンドに混ざり片手だけで演奏してみせる尊大さと超絶技巧。
「勝つ為のピアノ」で、どんな聴衆も虜にし、ついでに死に瀕しているジャズも救ってやると言ってのける。
「感情全てを表現できる世界トッププレイヤー」になるのが夢の大と似て非なる目標だ。タッグを組んだ2人だったが、ピアノとサックスじゃバンドはできない。気持ちが走りすぎる大と、譜面重視の雪祈をまとめ上げるレールが必要なのだ。つまりリズムセクションをとるドラムだ。

めぼしいドラマーには全振られ。その時手を挙げたのが親友の玉田(別名大家の玉田)だった。入った大学のサッカー部がエンジョイ飲み会部と発覚し絶望した玉田。俺は本気でサッカーに向き合いたいのに・・・。愚痴を聞いてもらいに大の青空ホールに向かったところ、大の演奏が玉田の心を燃え上がらせた。なんでこんなに熱い演奏ができるんだ。サッカーは11人いないとできないのに、サックスは1人でもこんなに熱く燃えられるものなのか?
何とか頼み込んで玉田はバンドに入れてもらった。初めは玉田の加入に反発していた雪祈だったが、彼の熱意と真摯さに裏打ちされた練習量でメキメキ腕を上げていき、済し崩し的に加入を歓迎する形となった。

こうしてジャズバンド「JASS」が結成された。経歴も目的も腕前も(流石にズブの素人が入ることはないけど)バラバラなメンバーが一時の団結を結ぶのはいかにもジャズらしい。
1年以内に日本のジャズシーンの頂点、So blue(おそらくBlue Note)に立つという途方も無い目標目指して男たちの熱い挑戦が始まる・・・。

スタッフロール見て気づいたが、作曲が上原ひろみ・・・。上原ひろみ!?マジかよ。俺のようなニワカでも知ってる世界的名ピアニストである(たしか日本でも数えるほどしかいない名門バークリーの出身)。
なんでも原作漫画のファンで、演奏のシーンを読んでる最中に脳内にメロディが流れてきて、それを書き留めたのが『N.E.W』だという。これを作者に送ったところ、原作漫画のN.E.Wの譜面として実際に登場している。これが音楽が流れる漫画として語られる所以であろう。
劇伴は狭間美帆指揮!?他にも関わっているアーティストはニワカには分からないが、全員世界的名プレイヤーばかりらしい。

熱いキャラがぶつかり合う熱いストーリーを背骨に、映画館の音響で発せられるガチのジャズ演奏、そして、演奏を更に深める映像視覚表現。三位一体の三次元ジャズ体験!
これは配信じゃ実力の半分も楽しめないね。

ぜひ、劇場のスクリーンでジャズの新たな楽しみかたに触れて欲しい。
また、ジャズを聞かない(あらゆるシーンでさりげなく流れているので聞いたことない人はいないはず)人も、本作からジャズに親しんでもらえたら幸いです。

パンフレットはレコード盤とジャケットを模した作り


余談

軍楽隊のマーチからはじまり、ブラックミュージック、西海岸に移ってからはハリウッドの劇判、そしてクラシックを下敷きにしたコード進行とソロの融合ハードパップで一端完成をし、ビバップの停滞を崩すフリーに期待をかけるもその夢も潰えた。しかし、その遺伝子は数多くのアーティストに影響を与え、受け継がれ、溶け込んでいる。
それが現在のジャズの一つの形だ。生まれてから100年ちょっと。難しい音楽だと思われるかもしれないが、クラシックに比べればピチピチに若く、自由だ。CM、テレビや映画のBGM、洒落た雰囲気の喫茶店、意識したことは無いかもしれないが、知らず知らずのうちに耳にしていることは実のところ多い。

難しそうだと思わず、とりあえず聞いてみて欲しいなあ。
この映画で扱われているように、ジャズは「熱くて、ダイナミックで、そして自由」な音楽なのだ。
それだけ覚えて貰えれば大丈夫。
あなたも今日から「JASS」のメンバーだ。

余談2

初心者にオススメのジャズメン
・ビルエバンス
ビバップピアノの巨人。繊細でクリアに沁みるピアノ。喫茶店で流れる率ナンバーワン。「坂道のアポロン」の主人公のモデルとしても有名。
・アートブレイキー
坂道のアポロン繋がり。ジャズドラマーの巨人。某NHK番組の壺のOPテーマ、モーニン。

・クインシージョーンズ
ジャズメンか?という人もいるかもだが、ジャズメン。ハリウッド劇伴を数多く手がける。
・高柳あきゆき
完全に初心者向きでなく筆者の趣味。クールjojoはカッチリしてるので聞きやすい。おそらく某スタンド漫画のjojoの名前の由来。

とりあえずビバップ系がわかりやすく取っ付きやすいと思われ!良いジャズライフを!

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