人は自分の領分を自分のためだけに使って生きていくことはできない

 人は自分の領分を自分のためだけに使って生きていくことはできない。いくらかを余白として残し、いつでも人のために差し出せるようにしておかなくてはならない。

 もし、自分の領分を自分のためだけのことでぎりぎり一杯まで埋め尽くしてしまったら、人と少しでもぶつかっただけでトラブルになる。自分の領分の中に相手に差し出せるだけの余白がないのだから、言い合いになってしまうのは当然だ。

 だから、自分の領分の中に相手のために差し出せる余白をいつも残しておかなくてはならない。そうやって自分の中に余白を残してみると気付くことがある。それは、自分がこれまで多くの人の余白の上を生きてきたということ。時に家族からの愛情として、時に気付かぬうちに助けられていた支えとして。こうして差し出されてきた多くの人々の余白の上で、自分は生きてきたのだ。

 余白がたくさんある世界なら、みんな安心して暮らせるのかもしれない。ちょっとつまづいた時に、だれかが気付いてそっと手を差し伸べてくれるような。誰にも気づかれない朝早いうちに道路の雪をかいていてくれるような。そんな温かな余白のたくさんある世界なら、みんなが安心して暮らせるのかもしれない。

 自分の領分の中に余白を残しておくというのは、人のためであり、自分のため。みんなで生き抜いていくために必要なことなんじゃないかな。

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