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月の桂

夜の闇に甘い香り
十字のかたちをした花の
無数に綻び
降り落ちた黄金が
香を立て 光を放つのだ

月にも
この芳香が漂うという

切なさの熾るのは
いつか わたしも
月に居たからなのだろう
無量なる花の香りに
包まれていたのだろう

地上の月の桂は
〈とき〉と
はるかなる記憶とを
告げ知らせる
使者だろうか

ひとときの香りを
胸いっぱいに吸いこみ
一生をかけて思い出そう
月とは何か
何であったかを

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