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事故のリアルを感じるドラマ「チェルノブイリ」 巣ごもり映画pick-up1

この1カ月、映画を観る時間も大幅アップした。この期間に改めて見直した映画も含め「多くの人に観てほしい!」という作品をピックアップして残しておこうと思います。

まずトップバッターは「チェルノブイリ」。1986年4月26日に起きた旧ソビエトのチェルノブイリ原発事故をモチーフにした、HBOが製作した全5話のドラマです。

未明の実験中に起きた爆発。制御室の職員は何が起きたのか全く把握できない。爆発現場に最も近い職員たちは実験をしていたかどうかも知らされていなかった
消防隊員たちが、何の防護もないまま消火にあたる。子どもを連れた近隣住民は、灰が舞うなか、火の様子を「きれいね」と橋の上から見物する――。

スベトラーナ・アレクシエーヴィッチの『チェルノブイリの祈り』を読んで知っていたつもりだったけど、映像で観ると、想像を上回る壮絶さに言葉を失う。
特に『祈り』では、消防士の妻の〝語り〟が印象に残っていた。映画に登場する消防士ヴァシリーと妻のモデルなのでは?と想像する。

ソ連閣僚会議の副議長・ボリスが、事故当初は、助言する物理学者レガソフの意見をなかなか受け入れないことにもハラハラ。致死量にあたる放射線を浴びると分かっていながら排水溝を開けにいった作業員や、暑さに防護服を脱いで掘るしかなかった炭鉱夫たちの奮闘……名前も残っていないたくさんの人の尽力と犠牲があって、なんとかギリギリのところで踏みとどまったんだってことが伝わってきた。

そして、住民たちに正確な情報が知らされない様子や、トップがまるで事故に無責任である態度……。いろいろな場面で、東京電力福島第一原発の事故が重なってしまった。

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わたしがチェルノブイリ原発を訪れたのは2016年7月。「何でわざわざ?」とよく聞かれるけれど、福島の事故直後に取材に入ったこと、避難した人たちの話を聞いていたこと、子どもの頃に実家近くでJCOの事故があったこと……から、「自分の目で見たい」気持ちが強かったのかもしれない。
カマボコ型の新石棺に4号機が覆われる前に!と、2016年に現地ツアーを申し込んだ。
事故から30年が経ち、街は「森」になろうとしていた。それでもいまだに、ガイガーカウンターの警告音が鳴り響く場所がある。

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ドラマでは、物理学者シチェルビナの助言や叱咤激励を受けながら、レガソフ博士が政府側の圧力に立ち向かっていく様子が描かれ、救われたような気持ちになる。けれど、それでも、奪われた職員・住民たちの命や健康、自然豊かなふるさとはかえってこない

シチェルビナの存在など含め、全てが史実に基づいているわけではないそうだし、「なんで英語で制作したんだ」っていうレビューもあるようだけど、全てさておいて本当におすすめ。この事故がなぜ起きたのか、すごく分かりやすく理解できるし、自分だったらどうするか?も考えさせられた。レガソフと同じことが出来ただろうか。

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二度と原発で事故を起こさないためにも、多くの人に見てほしい。そして、数万年先も管理が必要な原発の放射性廃棄物をどうするのかも、自分事として考えてみてほしい。

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