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リチャード・ジュエル 3日間で英雄から容疑者に暗転した実話の映画化

映画「リチャード・ジュエル」刺さりまくった……。自分がメディアで働いているからというのもあるけど、SNSがある今、誰も人ごとではない。むしろSNSのある今だったら、1本の記事がつけた火にどんどん油が注ぎ込まれて……もっとひどいことになっていたんだろうな……とぞくっとした。

あらすじ:
1996年、アトランタ五輪開催に浮かれたアメリカ国内。アトランタのセンテニアル公園で開かれていたコンサートで、警備員として働いていたリチャード・ジュエルは、不審なリュックを見つける。呼ばれた警察官は「どうせビールだよ」と半信半疑で中身をチェックするが、その中には……。

多数の釘が仕込まれたパイプ爆弾が爆発して100人以上が負傷し、2人が死亡。ただ、リチャード・ジュエルがいち早く爆弾を見つけて避難をうながしたことで、多くの人の命が助かり、彼は一躍"ヒーロー"に。しかし、3日後、地元紙アトランタ・ジャーナルの1面には「FBIがリチャード・ジュエルを重要容疑者として調べている」という記事が載り……。

これが「実話」だということに本当に胸がつまる。

純粋に「警察官」や「捜査官」にあこがれていたリチャードが、捜査側に都合のいい情報ばかり集められ、「悪人」に仕立て上げられていってしまう。お母さんもとっても"善人"で、なんかもうハラハラするし暗い気持ちに。過去を暴かれ、見た目とか暮らし方とかで「典型的な爆弾犯のプロファイル」とか言われちゃう……

そんななか、FBIに連れられたリチャードは、弁護士事務所の備品係として働いていたときのワトソンのことを思いだし、彼に電話をかける。ほんとに、ほんとによかった……ここでこのワトソンに電話をしなかったら……(ぞわっ)

★★このあたりから少しネタバレもあるので(実話にネタバレも何もないけど)情報を入れずに映画を観たい方はお気をつけあれ……でも予告だけでも見て……!!★★

映画全体の演技の質がとっても高く、服や車も当時っぽくてリアルなので、自分がこの事件を追体験しているみたいな気持ちになる。没入しまくって2時間ある映画とは思えない。クリントイーストウッド、すごい。
なんか画面が上下するな……と思っていたら、メーキング映像で「TV局の手持ちのカメラの映像を意識した」というスタッフの声があった。なるほどな〜。

"押収"された"証拠品"がFBIから戻ってきたとき、自分が料理に使っていたタッパーに直接「38」と番号が書かれていて、それが落ちないのを確認するお母さん・ボビ。こういう細かな描写にも胸が痛くなる……。謝罪もなく、国家権力ってなんなんだろうと考えさせられるな。ボビ役のキャシー・ベイツもさすがだった。

そして弁護士ワトソン役のサム・ロックウェルも最高なんだ!!ラストシーン(↑予告でも使われているシーンだけど)、抱き寄せるワトソンに心がほわっと温かくなって、リチャードの涙に、本当につらかっただろうなって感じさせる……。

熱い思いを秘めつつ、ひょうひょうと振る舞う感じ、なんか最近観たな……と思ったら、「ジョジョ・ラビット」だったーーーー!
ジョジョ・ラビットでアウトローなナチスのクレンツェンドルフ大尉を演じていたのもすばらしかったのだ……この映画についてもいつか書きたい。

このアトランタの爆破事件は、6年後に真犯人が自白するんだけど、今でもリチャードを犯人と言う人がいるんだって……。さらにショックなことに、リチャードは44歳のとき心臓病で亡くなっている……。この映画を観ることもなかったんだなぁ。

でもお母さん・ボビが観られて、この冤罪事件が広く知られたことは本当によかったと思う。ボビの「この事件のことがずっと引っかかっていた」という言葉は本当に重いよね。自分の書いたことや伝えたこと、国家権力が、誰かの人生を大きく狂わせることがあるって、誰もが心にとめておかなきゃいけない。

Amazon Primeでも観られるみたい。ぜひ観てほしい~~~


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