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「泣くな研修医」でボロボロ泣いた 新人にエールをくれるお話

外科医で(いまは京都大大学院で勉強中で)、お仕事しながら医療記事をバンバン書いて読者・社会の役に立つ情報を発信している中山祐次郎先生

患者さんと医療者のギャップをできるだけなくそうと、昨年8月には「医者の本音」を出しています。

いろんなイベントにも出演されていて、どんな時間の使い方してるの…?って感じなんですが、今度は、「泣くな研修医」(幻冬舎)という「初の小説」を出したというではないですか……!!

傷ついた体、救えない命――。なんでこんなに無力なんだ、俺。雨野隆治は、地元・鹿児島の大学医学部を卒業して上京したばかりの25歳。都内総合病院の外科で研修中の新米医師だ。新米医師の毎日は、何もできず何もわからず、先輩医師や上司からただ怒られるばかり。だが患者さんは、待ったなしで押し寄せる。生活保護で認知症の老人、同い年で末期がんの青年、そして交通事故で瀕死の重傷を負った5歳の少年……。「医者は、患者さんに1日でも長く生きてもらうことが仕事じゃないのか?」「なんで俺じゃなく、彼が苦しまなきゃいけないんだ?」新米医師の葛藤と成長を圧倒的リアリティで描く感動の医療ドラマ(Amazonの商品ページから引用)

今回、ご恵投いただいた本をさっそく読みましたが、臨場感のある(外科医ならではの?)手術シーンや、看護師さんとのたぶん〝あるある〟トークに、どんどん引き込まれ、あっという間に読み終えました。

救急車で運ばれてくるおなかの痛い男性……その痛みの理由は? 急な腹痛を訴えて救急外来に来た少女。必ず聞かなきゃいけない大切なことは……?

読み進めていくと、症状や検査から病気を診断して、さまざまなケースに対応していくお医者さんってほんっっっとにすごいな、って思う。

だけど、経験のない研修医の雨野は、患者さんの症状から何を判断したらいいのか全然分からない。ちょっと怖い先輩やベテラン看護師さんに助けられながら、なんとか局面を乗り切っていく。がんの治療がうまくいく見込みの少ない患者さんには「優しい噓」をつく。

全員を救うことはできないし、そんな風に救えなかった命とも向き合うお医者さんって、どうやってメンタルを維持するんだろう…。

一番刺さったのは、研修医の雨野に、先輩医師の佐藤が言うせりふ。

「研修医といっても医者は医者。同じ医師免許一つでやってるんだよ」
「ミスをすると患者を殺す仕事なの。それも、一度のミスで」
「学生気分なら、辞めな。医者が命懸けでやらなきゃ患者さんは助からない」

ボロボロ泣きました。ほぼ毎日病院に泊まるぐらい仕事熱心な雨野は、たった1度、自分が担当していた子どもの顔を見にいくのを忘れてしまっただけ…。でも、命と向き合う職場では、それが文字どおり命取りになることもある。

ただ、研修医ほどハードではなくても、自分の使えなさや配慮の足りなさに歯がゆい思いをしたり、日々の業務が怖くなったり、なんで出来ないんだと悔しくなったりって、どのお仕事にも通じるなぁと感じながら読んでました。

わたしも、記者3年目ぐらいまでは「なんでうまくできないんだろう」「向いてないのかな」と悩みながら悩みながらの毎日だった。
災害、事故や事件のご遺族にお話を伺うときには、なんの権利があってこんなことしているんだろうって気持ちにもなったし、自分の書いた記事が誰かを傷つけて、とんでもないことになってしまうかもしれない、とびくびくすることもたくさんあった。
でも、知られていない社会の問題にふれたり、信じられないほどひどい事件の裁判を取材したりすると、「やっぱりこれは多くの人に知ってほしい」と思う。(わたしはホッとするニュースも好きなので、それについても「多くの人に知ってほしい」と思いますが)

振り返れば、雨野みたいに、日々、壁にぶつかったり、その壁をなんとかよじのぼったりしてやってきた。

きっとこれって、どの仕事もそうなんだろうなぁ。なんだか記者になりたての頃の自分にエールを送ってもらっているような、そんな気持ちにもなりました。

実はこの小説、中山先生は3年半かけて執筆されたそうです。夏休み・冬休みをすべて使って…。「没入しないと書けないものがある」とおっしゃっていました。わたしも長めの連載記事なんかはそんな感じなので、ちょこっとだけ気持ちが分かります(わたしの場合は力不足なんですが)。
2月26日には刊行イベントがあるようですよ!

というわけで、医療関係者じゃなくてもお薦めです。小説に出てくるような、誠意をもって自分と向き合ってくれるお医者さんにかかりたい、とも感じました。
(ただ、雨野と佐藤と岩井先生の過労死が心から心配です。医師の働き方改革、待ったなしで進めていきましょう…。そして患者側もコンビニ受診はやめよう…!)

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