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美術展レビュー

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美術展・展覧会や現代アート、旅先で訪れた美術館などのレビューです。絵の「額」を見るのも好きなので、やっぱり生で鑑賞するのがいちばん。海外は額まで含めて写真が撮れるからうれしいな~
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#美術展レビュー

印象派の"女性"画家たちに思うこと

アーティゾン美術館では、常設展で膨大な石橋財団のコレクションを見ることが出来る。10/25まで「印象派の女性画家たち」特集展示もある。 区別するために仕方ないことではあるんだけど、女性だけ職業に「女性○○」とつくの、モヤモヤしてしまう……(ママ記者とか女医とか女性政治家といった言葉もモヤモヤ)。モネやゴッホやピカソは「男性画家」とはくくられないのに。でもそれもこれも、女性が画家や職業を持った一人として活躍していくのが難しかったからだ。それは今も、かもしれない。 メアリー・

伏せられたキャンバスの存在感 原美術館

原美術館の「メルセデス・ベンツ アート・スコープ」にも滑り込んできた。 旅に出られなくなり、これまで行ったことない都内の美術館を訪れることが増えて、実は原美術館も初めて。こんな瀟洒で閑静な住宅街に美術館が…。 わたしは久門剛史さんのResumeという展示がいちばん好きだったな〜。 壁や床が、いちめん白く塗りつぶされた部屋の中に、目に眩しい蛍光ピンクや黄色、オレンジのキャンバスが伏せられている。 キャンバスの色が壁や床に反射して、ぼんやりそのキャンバスの存在が浮かび上がる。

SOMPO美術館の開館記念展すべりこみ

もう美術展へのすべりこみはやめようと誓ったのに…こんなに早く9月がくるなんて思ってなかったんだ… というわけでSOMPO美術館の開館記念展「珠玉のコレクションーーいのちの輝き・つくる喜び」に行ってきました(ごめんなさい、展示は今日まで…)。 5階から降りていくスタイルの新しい展示室はとてもきれい。ヘトヘトになる前に観終わるぐらいの展示数で、わたしにはよかったかな。 最後のトリを飾るゴッホの「ひまわり」は、さすが圧巻。ここはアジアで唯一ひまわりが観られる美術館。絵の制作年が

新国立美術館の古典×現代2020 闇に浮かぶ仏像を見つめて

鴻池朋子さんの皮緞帳が観たくて、こちらも日時指定チケットを買って向かった国立新美術館(六本木)の「古典×現代2020 時空を超える日本のアート」。 八つの古典と現代のアートがコラボ。「八つのびっくり箱をどうぞお楽しみください」という主催者インタビューの言葉どおり、全部の展示に見どころがあってとっても面白かった!「目まぐるしかった」といってもいいぐらい笑 祈りの部屋、光と闇のコラボレーションわたしが最も印象に残っているのは、建築家の田根剛さんの作品。834年(鎌倉時代)に「

不思議な世界に誘惑してくるピーター・ドイグ

のんさんが「音声ガイドをやったよ」という投稿で知ったピーター・ドイグ。スコットランド生まれ、トリニダード・トバゴとカナダで育つ。2002年に拠点をトリニダード・トバゴへ移し、ほかのアーティストに与える影響から「画家の中の画家」とも呼ばれているそう。 今回が日本初の個展だったそうなんだけど、いっぺんに好きになってしまった。印象的だった絵を紹介します。 入ってすぐのところには、なんだか危険な色合いで、心がざわざわ、目が離せない絵「のまれる」があった。タイトルもちょっと怖い。

初アーティゾン美術館 鴻池朋子さんの展示が圧巻

都内の美術館も日時指定でぽつぽつと再開し始めたので、前から行ってみたかったアーティゾン美術館を予約。鴻池朋子さん、メアリー・カサットたち(女性印象派画家)の展示をとっても楽しみにしてました。結論、もうみんな見にいって!!鴻池さんの展示がエネルギッシュで圧巻過ぎました。 鴻池さんの作品ステキだな、と思ったのが2019年の瀬戸内芸術祭。ハンセン病療養所のある大島での展示リングワンデルングを観てからです。 1933年(昭和8年)に青松園青年団が北の山にぐるりと1周つくった全長1.

夜廻り猫原画展 大盛況!ファンも丸善さんも優しかった~

13日から京王百貨店7階の丸善さんで開かれていた夜廻り猫原画展、25日に終了でした。 深谷さん・夜廻り猫スタッフの総力をあげた展示は、いつもいつも細部にまでサービス精神が宿っていて、「皆さんに喜んでほしい」が伝わってきます。本当にすごい。 圧巻だったのは新作の100号×2の超大作! なんだか気分が落ち込むようなニュースに、わたしもちょっと暗くなっていたのですが、このあたたかな桜色を目にしたら視界がパッとカラフルになりました。 初日にお邪魔したとき、ファンの方が「ミケ猫記

嬉しい誤算 足立美術館で橋本関雪さん大好きになった話

橋本関雪さんってご存じですか? わたしは全然知らなかったんですけど、先日訪れた島根・出雲旅で大ファンになっちゃった日本の画家です。 有名な庭を見たいという友人の希望で訪れた足立美術館(島根県安来市)。もちろん庭園もステキだったけど、わたしが何よりほれぼれしたのは、偶然開かれていた橋本関雪さんの企画展! 関雪さん(1883~1945)は神戸市生まれ。大正・昭和期の京都画壇で活躍されました。 一番有名なのは、このワンコの絵だと思います。タイトルは「唐犬」。 わたしも

ゆっくりウサギや蛙を鑑賞…中之島香雪美術館で鳥獣戯画

鳥獣戯画、知ってますか。日本最古の「漫画」ともいわれています。 わたしこの鳥獣戯画に出てくる動物たちが大好きで。 めっちゃ表情豊かなんですよね。ウサギは蛙と相撲とって耳に嚙み付かれてたり、サルを追っかけてたり。口をパカッと開いてなんか蒸気?出してる蛙も、リアルなカエルの特徴とらえていてほんとかわいい。 5年前、修理後に初公開されたとき(@京都国立博物館)は、2時間並んで見たんです。その間にヘトヘトになっちゃって…。 入ってからもすし詰め状態。じっくり見たいけど止まっちゃ

塩田千春展:魂がふるえる 「糸」の表現から見えるもの

あーーーもっと早く行けばよかった、とまた後悔することになった「塩田千春展 魂がふるえる」。 もともと、塩田さんの作品は、瀬戸内芸術祭の豊島で見た「遠い記憶」がすごく印象的だった。窓枠を使って「通路」をつくったもの。 副題の「魂がふるえる」には、言葉にならない感情によって震えている心の動きを伝えたいという作家の思いが込められています。(森美術館HPより) ほんと駆け込みで鑑賞してよかった…!「言葉にならない感情でふるえる心の動き」。これがすごく伝わってくる展示だったので。大

瀬戸芸、秋限定の島へ ワルリー族の1年がすてき

瀬戸内国際芸術祭の会期もあと1週間。なんだかここ最近、芸術の秋って感じだな~。この週末は3連休で訪れる予定だった瀬戸芸・秋会期限定の島へ行ってきました。久しぶりの秋晴れに嬉しくなった。もうどこも災害に遭いませんように… 一番印象に残ったのは香川県三豊市の「粟島」。どこに送ったらいいのか分からない〝漂流する思い〟を受け止める「漂流郵便局」で有名。今年は作品に入ってないんだけど、ずっと気になっていた。 「あなたがこの世を去ってから3年…」「あなたと結ばれることはなかったけど」な

あいトリレビュー②充実の豊田エリア 旅館と戦争の記憶が一体化

豊田エリアは、8月中旬に訪れた。 炎天下まっさかり。トリエンナーレのアート巡りには雨もしんどいけど、灼熱の太陽もけっこうな難敵だな…と思いながら、豊田市美術館への長い坂道を登っていく(「豊田市民は徒歩で行かない、びっくり」というTweetを見たなぁ)。 豊田市美術館ではクリムト展もおこなわれていて大盛況。 美術館→プールの展示→ホー・ツェーニン@喜楽亭の展示で「これはわざわざ豊田に来てよかった…!」と強く感じたのでした。   ①喜楽亭と一体化した戦争の記憶ここまでアートと