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おのろけバレンタイン大作戦

ちょっと水音。力抜け。力入りすぎ。疲れるし可愛くないし。ね!




ヤーマーン。おげんき?
T兄とのラブ話❤️書くよーバッチリのろけるよー覚悟しとけ?
いーでしょだってそろそろバレンタインなんだもの❤️
扉は昔の友達(野郎)が好きでよく自分で買ってたエルメのチョコ。値段を聞いて私はたまげた。
「あんた気は確か?将来のヨメとかになんでやらない?いや逆にもらわない?」
「あれは違うんだよー芸術っていうか」
「うるさい。すいませーん大将ホッピーのなかおかわりね!」



①女子力ゼロからのスタート

一緒に暮らし始めた頃、私がお風呂で髪を洗う際水道から直で流しているのを見たT兄。
「おまえなあ。女の子なんだからシャワーで流せよ」
「え?なんで?」
私の実家では、シャワーを使うとハネで掃除が面倒だという理由で母が嫌がっていたためそうやって洗うのが最良の方法だった。時間も最短で済む。
「シャワーのほうが節水になるんだぞ?」

後日、猫よろしく彼のお風呂を覗きに行くと(なんで猫って人のお風呂を覗きに来るんだろうね)、T兄、私と同じ方法で頭を流していた。
「…なかなかいいな。おまえの鉄管洗い」



②肉と脂の日々

どうして男性はしばしば暴力みたいなメシを好むのだろう。
昔ラーメン二郎に入り周りの「面器」みたいな器にチョモランマみたいに盛られたトッピングにビビり、野菜マシマシどころか「トッピングなしで」という掟破りのオーダーをした私。にも関わらず、30分後にオールゲロンパ。脂がきつかったのだ。
T兄の常食は「すき家」「マック」「から好し」「駄菓子」だった。自分で作る?場合は漬けホルモンを買ってきて焼く。野菜をお弁当箱に入れればキレイにそれだけ残して来る。
なのに血圧を測って「わあっ!200近え!やべえ!」
…帰ってきたら少しずつ野菜を。ハンバーグに刻んで入れたらいいの?世の母さんがた教えて。



③職人魂

二人で仕事の話をすることもよくあった。
T兄が現場で苦々しく思っているのは、自発的に掃除をしない人たち。言われないとしない。言われると渋々。
現場の基本は掃除だ。危険排除、安全確保のためにも重要。どこの親方についてんだと私も腹を立てた。
ひどいのになると
「朝さあ。みんなにこっそりビール配ってる爺さんがいるんだよ」
「なんなのその人?作業員?」
「そうだよ」
「お仕事できるの?」
「やりたくないからみんなにそーやって袖の下配って目こぼししてもらってんだよ」
それで給料を貰うとは…。
私も似たような人々に遭遇したことはあり、やはり腹立たしく思った。手よりお口がよく動く。そのくせベテランぶって言うことを聞かせようとしてくる。
骨おしみして暇つぶししてお金を貰いたいのが本音だろうが、私は噛みついた。てめえの仕事やんねえからだよ。上司たちはみんな私を庇ってくれたが。
その話を聞いたT兄は、しんみりと言った。
「おまえも職人だな」
上司や師匠に認められることは誰でも嬉しい。けれど、好きな男性にそう認められたことは、ことさら誇らしく感じた。



④謎の講義

まだお部屋に遊びに行っていた頃だったか。
T兄はじまんの新兵器を披露した。レーザー照射で水平・垂直線を割り出せる高価なマシンだ。地下の暗闇で能力発揮。
彼はその使い方と、水平に配管などを設置するコツを教え始めた。
…?デートなのよ?T兄。

あとで白状したが、私をのちのち現場で自分の「小僧」にする肚づもりがあったらしい。
あのねえ。イヤです。



⑤言い方

T兄のような男性はいまどきはあまり好かれないかもしれない。日本で根強い人気とはいえヤンキー文化・ヤンキー魂は、今日びの女性やフェミニスト達には睨まれるだろう。
だいたい「おまえ」呼ばわりが普通。さんとかちゃん付けするのが礼儀(あ、ちゃんはダメだねもう)だが、これはキャラと年季の問題だと思う。私はT兄には最初から「おまえ」とか「ねこ」とか呼ばれて全然平気だった。むしろ親しみを持った。
ま、アレよ。『有閑倶楽部』の松竹梅魅録くんみたいなね。
でも読み直したら私最近、魅録くんのママの和貴泉千秋さんに性格が似てきた気がする。酒タバコ切らさないしどSっぽいし。歳かしら?

でも、いつも私が陰干しする下着のピンチハンガーを
「エロコーナー」と呼ぶのは笑った。昔の私ならアタマから湯気を出して怒っていただろう。



⑥ケンカ

結婚以前はよくケンカした。
ある晩。
T兄は私をこらしめるためか、単に用事があったのか、連絡もなく帰って来なかった。
深夜を過ぎて、私は起きていた。
彼がきょときょとしながらドアを開け…
私は安心のあまり泣き出した(単に遠くのパチスロにハマってただけだった)。

泣かない赤ん坊だったため親には育て易かったと言われた私が、新生児みたいにギャン泣き。自分でもびっくりした。でも泣くのを止められない。
T兄は首から提げたタオルを使って、私の涙をそっと拭った。そしてとても優しく、小さな声で言った。
「ねこちゃん。なんで泣く?」
「うわああああん!うわああああん!」
「ねこちゃん、泣かないよ?」
普段ちゃん付けなんてしないくせに。まるで赤子をあやすように。ああ、子どもってこうやってあやして泣き止ませるのか。

心配だったのが安心した時、ひとは最も泣く。以来、私たちの仲は急速に近づいていった。



⑥ブルーム&ブライド

実は私は結婚式、というのをしたことがない。ドレスは一度着た(そのブライダル会社に勝手にモデルにされたため、ゼクシィに半年くらい私の写真が掲載されてた。断りはあったがノーギャラ)。双方の両親に見せる写真のため。まあ、その時の相手もとうに早死にしたが。
T兄と、結婚式、というのをしてみたいな、と少しだけ夢見る。
T兄は言った。
「よし。しよう。でも俺、ドンキでヅラ買ってかぶるね。最近また薄くなったし…。で、お姫様抱っこして写真撮ってやる。二人とも金髪に染めるか?」
だーかーらー。ドンキやめてもう。なんなのあの人らのドンキ好きって。あと金髪ヤダ!染めない!いいのこのごま塩アタマ、美容師の友達にもそれいまどきだよー流行ってるって言われたんだしさ。
まあT兄の腕力と私の体重を考えたらお姫様抱っこは問題ないだろうが、いいのになあ。髪の毛くらい。
でも、そういうのこそ私のデリカシーの無さ。ウンウン、好きにしなさい。薬でもスヴェンソンでも。
どんな姿でも、私はあなたの魂を見間違えやしない。
ドレスどうしよう?
レンタルでいくらくらい?あと即予約できる無宗教バチこいの教会ってあるのかなあ。
二人で身につけるお花は私が選ぼう。野の花のようなのを。

※余談
都市伝説。
ある少しぽちゃ目の女の子が彼氏にお姫様抱っこをおねだりした。ラブホで彼氏はそれを試した。
結果、彼女を支えきれず背中から自分の膝に落としてしまういわゆるプロレス技の「サバ折り」をしてしまい救急車が出動したという。
都市伝説としても、その男の子の心意気に一票。



⑦ハネムーンは永遠に

母方の祖父母は働き詰めだった日々から解放されたあと、二人でよく旅行に行っていた。
祖父は旅先で好きな短歌を詠み、祖母とそぞろ歩きや食事やウイスキーを楽しんだ。
彼らはずっとハネムーンを生きていた。
仕事終わって戻ったら俺たちもねこのじいちゃんばあちゃんみたいにしような、とT兄は約束してくれた。
あと釣りと剣道とバッティングセンターとTDCのヒーローショー、映画とか、普通のロマンチックなデートも山ほど計画中。東京案内ならまかせてね!
それから、保護猫を二匹もらいに行く予定だ。二人の子どもたちとして。
お料理もお菓子も作りたいしダンスも振り付けいっぱい考えたし。
少しずつ、長く楽しもう。なんせお互い若くはない。でもそれを弁(わきま)えてる夫婦、恋人同士は無敵なのよね。

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