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フェティッシュ(物神)

これを持ってると、あるいは身につけてるといいことがある。そんな物、ありませんか?


先日↑こちらのバーでマスターが私にいきなりコアなメタル話を振ってきたのにはワケがある。
それまで世間話をしていた私たちだったが、表紙で私が着ていたDream TheaterのTシャツをマスターがじーっと見て
「てか、さっきからそのTシャツが気になってしょうがないんだけど」と言って、話は展開した。


過去日記にもあるが私はDream Theaterの大ファン。件の品はアメリカのファンサイトで入手したけっこうなレアもの。40ドルもしやがった。
ところがこの服、人脈作りに何故か効く。



まだ実家にいた頃、休みの日にこれを着てホゲーとかあくびしながらリビングにお茶なんぞ取りに行くと。
母が生命保険の書き換えのため呼んだ郵政のファイナンシャルプランナーの男の子がアワアワと言った。
「そ。そのTシャツは」
聞くと彼も同バンドの大ファンと分かり、母そっちのけでLINE交換に及ぶ。
「水宮さん、僕今回名古屋も取れたんで行きます。で、やっぱ東京行きます?」
「ウン。やっぱりペトちゃん(ギタリスト)好きなの?」
「ハイ❣️ギターよく弾きます。ジョー・フルシアンテモデルで変なんですけど」
「あーレッチリの。ペパーミントグリーンのやつ?」
「知ってるんですかあ❣️」
あのね、母の保険よろしくね。


それほどこのTシャツは効く。他でも何度もそんなことがあった。
音楽に関係なくても、初対面の人と会う時などに何故か良縁をもたらしてくれるようである。



前の職場の、百近い道具すべてにリスペクトを置いていたことも以前書いた。
中でも深く印象に残った道具たちは私を実際に助けてくれたことも少なくない。



当時、まだ難しい性質だったボーイフレンド、のちの夫T兄との関係に悩んでいた。


「ミミ」と呼んでことに可愛がっていたあるトイレのモップがあった。ミミは子のない私にとってのフアフアの赤ちゃんみたいなものだった。そんな印象だったので。(道具たちはほかに男の子もブラックビューティーも淑女もおっさんもいた)



清掃を終えてミミを綺麗に洗い、指で梳かしながら私は泣いた。
ねえミミ。私どうしたらいいんだろう。
すると可愛いミミはにこにこ無邪気に答えた。
「ママもミミになればいい」
それは天啓だった。



その後まんまそうすることにした。そして今のすなおな幸せがある。T兄も折れてくれ、沢山ひどいことをしてごめんよと何度も言った。ミミは計らずして彼の求めていた存在をぴたりと当てたのだ。素直で可愛いベイビー。
ミミは、意地なんか張らずそれになればいい、そのままでと笑って言ってくれたのだ。


道具たちとのお別れの日、私は時々やるように内緒で、回れるだけ各現場を回った。そして彼らを抱きしめお礼を言い、各トイレにおわす瀬織津姫の神さまに願った。
どうかこの子たちをお願いしますと。

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