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いい女


小咄。↑以前実家近くの小さな電器店で見つけて撮ったドローン。
コレは教えなきゃと早速ボーイフレンド(のちの夫T兄)に画像送付。買ってもらおうというのでなくネタで。


T兄の返答
「ドローン女」


数秒考えてから、あ、ドロンジョねと分かったというアホなお話で。
しかしまあT兄、私にとっては最初からビンビンくるセンスの持ち主ではあったのだ。



男はともかく、ああ、いい女だなあ、というひとは私にはすぐ分かる。女湯に入れば
「うっひょーコリャたまんねえや❤️」などと感じてしまう私だ。でも、見た目や若さで太刀打ちできない、いい女は存在する。なぜなら私が「口説きたくなる」から。
イヤ別にそんなことはしないけど、私の中のアニムス(男性性)ことMr.トカゲが無類の女好きでして。


以前、オールレディの職場にいてまさに天国と思っていた。側から見れば六十代中心の女性たちであっても、彼女たちは妙に可愛いのだ。なかなか美人揃いでスタイルもいい。なんかね、もう、若いひとには真似のできない色気がね。
そこでの出来事。




上司が亡くなった年。深夜。正月二日だった。
私は昼にご逝去の報せを受け、何時間も泣いて、飲んだくれ、つぶれて眠ってちょうど起きたところだった。
その上司と同じ役職の、別支店の女性からいきなり電話がかかってきたのだ。
普段そんなにお会いすることはない。そしてこんな夜中になぜ、一番ペーペーの私に電話を?



彼女は泣いていた。
「ごめんね水宮さん。こんな時間に。今日お休みなのに。
支店で登録の時に一応電話番号訊いたじゃない。それで」
亡くなった上司と彼女は、長年無二の親友だった。戦友でもあった。それは知っていた。
「今日◯◯の作業入っててあたし行かなきゃならないの。でも。どうしていいかわからないの」
そして、また泣いた。



どんな言葉をかけて差し上げればよかったろう。ただ、大切なひとを喪う気持ちは知っている。まず一通り聴いて、慰めた。けれど最後に、本当に偉そうで差し出がましいことなのだが、思い切って言った。失礼ながらその方が彼女の涙を拭う効果があると。
「S総括が亡くなられたってことは、これからはI総括(その女性のこと)が上に立たれることになるでしょう。お気持ちはとてもわかります。でも、S総括のために、しっかりなさってくださいね。あたしら全力で助けますから。I総括、むりしないでね。休める時は絶対休んでくださいね?」


彼女の健気さ、心根の優しさ。そしてクールな働きぶりからは想像もつかないほどの可愛い女らしさが、胸を打った。やられた、俺。ズッキューン。
私が男で会っていたなら、そこでダメ押しのキスでもしてたろう。
以来彼女は立派な後継者となり、私はとても仲良くしていただいた。あのセクシーなピンクいろのくちびる。愛らしい軽口。誰より仕事ができて、子どもたちは育て上げ、孫は八人。
「もー最近一番下の子が離婚して帰って来ちゃってさー。ごはん作んなきゃいけないんだよー疲れたあ!」
お菓子をたべながら、笑って言う。



いい女は、ハートが男前。がんばり屋さんで、だけど隠れて泣いている。
私が職場を辞した時、私は人目を憚ることもできずに泣いた。愛してる女から去らなければならないみたいに。
彼女はスマイルマークのタオルやいい匂いのハンドクリームをくれて、今度は逆に私を叱ってくれた。
「水宮さん、笑顔だよ?泣いてたら幸せ来ないからね^_^」



いい女になりたいな。なろうなろうあすなろうでなく今日なろう。
ところが私はいつも、可愛い男にはほだされ、いい女には惚れてばかり。

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