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ラブライブ!の舞台『スクールアイドルミュージカル』がとにかく面白かった!という話をしたい

「え?これが配信どころか、ソフト化の予定すら無いの? 」

ラブライブ!シリーズ初となる舞台『スクールアイドルミュージカル』を鑑賞し終わって最初に出てきたのは、「あり得ないでしょ」という感情が滲んだ言葉でした。

歴史と伝統を重んじる進学校の椿咲花女子高等学校と、芸能コースによるブランド化を成功させた滝桜女学院を舞台に、アイドル活動を通じて二人の少女が出会ったことから始まる『スクールアイドルミュージカル』を見てきました。
はっきり書きます。
面白かったです。滅茶苦茶面白かったです。
劇団☆新感線は定期的に見に行くし、昨年は宝塚歌劇団の『HIGH&LOW』も見ているし、2.5次元系も数は少ないものの見ているんですが、『スクールアイドルミュージカル』の満足感の高さはそれらと比べても遜色ないですね。見て良かったです。
何が良かったか。
そう聞かれると色々と思い浮かぶものがあるんですが、一番は「ラブライブ!らしい舞台だったこと」。つまり「スクールアイドルを描いていたこと」ですね。そこが一番良かった。

ラブライブ!とはスクールアイドルを描くこと

アニメ、ゲーム、小説、漫画。そして今回は舞台。
様々なメディアで展開されているラブライブ!シリーズですが、ラブライブ!シリーズとは一体どういったシリーズなのかというと「スクールアイドルを描いている作品群」なんだと思います。
『ラブライブ!』ではμ’s、『ラブライブ!サンシャイン!!』ではAqours、『ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』ではスクールアイドル同好会で、『ラブライブ!スーパースター!!』ではLiella!。
少女達一人一人の「スクールアイドルとしての活躍」を描いた作品郡が「ラブライブ!シリーズ」で、スクールアイドルを描くことこそが「ラブライブ!らしさ」なんじゃないかなと思います。
そういう意味では『スクールアイドルミュージカル』はとても「ラブライブ!らしい」作品だったと思います。
題名から「スクールアイドル」と言ってますからね。
スタッフ陣及びキャスト陣の「スクールアイドルを描くぞ!ミュージカルで描くぞ!」という意気込みが伝わってくる素晴らしい題名だと思いますが、ではその「スクールアイドル」とはなんなんでしょうか。

スクールアイドルって何だろう

『スクールアイドルミュージカル』は、その題名通りに「<<スクールアイドル>>をミュージカルで描く」という作品でした。
ではその<<スクールアイドル>>とは一体なんでしょうか。
これは「ラブライブ!」というコンテンツに向き合う中で決して避けては通れない問いですが、その問いに一つの答えを出した作品が『ラブライブ!The School Idol Movie』でした。
この作品では「限られた時間の中で自分達がやりたいことを、自分達の力でやることこそがスクールアイドルの輝きなんだ」として<<スクールアイドル>>を描いており、物語のクライマックスでは全国各地からスクールアイドル達が結集し、スクールアイドルだけでイベントを開催することでスクールアイドルの凄さを世界に示し、スクールアイドルの祭典「ラブライブ!」のドーム開催を実現させる姿が描かれました。
以降のラブライブ!シリーズにおける<<スクールアイドル>>は、概ねこの「限られた時間の中で自分達がやりたいことを、自分達の力でやることこそがスクールアイドルの輝きなんだ」を踏襲しており、『スクールアイドルミュージカル』もその点は変わっていませんでした。

私たちはアイドルじゃない

「変わっていないなら今までの作品でいいのでは?」と思うのですが、
『スクールアイドルミュージカル』が素晴らしかったのは、前述した「限られた時間の中で自分達がやりたいことを、自分達の力でやることこそがスクールアイドルの輝きなんだ」の中でも「やりたいことをやっていい」という点を切り出し、「やりたいことをやってもいいんだよ!だって私達はアイドルじゃない。スクールアイドルなんだもん!」として描き切ったことにあります。
そのために用意されたものが「幼少期の夢が叶う直前なのに夢が見えなくなってしまった少女」と「そんな彼女に憧れて自分もやりたいと願う少女」でした。
この二人が出会い、「やりたいこと」で一緒に笑顔になる。
そんな二人が仲間と一緒に自分達の言葉として「私のやりたいこと」を、自分達のやりたいこととして胸を張って歌い上げる。
そんな「私はやりたいことをやるんだ!」と突き進む彼女達の姿がとても格好良かった。「アイドルとしてメジャーデビューが目前なのに夢を見失った少女と、そんな彼女に憧れて自分もやってみたいと願う少女の出会いから始まる物語」として納得できるものだったし、満足できるものでした。
特に物語のクライマックスに用意されたライブシーンは、アイドルでは決して出来ない、やりたいことをやっていい<<スクールアイドル>>だから出来るものでしたし、舞台以外ではおそらく成立しないものなので、「見に来てよかった」と心の底から思いました。

幼馴染百合まで完備とは聞いてない

百合好きとしての話になるんですが、幼馴染クソデカ感情百合まで押さえているとは聞いてませんでしたね……。
理事長二人については聞いていたし、公式サイト記載の設定を読んだ時点で「ライバルか親友のどっちかしかない」と思っていたので、最終的にそういう関係で落ち着くことについて何の疑問も抱いてなかったし、「そうなる」と言われても「そうですよね」と思ってたんですが、「幼馴染クソデカ感情百合」については何の警戒もしていなかったので、飛び出した瞬間に思わず真顔になって天を仰ぎました。
『ラブライブ!』も『ラブライブ!サンシャイン!!』も『ラブライブ!スーパースター!!』も『ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』も、「幼馴染がクソデカ感情を拗らせてる」という共通点があるにはあるのですが、舞台でも「幼馴染クソデカ感情百合」を拾ってくるとは思わなかったですね。シリーズへの解像度の高さが凄い。良い意味でも。悪い意味でも。
主役二人については「この二人がいなかったら、舞台そのものが瓦解する」というぐらい良い演技をしていて、椿ルリカも滝沢アンズも良い主人公だったと思います。
それ以外だと椿咲花女子だと天草ヒカルと三笠マーサ、滝桜女学院だと来栖トアかな。話を回すタイプのキャラと、アホだけど確信を突くタイプのキャラは元々好きなんですが、『スクールアイドルミュージカル』だとキャラが少ない分、特に良かったです。

結びに

おそらくですが、『スクールアイドルミュージカル』はラブライブ!シリーズでも最も古い時代を描いていると思うんですよね。
何せ作中で理事長はガラケーを使っていますし、「スクールアイドル」と言う言葉も殆ど出て来ない。当然ラブライブ!もない。まるで「スクールアイドル」と言う概念がないかのような設定になっている。
だからこそスクールアイドルの素晴らしさを叫ぶルリカ達が素晴らしくて。
「やりたいことをやってもいい。だって私達はアイドルじゃないんだから。スクールアイドルなんだから」を歌とダンスで叫び続けるあの姿は本当に美しい。スクールアイドル讃歌と言ってもいいでしょう。
『スクールアイドルミュージカル』という題名に戻ってきた時に「なるほど」と膝を打ちたくなるような素晴らしい物語でした。

あとまあ音楽買いする人間として、音楽が全部良かったことも言っておきます。全部劇伴を担当した小島良太作曲っぽいんですが、舞台音楽とラブライブ!の延長線がちょうど交差する辺りにある音楽ばかりで、聞いていて楽しかった。
ダンスも椿咲花女子高等学校は簡単で、滝桜女学院は高度なダンスになっているのもよかったですね。5月にアルバムが出るらしいので買います。

冒頭でも書いたように、配信もソフト化も予定されてないようなので、興味がある人は是非梅田芸術劇場に足を運んでみてください。
当日券とか全然買えるので……。


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