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【詩のようなもの6編】 内の道



【内の道】

半径3メートル 小さな世界
遠からず近からず曇りガラス
繰り返す アンビエント
掃除洗濯 その合間の食事
曖昧模糊 時の浮き沈み

不在届け 転出届け
どうやって対処すればいいの
窓際の花がもうすぐ枯れて
現実が醒めてしまうよ
夢は何処

埋没する優しさ
隣り合わせの残酷さ
スマホ越しの景色も言葉も
依存するに値しない
世捨て人は外の世界へ

赤紫に染まる夜景
全てに嫌われて祝われる
一瞬の火 降る雨
謎が混じり合い世界が広がっていく

【坂路】

理想論と下世話な話が憚る
それを笑って吹き飛ばせるほど
もう若くはないが
恐れ慄くほど年老いちゃいない

大枠を外しガラスがない
部屋から流れ込む時と風
季節の変わり目 愛を歌う
また君に拾ってほしい
見つけてほしい

沈みかけた魂掬う
そのきっかけになるように
朝の匂い 雨の匂い 君への思い
いつもの道に足す差し色へ変えて
互いの影 共に 風に乗り
時を超えていく
今を超えていく

僕らの話が笑い話になるその日まで

【冬の畔道】

布団の皮を剥ぐと
そこにいるのは
三日月型の夢追い虫

時計の音は無音が一番
街の喧騒も幻想も折中

言いたくもない雑言漏らし
余計なこと 考えないように
戸惑いと反省の中間値 掬い上げて
走り出す いつもの道

飾り気のないありふれた言葉
一つずつ拾い集めて作る小さなツリー

描いた夢の最大値を測るのは
昨日の君と明日の僕

託して笑って 擦って泣いて
数字で測れない 測りたくない
掛け替えない瞬間
冬の畔道

【夕路】

今更だけど謝りたい
受け入れられないのをわかっていて
いつもの自分になろうとする浅ましさが
そう思わせてしまう

開き直って全てが上手くいくわけでもなく
夕日に溶ける命が一縷の嘘を纏う

煙のように生きて
欠けた生活を送って
疎遠になった古き良き世界

臭い物に蓋をしても意味がない
分かっていながらそうするしかない

カラビナつけてぶら下げる依存先
言葉を生むことでしか薬にならないなら
逃れられないこの苦しさ全て
この夕路に焼き付けていく

【答えはいつも】

情けない みっともない
どうしようもない
恥ずかしいほどに忌々しい
自分の心の中

出来ることなら刻まれた鬱を
スルーしていつも元気でいたい
強くありたいと思っている

でも見て見ぬふりできない
わだかまりが戸惑い渦巻いている

誠実でありたい
だけど人を傷つけずにはいられない
答えはいつもその狭間の中で
君から見たら馬鹿馬鹿しい道の上を
恥ずかし気もなく彷徨っている
自分の心の中

【王道】

ここまで君に見せた道は
あらゆる分岐点の始まりで終わり

特に意味はない僕の顔で
君の持つ可能性の一つ
今までもこれからも

来し方行く末 滅私奉公
螺旋を繋ぐ 心を傾ける

大人になりきれなかった
澱みと怨みが動かす
復讐と何ら変わりない王道

またいつもの景色が僕の心染めていく



最後まで読んでくれてありがとうございました。

作中の君とは特定の誰かではなく出会うことが出来なかった
別の自分であり過去の自分だったりします。
道に迷う誰かの心に寄り添えれば幸いです。

水宮 青