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てぃくる 503 読書に向かない本

「読書は好きなんだけど、読みたい本がないんだよなあ」

「本屋で、ベストセラー本をチョイスすりゃあいいじゃん」
「みんなが読んでるような本に手を出すのは、後追い感があっていやなんだ」

「ミステリーとか恋愛とか、ジャンルで絞れば?」
「ジャンルの数が多過ぎる」

「じゃあ、俺が指定してやる。推理小説」
「謎解きがあると、気になって没頭できない」

「恋愛もの」
「俺に縁のないものは読みたくない」

「ったく! ホラー」
「眠れなくなるからダメ」

「ファンタジー」
「脳内お花畑には付いていけない」

「ノンフィクション」
「現実は、もうお腹いっぱい」

「どの分野でもだめかよ。じゃあ作家でチョイスすれば?」
「同じ作家ばかりだと飽きが来るだろ」

「むぅ。じゃあ、長編もしくは短編でセレクトするのは?」
「長いのはめんどくさい。短いのは物足りない」

「めんどくさいのはおまえだ。海外の話題作は?」
「俺が読みたいのはまだ翻訳されてない」

「自力で原文読めよ。ったく。古典ものは?」
「古臭くていや」

「近代ものは?」
「文豪臭さが鼻につくんだ」

「大衆小説」
「読者を、おまえらこんなもんでいいんだろとバカにしてる」

「ラノベは?」
「がき臭い」

「詩や短歌、俳句」
「読むっていう感じじゃない」

「おいおい、その調子じゃ読める本なんか一つもないぞ?」
「だから悩んでるんだよ。読書は好きなんだけどなあ」

(スラッシュマツの樹皮)


素直に読書が嫌いだと言えよ!


本のページをめくるように日々を送りたい

 そう思っていたが
めくられたページは二度と戻せないことに
 今やっと気づいた

(2019-01-19)

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