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腐向け二次創作の原動力、「二人をくっつけたい」

 さて、2日前にnoteの存在を知ってアカウントを作り、すぐにエッセイもどきを投稿して既に5本目なのであるが、ちょっと気づいたことがある。

 自分の投稿した記事の下に、他の方が投稿された記事が「おすすめ」という形で並んでいるのだが、『ライティング講座に行ってきた』というようなものが散見されるのだ。
 へえ、そんなものがあるのか。とちょっと興味を引かれ、どんな内容なのか見てみたが「素材集め」「読者のニーズ」「ペルソナ」等々、見ているだけで「うへぇ、大変そうだな」という印象だった。
 仕事ならともかく、こんなことを考えないといけないなら私は書いていない、いや書けないだろう。

 私は、腐向けの二次創作小説書きである。
 ここで、声を大にして言う。
 私が書く理由。
 それは、
『推し(男)と推し(男)をくっつけて、幸せにさせたい』
 これに尽きる。

 非常に腐った願望である。というのも、原作の二人は恋人同士ではないからだ。ただのクラスメイトである。勝手にキャラを変えるなと、原作のファンの方に刺されても文句は言えまい。そこは我々もわきまえているので、隠語を駆使しながらピクシブとXの隅っこに生息している。だがそれでも、「推しと推しをくっつけたい」という熱い願望をメラメラと燃やしながら、日々生きているのだ。

 いや、「くっつけたい」より、「くっついているはず」という方が正しいかもしれない。
 我々は原作で「二人が同じコマにいる」という事実だけで、無限にその前後を妄想する習性を持っている。その結果、「二人は付き合っている」「付き合ってはいないが、両片思いである」「片思いであるが、いずれくっつく」等々、さまざまなパターンで妄想し、「いいよねえ…」と一人で嘆息しているのである。

 私の推し(受け)である男は、非常に魅力的なキャラクターだ。肉体的にも精神的にも強い。しかし、辛い過去を背負い、今なお理不尽な境地と戦っている。逃げもせず、真っ直ぐに。ああ、なんて素敵なキャラなんだ。彼にはこの苦しい戦いが終わったら、絶対に幸せになって欲しい。そしてそんな彼を理解し支え、幸せにするのは、もう一人の推し(攻め)の男しかいない。
 
 おそらく腐女子でない方は、最後の一文に「なんで?」と思われたかもしれない。実は私も、なぜ受けの男を幸せにするのが攻めの男なのか、女キャラじゃダメなのか、うまく説明できない。ただ攻めの男もめちゃくちゃ強く、自分の劣等感からも目を背けずさらに強く超えてきた過去を持つ。こんな二人は、お似合いとしか思えないのだ。

 そう言えば、私が腐に落ちる前、腐女子の心理について解説している記事か何かを読んだことがある。
 BLにハマる女性の心理として、男女のものと違って男男の話は自分を投影することがなく、対岸の火事のように少し離れたところで、己の性を意識せずに安心して見ることができる、とかそんな内容だったと思う。
 そのときは「なるほど」と感心したのだが、今自分がハマってみると違う。全く違う。自分の性とか関係ない。というか、自分は関係ない。私はただ、二人が寄り添い支え合いながら、これからの人生を幸せに生きていって欲しいのだ。

 やはり腐でない方には、「だからどうしてその二人」と思われるかもしれない。実は私も小説を書きながら時々、「どうして私はこんなにも必死に、この二人をくっつけようとしているんだろう」と我に返ることがある。だが、そこは普段生息しているピクシブやX。二人が並んだ素敵作品が日々山のように流れてくる。それを見るとそんな疑問はあっという間に消し飛び、「ああ、素敵。二人で幸せになってね…」とまた妄想でラリった状態に戻るのである。

 話は逸れたが、つまり私が思うに、腐向け二次創作小説書きと一般の小説書きは目的が全く違うのだ。
 書く目的は、「二人をくっつけたい」。
 創作を継続する原動力も、「二人をくっつけたい」なのだ。

 もちろん、読者のニーズも意識しないわけではない。だがここで言う読者のニーズというのは、「えへへ…こんなのいいですよね…私も好きなんですよ…」とか、「あっ、こういうのみなさんお好きですよね。受けがここで、こんなことになっちゃうんですよ…最高ですよね…」とかそういうものである。
 
 まあ、キモいとは思う。だが我々はこれを、「己の欲望に忠実」と肯定している。
 己の欲望を隠すことなく忠実に、さらにそれを小説という形にする。
 これを見た同じ欲望を持つ腐女子とは、「同士!!」と固い握手を交わす、そういう世界なのだ。

 今更ながら、「我々」「我々の世界」なんて大きな主語を何度も使ってしまって、「全然違うよ」とお叱りを受けたらどうしようと心配になってきた。
 ただ私の創作の原動力は「二人をくっつけて幸せにする」であり、その目的のために今日も小説を書いている。
 

 

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