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絵本担当と出版社①


返品できない

ある映画の公開に合わせてノベライズ絵本が本部から3種類、10冊ずつ入荷しました。 
新刊コーナーに3種類とも平積セヨと本部からのお達し。そのように言われれば従って平積します。
平積期間も1ヶ月超えて、映画の公開もおわった。しかし、他の新刊をすっかり下げた後でもしばらくは下げずに置いてみる。
そして、数冊のみ売れた後、流石にそろそろ返品作業、と出版社を確認したら返品不可出版社だった…ということが最近ありました。

書店関連にお勤めの方には釈迦に説法ですが、ご存知ない方の為に説明すると、

返品とは、ある期間売れなかった書籍を取次経由で版元と云われる出版社に返送すること。
返品不可出版社は、この返送が出来ない出版社の事。一般的な言い方だと、買切販売のみ行う出版社という表現になるでしょうか。

出版流通が通常の小売の流通と異なるのは、ほとんどの書籍が一定の期間を経ると取次経由で版元に返品出来るという点です。
このシステムには賛否両論あるようですが、書店としては売れない本の在庫を抱えるリスクを考えると有り難いシステムです。

自分が取り扱っている書籍が返品出来ない。
これは担当にとっては非常に悩ましい問題です。

理由の一つは、店舗の在庫が減らず数字的に予算を圧迫するからです。

他の悩ましさもあります。

絵本に多いのですが、返品不可の出版社には、小規模ながら良心的な本を細々と出版している所が多くあります。
多数の良質な書籍を多数出版し、世間的に名前が知られている出版社で返品不可の所もあります。

そのような所が出した、内容や絵が優れた絵本や、雑誌などで紹介された話題の絵本があって、お客様に是非紹介したい!と思っても、返品出来ない絵本となると、担当として発注を躊躇してしまいます。

この悩ましさが心理的なものです。

中には発注した冊数と同じ数だけは返品出来る、とか発注数の10%は返品出来る等の決まりを作っている所もありますが、書店が自由に返品出来ない事に変わりはありません。

以前書いたように、新刊絵本は毎日、毎週、毎年どんどん出版されていきます。
良い絵本=売れる絵本出ないのが哀しい現実で、いつまでも返品出来ない絵本はゾンビ絵本になりがちです。
書店の担当者として敢えてそのような書籍を増やす訳にはいきません。

どの出版社からどんな絵本をギリギリ売れそうな数発注するか…ここが腕の見せどころであり、難しいところです。

こんな苦労もあるので、在庫予算を設定し、いつもとやかく言ってくる本部が、冒頭に書いた例のように、有無をいわさず返品不可出版社の本を送ってくると毒づきたい気持ちになります。"チェーン書店あるある"な話です。


視点を変えてみれば、

お客様にとっては、自分が買いたい絵本が返品不可かどうかは関係ありません。
また、私は書店員なので、書店員としての視点からしかこの問題を考えられないですが、おそらく出版社側にも返品不可にせざるを得ない理由が色々あるのだと思います。


返品絡みの問題は、絵本担当として悩ましいのですが、文句を言いながら納得してナントカやっていくしかないのでしょう。













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