不安に効く心のコンパス-実践編

心のコンパス

今回は心のコンパスという話を紹介したい。私は実際のセラピーでも特定の患者さんにこの話をする。特に頭でっかちになった人に。私自身頭でっかちな人間として結構使えるメタファーだと思っている。ということで、ぜひお付き合いください。

今、あなたのいる場所で目をつぶって想像してみてほしい。あなたのお腹の中にある大きなコンパスを。

何色でもいい。あなたの好きな色をした、胴回りと同じくらいの大きさのコンパスだ。

そのコンパスの針はグラグラと揺れながら、一定の方向を指している。それが相対角度とは関係なく、あなたが進むべき方向を指しているとしたら、どの方向を指しているでしょう。

わからない?オッケーです。
次の質問。

そのあなたのお腹の中のコンパス、磁気でないとしたら、何で動いていると思いますか?社会の理想像?稼げる額?トレンド?

いいえ。

それは、あなたの感情です。

感情は人間が持ちうる最大かつ唯一の道案内人なのです。

もしあなたがコンパスの指す方向を把握できないとしたら、それはあなたがあまりにも長く感情を押し殺して生きてきたということかもしれません。そして、巨大化した頭(フロイドのいうところの超自我)に人生の舵を明け渡してしまったのかもしれない。

しかし、この現代最大の武器である超自我は、不安という闇の中では使い物にならないということを理論編で書きました。

だから、私たちは感情を取り戻さなきゃいけない

取り戻す第1ステップとして、感情についてもう少し具体的に見ていこう。

感情ってそもそも何のためよ

ネガティブな感情は良くないと思っている人は結構多くいるのではないだろうか。

確かに、怒ると血圧が上がる。あまりにも頻繁に血圧が上がると体には良くないだろう。そして、ネガティブな感情をばらまく人は周りを疲れさせる。これも良くはない。

では、その反対はどうだろう?

いつもポジティブな人は皆さんの周りにも多いだろう。彼らは元気をくれる。一緒にいても楽しい。

と同時に、常に明るい人と一緒にいるとプレッシャーを感じるということはないだろうか。私もあの人のようにいつも明るくなきゃいけない、といったように。

実際のところ、感情にはネガティブもポジティブもない。感情はいつもニュートラルだ。役割が違うだけ。

怒りは良くないから押し殺さなければいけないと信じている人がいたら、それは大間違いだと言いたい。怒りは、何かを変えるためにあなたを行動へと駆り立てるエネルギーである。エネルギーなしには何も変えられない。

悲しみは、周りを心配させるから隠さなければならないと信じている人がいたら、こう言いたい。悲しみはあなたの行動をゆっくりにさせ、自分のための時間を持たせるストッパーなのだ。だから、それに逆らっちゃいけない。昔の人が一年喪に服したのは理にかなっている。

誰かのことを攻撃したくなることがあったら、なんらかの妬みが潜んでいる可能性が大だ。うらやましくなんかない!と虚勢を張ちゃう人にはこう言いたい。方向が逆ですよと。妬ましさを認めて、その感情を使おうよと。

他の感情を見てみよう。

いら立ちは、あなたが何かを押し殺して生きていることに気づかせようとする針だ。チクチク私たちの心を刺して、教えてくれようとしている。

そして、感動は、あなたには他の人間が必要なんだよと気づかせてくれる目覚まし時計なんだ。なんせ、他人という存在なしに感動は存在しないから。

私たちは皆、こういった感情ってものをすでに持ってる。いやいや、私にはそんなものはなりませんよ、と言う人がいるかもしれない。でも、それは違う。心臓がない人間がいないのと同じくらい、感情のない人間はいない

あるものは使う。ということで、次は感情の使い方を見ていきたい。

心のコンパスを実際に使う

「妬み」を例にデモンストレーションしたい。

まず、あなたの嫌いな人リストを作ってほしい。左側に名前を、そして、右側に何が嫌いかを書く。できれば10人くらい挙げてほしい。深く考えずにまずは名前をだーっと書く。

次に、何が気に入らないかを書く。
かまととぶってる
不倫してる
金の亡者だ
お金もちと結婚している(自分で稼いでいない)
大して芸もないのに成功しているなど、なんでもいい。

書き終わったら、その人たちの共通点を見つけてほしい。必ず何か共通点があるはずだ。例えば、

すごく好き勝手に生きている感じがする
働かなくてよくて自由な時間がたくさんある、などなど。

見つかっただろうか?一つ例をとって見てみよう。

例えば「大してキレイでもないのにテレビに堂々と出てる人が嫌い」という共通点が見つかった場合、これをどう自分のために使うか

その相手をSNSで批判したりするのは、上でも言った「向ける方向が逆」パターンだ。ベクトルは相手に向けるのではない。自分に向ける。

というのも、妬みは、本当は欲しているけど自分で禁止しているものに気が付かせてくれる伝書バトみたいなものなのだから。

だから、自分にベクトルを向けると見えてくる。

もしかしたら、誰もが振り向くような容姿でないあなただって、テレビに出たり、注目されたいんじゃないか。ただ、誰かにばかにされるかもしれないとか失敗したら恥ずかしいなどの理由で、自分でその欲求を抑圧しているのではないか、と自分に問いてみる。

「私だってあんな風になりたいわよ、なれるものなら」と思った人がいたら、こう言いたい。

そうでしょう、そうでしょう。それはいたって健全な人間の欲求ですよ!
自分がこの世に存在することに注目してもらいたくない人間の方が絶対に少ない!!

こうして自分で認めてあげると(そして、それを私と共有すると)、ちょっと自由になった感じがしませんか?

もしかしたら、まだ叶っていない今の現実に一時的に悲しくなるかもしれない。それでよいです、そのままで良いです。しばらくすると、どことなくエネルギーが湧いてくるはず。

それがあなたの心のコンパスが再び動き始めたサインです。

まとめ

・感情は進む方向を示してくれる心のコンパス
・感情にはポジティブもネガティブもなく、正しい使い方によってエネルギーとなる
・隠れた欲求を自分で認めてあげることによりコンパスが始動し、方向性がわかる

少しでも誰かのお役にたてたことを祈りながら、また次回。
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