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セラピストと患者の相性(フィッティング)について

「どんな悩みでもいいの?」で書いたSprechstunde(以下SSD)の後、セラピストからセラピーが必要であると判断され、ご自身もセラピーを継続的に受けたいと思われた場合、次に来るのが相性の合うセラピスト探しです。

このセラピストと患者の相性(フィッティング)はその後の治療の結果を左右するとてつもなく大切な要素です。

SSDを受けたセラピストと相性がいいなと感じた時

次の段階としてお試しセッション(probatorische Sitzungen)へ移行します。このお試しセッション(probatorische Sitzungen)は最多で4回まで行うことができます。

お試しセッションと書くと初回無料的なサービスを思い浮かべる方がいらっしゃるかもれませんが、お試しはお試しでも医療行為の一巻として健康保険はセラピストに報酬を払います。ですので、お試しという私の訳の軽い響きに惑わされることなく、セラピーの大切なセッションの一部と思って挑まれるのが良いかと思います。

SSDを受けたセラピストとの相性がイマイチだった時

SSDをすでに受けたという書類(PTV11と右上に表記してあるもの)をもらって、他のセラピストのところへ行きます。別のセラピストのところで電話予約を取る際に"Sprechstundeはすでにしました"と伝えましょう。それによって自分には確実に外来の治療が必要であるということをアピールすることができます。

お試しセッションでの課題

このお試しセッションでは、患者さん自身にもセラピストにも重大な課題があります。それは、これから長期に渡る(最短でも1年から1年半)治療を共に進めていけるかをチェックすることです。これが他の医療行為と心理療法の決定的に違う点です。例えば内科に行って、治療者が私はあなたを見れませんということは極稀かと思いますが、心の治療においては少なくありません。

これは心理療法という手段の特徴的な点のひとつと言えるでしょう。

ではか?特に精神分析的心理療法においては(認知行動心理学は専門外であるため言及を避けます)、患者とセラピストの「関係」が治療の最大のツールとなりからです。

そういう意味でも治療を始めるにあたっての大前提となるのは次のようなものです。患者さん側から見た場合、このセラピストになら(今すぐにでなくとも)何でも話せる、セッション中に安心感を感じるなどです。この人なんだか嫌だな、と直感的に思った場合は、無意識のレベルでの「からみ」が起こっていますから、少々時間がかかっても合うセラピストが見つかるまで待つのがいいかと思います(残念ながらドイツ語圏ではまだ日本語でのセラピーを提供しているセラピストが数人に限られているため、そんなに選り好みしていられないよ、というご意見があるのは承知していますが…)。

このセラピストと患者の程よいフィッティングなしに無理にセラピーを始めても最終的に治療は上手く行きません。ですから、始めの数回のセッションで相性をしっかりと確認することが大切です。

セラピストから断られた場合

ご自身は特定のセラピストの元で治療を受けたいと思っても、そのセラピストから断られる場合もあります。その際、他のセラピストを紹介されたり断られたりしても、決して「私のことが嫌いなんだ」などという風に個人的に捉えてはいけません

というのも、治療者は患者さんのことが嫌いだから、といった個人的な理由で断っているわけではないからです。

セラピストによっては理由を明確にしない人もいると思います。これは極めて複雑な様々な点を考慮しての決定であり、すべては説明しきれない、また専門的な話になりすぎるため割愛するという意図があるかと思います。それでも理由が知りたい場合はオープンに聞いてみるのも良いでしょう。

また、セラピストに断られ拒絶されたような気分になったり真摯に受け止めてもらっていないような気分になった場合に、それを相手に伝えることも大変意義のあることと思います。その時の患者さんの想いを受け止めることもそのセラピストの担う大切な任務の一つですから。

最終的には専門家の判断を信じて、私のためを思ってより良い道を提案してくれたと思って、次へ進むように心がけましょう。


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