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日曜美術館を見て(2023.3.5)

今回のテーマはエゴン・シーレ。
正直に言って、個人的にエゴン・シーレは嫌いだった。ただ暗いというイメージしかなかった。

独自性から見れば、確かにエゴン・シーレしか書けない絵なのだが、その何に人をひきつける力があるのか、どうして私は嫌いなのかを確かめるために、先週、東京都美術館へエゴン・シーレ展を見に行った。

エゴン・シーレは自画像が多い。それだけを聞くと、ナルシストなのではないかと思ってしまうのだが、その絵はまったく自分を誇示しようとしていない。逆に自分の恥部をさらけ出している。心の闇を目の前に突きつけられて、それに嫌悪感を抱いてしまったことに私は気づいた。

番組では、エゴン・シーレの絵には死と生が混ざりあっていると言う。父親が梅毒で死んだことで、性に対する恐怖心を持っていたとも言う。もしかしたら、自分の恥部をさらけ出すことによって、性への恐怖心を乗り越えようとしたのではないだろうか。

死生観は静物画にも表れている。
私の今回のお気に入りの絵は『菊』だった。その菊の花の上部の一部だけ明るく、残りの多くは黒ずんでいる。そこに生命のはかなさが感じられた。私の目からすると、生々しい人間をさらけ出した絵より、花を通して間接的に生と死を表しているほうが受け入れやすいのだろう。

エゴン・シーレは二十八歳で亡くなったが、もしスペイン熱で彼自身だけでなく、妻と子供と三人で暮らしていたとしたら、エゴン・シーレの絵はどのように変わっていたのだろうかと思うと、早い死は残念でならない。

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