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『パパラギ』を読んで

西サモアの酋長ツイアビが村民に伝えた話の翻訳本である。

パパラギとは白人のことで、直訳すると「天を破って現れた人」という意味だそうだ。宣教師が乗ってきた帆船が、天を破ってやってきたように見えたことから名づけられた。

ツイアビは宣教師からキリスト教を知ることにより、「大いなる力」を信じるようになったが、逆に白人自身は神を信じていないことに気づく。
また、ヨーロッパを見聞することで、文明社会の矛盾を素朴な視線で批判する。

神からもらった自然を破壊して、物を作り、技術を高めることで、神になろうとしたり、お金というものを自ら作り、それに支配されたり、時間を切り刻み、細かなスケジュールにわざわざ振り回されたりする白人の姿に対する疑問を並べたてている。文明社会は物で溢れているが、その代わりに心がどんどん貧乏になっている。

日本人だって笑っていられない。明治期にヨーロッパ文明を取り込むことで、物質崇拝、技術崇拝、お金崇拝というデメリットまで輸入してしまったことは周知の事実で、それは現代になって改善するどころか、さらに悪い方に進んでいるとしか思えない。

私はこういった問題点を皮肉る小説や詩を幾つか書いているが、このツイアビという酋長は皮肉るわけでなく、透明な目でもって素直にえぐり出しており、我々が反省しなければいけない視点をたくさん啓示してくれている。

自然との共存や時間に縛られない生活、すべてのものは神からのいただき物だから、みんなで分かち合うという習慣など、南の島から学ぶことは非常に多い。

この本は是非すべての日本人が読むべきだと思う。

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