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障害者採用枠の就活でしたほうがいいこと-障害者雇用の「障害」 しておくことべき編

 説明会編の締めにも書いたが、基本的に障害者雇用で求められる点はほとんど健常者と変わらない。変わる点としては、配慮してほしい点を明示しておくことだろうか。
 動き出すのは早いに越したことはない。学部生なら2年生の終わりごろから、大学院進学後に就職を考えているのであれば大学に卒論を提出した後くらいから動き出しても、早すぎるなんてことは決してない。……というのも、もともと進学を考えていて当方が動き出すのがとんでもなく遅すぎた、というのが根底にあるのだが。

 本編の冒頭にも書いたが、僕は面接通過率0%を誇るゴミクズなのである。そんな人間が就活お役立ち情報を書いているのだから、役に立たないことは承知の上である。笑ってくれて構わない。
 ただし、自省の意味ややらなくて後悔した点を書き記しておき、反面教師としてもらえると僕の就活した経験が役に立つのではないか、とは考えている。この記事が誰かの役に立てば幸いである。

※筆者は発達障害の一種「自閉スペクトラム症(ASD)」と、精神障害の一種「適応障害(抑うつ状態)」を抱えています。車の運転免許が取れる程度には軽い症状ですが、置かれた環境によっては全く動けなくなったり、過呼吸に陥ったりする程度には状況に左右されやすい人間です。
精神障害、発達障害を抱えている求職者向けに書いたものになりますので、参考になれば幸いです。


企業に内定した人のESが見られるサイトを見ておく

 一応企業には興味はある。しかし、企業研究とか難しくてわからない……売上比較?企業風土?企業のやっている内容?確かにホームページや説明会で調べることはできるが、どんな人を求めているのか、どんなことができるのか、わかりづらいことがある。
 そこで、企業に内定した人のESが見られるサイトを見ておくと、どんな人が求められているかがわかりやすい。ESを載せている人はその企業に合格した人がほとんどなので(稀に「最終選考で落ちた」という人もいる)、その企業にぴったりな人はどんな人なのか、を知ることができる。また、ESに目を通すと、自分の特性や得意不得意とぴったりだ、というケースが見つかることもまれにある。ESを実際に書く時の参考書としても、見ておくのは非常に有意義であると感じている。僕も実際に表現を真似した。ESの通過率は結構よかったと自負している。なお面接。

 僕が使ったサイトは以下の通り。

 いずれのサイトも、利用するときは会員登録が必須である。大学のアドレスや普段よく使うアドレス等を登録しておこう。ただし、会員登録時に、別のサイトに情報を流してもいいですか、と問われることがある。確かに就職活動の役に立つ情報サイトに自身の情報を流してもらえるが、メールがたくさん来るので困る人はチェックボックスからチェックを外しておこう。
 
ESは健常者と同等のフィールドで、いかに自分が会社に対して意欲的な人間であるかをアピールする場である。適切な表現、どのような人材を求めているか、などを見ておくと勉強になるだろう。

「やりたいこと」「やりたくないこと」「できること」「できないこと」を書き出す

 よく「自己分析をしろ」と言われるが、この項目がそれに該当する。
 「自己分析」というと「自分のスキル、やりたいことを明確化する」ことが思い浮かぶかもしれない。いわゆる「就活力」やら「自己分析」やらをしてくれるサイトもあるが、正直眉唾物である。ちなみに一度だけ使ったことがあるが、就活力はゴミだった。メンタルの問題が多数あるようだ。

 ところで、この表題に疑問を持った人はいるかもしれない。なぜ「やりたいこと」「できること」ではなく、「やりたくないこと」「できないこと」を書き出そう、と書かれているのか。
 やりたいこと(いわゆる「就活の軸」)がほとんど決まっていて、自分のできないこともはっきりわかっている、という人は読み飛ばしてもらって構わない。しかし、やりたいことなんてわからない自分にできることってなんだろう、と感じている場合は、今から説明する方法を試すと見つかるかもしれない。

1.「やりたくないこと」「できないこと」を書き出す

 いきなりネガティブな話題が振られて驚く人もいるだろう。
 だが、よく考えてほしい。企業に就いてやることと言えば「仕事をする」である。続かなかったら意味がないのだ。「やりたくないこと」「できないこと」が仕事の大半を占めていたら、仕事が続かないのは容易に想像がつくだろう。

 というわけで、まずは「やりたくないこと」「できないこと」を書き出してみよう。「やりたくないこと」「できないこと」は、できるだけ具体的に書き出すといいだろう。「○○な人がいると××できない(やりたくない)」「○○の音が聞こえている間は集中できない」など、環境要因も含めて細かく場合分けしてみるとなおよい。

 なぜやりたくないことも書き出すのかというと、そこにはできないことも含まれている、あるいは根本的に苦手なことも含まれる可能性があるからだ。
 例えば、僕の場合だと「初対面で、しかも一度しか話さないお客様と一対一で話すのはやりたくない」が挙げられた。理由を考えてみると、

  • 新規場面は緊張して本来のパフォーマンスを発揮しづらい

  • 一対一だと失敗をリカバーできない、パニックになってしまう。

  • 失敗した場合の心理的負担が大きく、立ち直りが遅い。

  • そもそも適切な言葉選びが苦手で、コミュニケーションの場で失敗したことがある。知らない人と会話して第一印象を台無しにしたくない

 このようなことを言っていると、各方面から「できない理由を探すな!」「やりたくないだけで言い訳するな!」と火の粉が飛んできそうなので1つ言わせてほしい。自分の持っている特性が自分の可能性を潰している現象は、全能な人間でない限り持ちうるものだろう。例えばお酒が弱い人に一気飲みを強要させるだろうか?カクテルほんの少しで酔う人に、ストロングチューハイを無理やり飲ませたりするだろうか?これを、「やりたくないだけで言い訳をするな!」と強要することは正当なのだろうか?
 ちなみに上記の例は「努力次第ではできなくもないように見えるケース」と「最悪死に至るケース」を同列視しているので、論点がずれていると指摘されることは承知の上である。成長の機会を逃している、とも言い換えができるかもしれない。だが、仕事内容と自分のやりたいことが合わず、すぐ辞めてしまう人材は企業として欲しいだろうか?欲しいというならコメントしてもらえると嬉しい。

 取り敢えずできないこと、やりたくないことを、理由を明確にしてひたすら書き出してみよう。それが、自分を理解することの第一歩に繋がる(と考えている)。

2.「やりたくないこと」「できないこと」を譲れない順にクラス分けする

 「やりたくないこと」「できないこと」を書き出せたら、次はそれらを譲れない順にクラス分けしよう。
 具体的な例を挙げよう。

クラスA : 人や道具の補助があっても実行が難しい
クラスB : 人や道具の補助があって実行することはできても、継続して行うことは難しい、あるいは耐え難い苦痛が伴う
クラスC : 人や道具の補助が必要だが、補助があれば実行できるし、継続して行うこともできる
クラスD : 人や道具の補助が複数回あれば、その後は1人で継続して行うことができる
クラスE : 人や道具の補助が1回あれば、その後は1人で継続して行うことができる
クラスF : 人や道具の補助がなくても行うことができるが、必ず苦痛を伴う
クラスG : 人や道具の補助がなくても行うことができるが、慣れるまでは苦痛を伴う
クラスH : 人や道具の補助がなくても苦痛なく行うことができる

筆者が独自に作成

 目安としてはこのようになる。人によってはこのクラスの間に何か別の規準を差し込んでもいいだろう。
 上記で書き出した「やりたくないこと」「できないこと」をクラス分けしてみよう。特に、「やりたくないこと」に関してはクラスC以下に分類されることも多いのではないだろうか。たとえ最初「やりたくないこと」に分類していたとしても、クラスB以上に分類されたら、それはできないこととして考えるといい。
 また、クラスF、Gのように「苦痛を伴う」場合は、「適度な休息が必要である」または「何かしらの補助が必要」と解釈するとよい。すなわち、クラスF、Gに分類されるような仕事を任される頻度が少ない仕事を探す、ということになる。

 この指標はあくまで経験をもとに独自制作したものなので、ご意見等あればコメントにいただければ幸いである。

3.「やりたいこと」「できること」を探す

 さて、ここまでで「やりたくないこと」「できないこと」を書いた。いよいよ「やりたいこと」「できること」を探す番だ。
 自分の興味関心を率直に「やりたいこと」として軸を定めると、意外と企業数や業界が多い。例えばプログラミングが得意でその技能を活かしたい、としても、企業や業種によってやることはまちまちだったりする。社内SEだってあるし、プログラマーの道だってあるだろう。障害者の支援がしたい、と言っても、直接介入して支援する方法もあれば障害について発信・啓発する方法もあるし、対象も子供から大人まで様々だ。では、どうすればよいのか。

 答えは簡単、上記でクラス分けした「やりたくないこと」「できないこと」を元に、企業や業種を弾く。それで次第に就職の軸――つまり、「やりたいこと」がより明確に定まってくる。
 あるいは、率直に高校、大学で身に着けたスキルを「できること」として書いておくのもよいだろう。ただし、「できること」に関しては、企業に入ってからでも研修等で学べることが多いので、経験を要するような職種・企業でなければ、「やりたいこと」と合致している企業、または「やりたくないこと」「できないこと」の条件をクリアしている企業を選ぶとよいだろう。

 「やりたくないこと」「できないこと」のクラス分けの活用についてだが、これは申請すればクラスA,Bに分類される仕事は免除してもらえるか(あるいはそもそもそれに値する仕事がないか)、クラスC~Gにおいてはそれに応じた配慮がもらえるか、で企業を選ぶとよい。クラスHは「妥協点」として考えておこう。そのうえで、エントリー段階であらかじめ必要な配慮を言える企業に応募できるとなおよいだろう。
 ちなみに、これはあくまで第三者視点を一切排除した、主観のみによる自己分析なので、独りよがりになりやすい。できれば同じ障害を抱えており就業している先輩、大学の支援機関、または下記に紹介するようなエージェントを利用し、第三者視点も含め長所・短所を見極めよう。

エージェントや大学の支援機関の個別相談を利用する

 近年ではマイナビやリクナビにも「チャレンジド」という項目が追加され、障害者採用にも目を向けられるようになっている。あるいは、クローバーナビ、Webサーナといった、障害者雇用に特化したサイトもある。こうしたエージェントを活用し、企業を探すのもまた1つの手段である。

 ただ、1人で探すとなると不安が付きまとうこともあるだろう。就活の軸が定まっていて、1人で積極的に探せるならまだしも、「雇ってもらえるのかな……」と不安に感じる人もいるだろう。
 そうした人のために、エージェントや大学の支援機関の個別相談が存在する。個人的な活用方法を以下で紹介するので、興味があれば見てほしい。

就活の不安を相談する

 まずは就活の不安などを打ち明けてみよう。必ず不安に寄り添いながら、これからどうアクションをしたらいいか答えてくれるだろう。また、会話していくうちにこちらが気付かなかった長所、向いている企業などが見つかるかもしれない。ESに書く材料が増えるよ。やったね。

ES・履歴書の添削、面接対策をする

 次に、ESや履歴書の添削、面接対策もしてもらおう。「何を書いたらいいかわからない」でも構わない。「こんなことを書きたいんです」でもいい。また、前章で分類した「やりたくないこと/できないこと」をどのように表現すべきかも相談してみよう。これが「必要な配慮」となって、おのずとESや面接の対策にもなるだろう。
 ちなみに、配慮に関してちゃんと整理したい!と思った人は「ナビゲーションブック」でググろう。障害について、自身の強みについて、などテンプレートが用意されているので、使ってみるといいかもしれない。
 できたESや履歴書、面接のカンペなどを持ち込んで、どんな風に言えばいいかを対策してみよう。

 ちなみに、大学の就職課はあまりおすすめしない。障害者採用にあまり詳しくない人が付いてしまってこちらの不安に耳を傾けてくれないケースがあるからだ。修士1年のとき付いた相談員が自主性に重きを置きすぎる人で、こちらの不安にはあまり寄り添ってくれない人だった。当時情緒不安定だったのもあるが、情緒不安定ならなおさら(専門の方がいる場合を除いて)大学の就職課に障害者雇用の話を持ち込むのはやめたほうがいい。

健常者向け説明会/インターンに参加する

 これは説明会編で述べた1社だけ行った現地での企業説明会で聞いて、目から鱗が落ちた。
 障害者向け説明会及びインターンだと、実際の仕事内容よりも配慮に重きが置かれるケースが往々にしてある。なので、健常者向けの説明会やインターンに参加し、仕事がどのようであるのかを体験することが重要だと述べられていた。

 僕はこれを全く知らなくて後悔している。インターンについてはESにも書けるし、内定にも繋がりやすい。なんなら自信にも繋がるだろう。

 この記事を見た人は僕を反面教師として、健常者向け説明会やインターンにも参加してもらいたい。特に学士3年、修士1年の君たち、まだ未来はある。

さいごに

 ある日見つけた障害者雇用関連のツイートに、こんな文言があった。ちなみに元ツイを遡れなかったので、多少の言葉の間違いには目をつむっていただきたい。

厳しいことを申し上げると、「○○障害なんですけど御社に入社できますか」と質問しているうちは、残念ながら雇用してもらえません。

 ツイート主は障害者雇用に関する機関であったことは記憶している。しかし、このような不安を抱いてしまう気持ちはわかる。何故なら、説明会で「精神障害や発達障害だろうと、仕事量や内容の調節は絶対にいたしません!健常者と同量の仕事をこなせる方を募集しています!」などとのたまうなど、必要な配慮をしてもらえないと不安を煽られるケースがあるからだ。実際、「精神障害ですが御社には雇ってもらえますか?」と質問している人はいた。不安定な精神を抱えながら、さらに情緒不安定になりやすい(7人に1人が病むともいわれている)状況に置かれているのだ。
 大学では修学に必要だからと掛けてもらっていた梯子を、企業に入った瞬間に外される。「学校だから配慮してもらえるけど、社会に出たらそうもいかないからね」と理解のない言葉を掛けられることもある。この恐怖が付きまとっているからこそ出てくる質問だ。実際筆者は、大学で必要だからと掛けてもらった梯子(聴覚過敏、指示する際の口調等)を、同じ大学内の研究室で外された経験がある。このような経験があれば、またこのような予期不安があれば、おのずとこのような疑問が出てもおかしくない。

 少なくとも、「仕事の量を調節することはいたしません」発言をする企業以外は、地雷は無いと見ていい。不安に思わなくていい。「(慣れれば)これだけ働けます!」と自信を持とう。不安だったら面接を第三者に見てもらうのもいいと思う。(筆者は場面を想定したシミュレーションに抵抗があるのでやらなかった。代わりにESを見られるサイトで過去訊かれた質問に対して答えを用意した。)

 僕は研究を中途半端にしたまま、精神をこれ以上痛めつけるわけにもいかず、またネガティブな印象を与える発言をしてしまう己の語彙をどうにかすることも諦め、就職活動を放り出した。どこかで休まないと精神状態が悪化する、とわかりつつも、休んでばかりもいられないのもまた現状である。
 どうか僕みたいな、就活をネガティブな理由で放り出す人間がこれ以上出ないことを祈りつつ、筆を置かせてもらう。

 駄文・長文を最後までご覧いただき、誠にありがとうございました。

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