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トンニャン過去編#44 エレン・ピース(原題「天使チェリー」)

※この物語は「阿修羅王」編・「アスタロト公爵」編の本編であり、さらに昔1970年代に描いたものを、2006年頃に記録のためにPCに打ち込んでデータ化したものです。話の位置は「ルーシーの巻」の次。「エレンの巻」のような意です。また、特定の宗教とは何の関係もないフィクションです。

「二人とも、持っている手紙を交換しなさい」
エレンもルーシーも、黙って古い手紙を出す。そして、トンニャンの言った通りに交換する。
震える手で、読み始める。やがて、また二人の目から涙がこぼれ落ちた。
 
「お互いにこれを読んで、どう思ったの?」
「トンニャン、唐突すぎる」
チェリーはエレンとルーシーの手を取った。
「二人が、手紙を読んで戸惑っているのは、わかるわ。
でもね、エレン、ルーシーのおかあさんが亡くなる時、最後にルーシーに本当の事を話して逝ったの」
 
ルーシーはうつむいている。
「本当の事?」
「そうよ、エレン。ルーシーは、ルーシーのご両親の子供じゃないの。
よそからもらわれてきた子供だったの。しかも、ルーシーのおかあさんは、その家の名前も最後の言葉として、残したの」
チェリーは深呼吸した。ルーシーはうつむいたまま、そしてエレンは次の言葉を待っている。
「ピース・・・と言ったわ。確かにこの耳で、私も聞いたの」
 
 ***
 
 
パーティーはまだ続いている。しかし、エレンとルーシーは、チェリー、トンニャンを伴って、書斎に来ていた。そこには、先ほど給仕の一人に呼びにいってもらい、仕事場から駆けつけた、エレンの両親もいた。
皆、それぞれソファーにすわり、エレンとルーシーは、テーブルに二通の手紙を置いた。
 
「この手紙は本当の事なの?パパ、ママ」
エレンの両親が顔を見合わせて、力なくうなずく。
「パパとママは、この手紙を寄こしたエイビスさんが亡くなったのを知っていたの?」
「亡くなった?」
 
うつむくルーシーに、感情的になってゆくエレン。見兼ねてチェリーが口をはさんだ。
「あの。エレンの小さい時、スコットランドにいらしたんですね?」
 
確かにエレンが幼い時にスコットランドにいて、このロンドン近郊に引っ越して来た。そして今の事業を立ち上げ、夫婦二人で必死で働いて、現在の成功にむすびついていったのだった。さらに、エイビス夫妻とはスコットランドで知り合い親しくなった。こちらに越してからも、最初は手紙のやり取りがあったが、いつの間にか途切れるようになり、やがて消息不明となったという。
 
チェリーは、チラッとルーシーを見た。そして再びピース夫妻に向き直ると、意を決したように口を開いた。
「エイビス夫妻は、先ほどエレンが言ったように、亡くなりました。
ご主人は十年ほど前に、そして奥さんはつい先日」
ピース夫妻は同時に声を発した。
「では、ルーシーは?」
ルーシーが顔を上げた。

続く
ありがとうございましたm(__)m

トンニャン過去編#44 エレン・ピース(原題「天使チェリー」)

※トンニャンシリーズ、「魔女裁判長リリス」の次は、
書籍「炎の巫女/阿修羅王」の
「阿修羅王(全6話)」の前編3話「力の神インドラ」「猿神ハヌマーン」「シッタルタ」と続きます。
もしもnoteに掲載すれば、1話が5回、3週分となります。
「リリス」の続きを3週分、空けます。
そしてその間、トンニャン過去編を続けて掲載します。

【「炎の巫女/阿修羅王」全国配本書店名110店舗はこちら
https://note.com/mizukiasuka/n/ne4fee4aa9556 】

※トンニャン過去編 全部読めるマガジンはこちらから
https://note.com/mizukiasuka/m/me347e21d7024

次回トンニャン過去編#45 エレン・ピースへ続く
https://note.com/mizukiasuka/n/n2299d8d6c4cb

前回トンニャン過去編#43 エレン・ピースこちらから
https://note.com/mizukiasuka/n/n8464c19d66aa

トンニャン過去編#1最初から
https://note.com/mizukiasuka/n/n32aa2f7dc91d

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