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トンニャン過去編#45 エレン・ピース(原題「天使チェリー」最終話)

※この物語は「阿修羅王」編・「アスタロト公爵」編の本編であり、さらに昔1970年代に描いたものを、2006年頃に記録のためにPCに打ち込んでデータ化したものです。話の位置は「ルーシーの巻」の次。「エレンの巻」のような意です。また、特定の宗教とは何の関係もないフィクションです。

「パパ、ママ。ここにいるのがルーシー・エイビスよ」
エレンの母親は顔を覆って泣き崩れた。父親は立ち上がり、ルーシーに近づいてきた。そして、震える手でルーシーの頬にふれた。
ルーシーはもう泣いていた。エレンも涙を浮かべていた。そしてエレンも立ち上がると、母親を立たせてルーシーの元に導いた。ルーシーも立ち上がり、四人が肩を抱き合って泣いた。
 
 *********
 
 
「エレンの両親は、エレンとルーシーが生まれた時貧しかったのよ。だから、とても二人の子を育てる事は出来なかった。
一方エイビス夫妻には子供が出来なくて、子供を欲しがっていたの。それでルーシーは養女としてもらわれていったの。
でも、エレンの両親がスコットランドを出て成功したのと裏腹に、エイビス夫妻は転落の道を歩む事になったのよ。
それでもルーシーが可愛くて、手放したくなくて、死ぬ直前まで本当の事を言えなかったのね」
トンニャンとチェリーは、四人を親子水入らずにして、そっと部屋を出てきた。そして、またバルコニーから夜空を見上げている。
 
「エレンとルーシーは双子だったのね」
「そうよ。二卵性双生児。だから、あまり似てなかったから、二人とも同じ学校にいても、お互い気づかなかったのよ」
「そうね、エレンは母親似、ルーシーは父親似だったわ」
チェリーはそう言ってから、トンニャンに聞きたい事があった事を思い出した。
 
「・・・トンニャン、手紙だけど」
「私、もう行くわ」
「トンニャン、あの、エイビス夫妻からピース夫妻に宛てた手紙、トンニャンが・・・」
チェリーはフッと人の体温が消える感覚を覚えた。
「トンニャン!」
トンニャンは、いつの間にかいなくなってしまった。
 
 
 *****
 
「チェリー」
呼ばれて顔を上げると、翼を持つ者が立っていた。
「クビド。あの・・・私・・・」
クビドが首を振った。
「ミカエル様がお口添え下さったおかげで、ガブリエル様も、今回は不問に伏すと」
「不問?」
クビドがニッコリと笑った。
チェリーもホッと息をついた。
 
夜空はどこまでも広がり、月は地を明るく照らしていた。
そして二人の天使は、天から二人を導く光の道が降りてくるのを見た。
光り輝く翼を持つ天使は、その光の中に消えていった。
 
 
二〇〇七年平成十九年七月二十二日(日)朝三時~朝九時
(原文一九七六年十一月)(原題「天使チェリー」終わり)

トンニャン過去編#45 エレン・ピース(原題「天使チェリー」最終話)

※1966年、この長い長い物語の最初に生まれたキャラクター「天使チェリー」。
当時は子供の描いた漫画で、いわゆるドラえもん物。どこかから不思議な少女が現れ、何かを解決して帰っていくという単純な話。
その2~3年後に「ふしぎなコーラ」で同じような漫画を描きました。
トンニャンと出逢う1972年には、もう漫画は描いてなかったので、レポート用紙になぐり書きでした。
その後、思い出して「ふしぎなコーラ」を書き直しました。
さらにチェリーのことも書こうと思った時、今回の『原題「天使チェリー」』の元の物語が生まれました。
私の三つの物語から生まれた対極、いや、トライアングルに位置する関係の三人は、かつて出逢った友人たちと人間の青春を謳歌します。
さらに2006年頃から、レポート用紙⇒データ化したのが、この物語。この長さで日本でいう高校三年間分、三話あります。
まずは、日本の高校一年生のお話が終わりました。
20年の時を経て、これらの話の続きを書いたのが、別のマガジンの「トンニャンシリーズ」となります。

【「炎の巫女/阿修羅王」全国配本書店名110店舗はこちら
https://note.com/mizukiasuka/n/ne4fee4aa9556 】

※トンニャン過去編 全部読めるマガジンはこちらから
https://note.com/mizukiasuka/m/me347e21d7024

次回トンニャン過去編#46 ビリー・グレープ(原題「フェニックス」)へ続く

前回トンニャン過去編#44 エレン・ピースこちらから
https://note.com/mizukiasuka/n/nfdc5b6a6132b

■トンニャン過去編#1最初から
https://note.com/mizukiasuka/n/n32aa2f7dc91d

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