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トンニャン過去編#43 エレン・ピース(原題「天使チェリー」)

※この物語は「阿修羅王」編・「アスタロト公爵」編の本編であり、さらに昔1970年代に描いたものを、2006年頃に記録のためにPCに打ち込んでデータ化したものです。話の位置は「ルーシーの巻」の次。「エレンの巻」のような意です。また、特定の宗教とは何の関係もないフィクションです。

「チェリー!」
さらに後ろから、ボビー、ビリーのグレープ兄弟、そしてエミリー・パストだ。エミリーとボビーは、あの雪山遭難事件以来急接近し、寄り添うように立っている。
 
「コーラは、来なかったのね?」
横からアリス・ジョージャスも顔を出す。
チェリーは苦笑いをし、トンニャンはすました顔で横を向いた。
 
 *
 
エレンは喧騒の中から離れてバルコニーに出た。春の月はやわらかい。丸みをおびた優しい光を放っている。
ふと見ると、バルコニーの隅に人影が見えた。エレンが目を凝らしてみると、それはルーシーだった。
エレンは小さくつばを飲み込んだ。口の中が乾いてくる。さらに汗が吹き出てくるのを感じる。
 
月を見ていたルーシーが、視線を感じて振り返った。その視線の主、エレンと視線が絡まりあう。二人は、自然と近づいていった。
 
 
*
 
「ルーシーがいない」
チェリーが気づいた時、ルーシーの姿が見えなくなっていた。チェリーは探そうと人を掻き分ける。
「チェリー」
今度はチェリーが腕をつかまれ、引っ張られた。
「トンニャン、何・・・」
トンニャンが大きな窓を指差す。チェリーが目を近づけると、バルコニーが見えた。
 
 *
 
「あの・・・ルーシー・エイビス・・・よね?」
エレンがやっとの思いで声をかける。クラスの違う二人は、お互い顔は知っているものの、話した事はなかった。
「えぇ、エレン・ピース?」
そう言ったきり、二人とも黙ってしまった。何から話してよいのか、わからないのである。
 
「あの・・・。」
二人の声が重なって、同時に声を上げ、同時に黙る。沈黙・・・。
そしてまた・・・。
 
 
*
 
「あのままにしておいて、いいのかしら?」
「そうね、二人ともどうしていいか、わからないみたいね」
横を向いていたトンニャンも、チェリーに言われて覗き込む。
「トンニャン、あの手紙」
「行きましょう、チェリー」
 
チェリーは、またトンニャンに引っぱられて、外のバルコニーに出た。
黙りこくった、ルーシーとエレン。その間に、カツカツと靴音をさせて、トンニャンとチェリーが割って入る。

続く
ありがとうございましたm(__)m

トンニャン過去編#43 エレン・ピース(原題「天使チェリー」)

※トンニャンシリーズ、「魔女裁判長リリス」の次は、
書籍「炎の巫女/阿修羅王」の
「阿修羅王(全6話)」の前編3話「力の神インドラ」「猿神ハヌマーン」「シッタルタ」と続きます。
もしもnoteに掲載すれば、1話が5回、3週分となります。
「リリス」の続きを3週分、空けます。
そしてその間、トンニャン過去編を続けて掲載します。

【「炎の巫女/阿修羅王」全国配本書店名110店舗はこちら
https://note.com/mizukiasuka/n/ne4fee4aa9556 】

※トンニャン過去編 全部読めるマガジンはこちらから
https://note.com/mizukiasuka/m/me347e21d7024

次回トンニャン過去編#44 エレン・ピースへ続く
https://note.com/mizukiasuka/n/nfdc5b6a6132b

前回トンニャン過去編#42 エレン・ピースこちらから
https://note.com/mizukiasuka/n/n10b34ebdaf4c

トンニャン過去編#1最初から
https://note.com/mizukiasuka/n/n32aa2f7dc91d

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