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トンニャン過去編#33 エミリー・パスト(原題「天使チェリー」)

※この物語は「阿修羅王」編・「アスタロト公爵」編の本編であり、さらに昔1970年代に描いたものを、2006年頃に記録のためにPCに打ち込んでデータ化したものです。また、特定の宗教とは何の関係もないフィクションです。

中から出てきたのは、捜索隊員に混じって、ミスター・ディッグ・ガンとミス・ボニー・ザートだ。
 
「トーニとエミリーはまだ戻らないのか?」
ミスター・ガンは、開口一番こう聞いた。
「はい。すみません」
ボビーが頭を垂れる。
「ボビー、自分を責めている時じゃないわ。今私達が何が出来るか考えなければ、他の皆はここに泊まれるの?」
「はい、ミス・ザート。部屋は足りないんですが、ホールを開放してくれるそうで、今夜は暖房も切らないでくれると言うので、毛布でも借りれば、何とかなります」
ボビーの代わりにチェリーが答えた。
 
すぐに捜索隊が編成された。その中にはミスター・ガンもいた。
「ミスター・ガン、俺達も連れて行ってください」
ボビーとビリーが頭を下げると、トムとネッドもそれに続いた。
「いや、お前達は子供だし」
「ミスター・ガン。トーニは幼なじみでずっと一緒に育ってきたんです。ここでただ待ってるなんて出来ません」
「お願いです。俺はトムの親友だし、トーニは、俺の幼なじみのアンの親友です。足手まといとわかったら、すぐ引き返しますから」
ミスター・ガンは渋い顔をしていたが、やがてその渋い顔のままうなずいた。
 
 
「トンニャン、コーラ、お願いがあるの」
ディック達捜索隊が出発すると、チェリーはトンニャンとコーラを人目の付かない場所に呼び出した。
「この吹雪を弱めたいの。今、二人の人間が死ぬかもしれない。私ひとりでは限界があるわ。でも三人なら・・・」
トンニャンがチェリーの言葉をさえぎった。
「チェリー、あなたの言いたい事はわかったわ。でも、賛成は出来ない」
トンニャンはコーラの方に向いた。
「コーラ、あなただってそうでしょ。あなたは魔女よ。悪魔が人間を助けるなんて聞いた事がない。あなたが好きな人が聞いたら、何て言うかしら?」
「私の好きな人?」
トンニャンは、かまわず続ける。
「人間の力を信じなさい。我々がやるべき事は、自然に手を加える事じゃないわ」
トンニャンは言いたい事だけ言うと、さっさと皆も元へ戻って行った。
 
「私の好きな人って・・・。今日、トムに初めて話しただけで誰にも言ってない。それに、トムにだって名前は言ってないのに」
脂汗をかくコーラに、チェリーは、哀しい目をしてうつむいた。
 
 
エミリーとトーニは吹雪の中で身を寄せ合っていた。二人で帰ろうとした時、方向を間違えたのか、滑って低い段差のある場所に落ちてしまったのだ。
「トーニ、しっかりして。きっと助けが来るわ」
エミリーは眠りそうになるトーニに何度も話しかける。
トーニは朦朧とする意識の中、かつて海で溺れそうになった事を思い出していた。あの時はコーラがいて、コーラが助けてくれた。でも、今回はどうなるだろう。眠い・・・眠い・・・。

続く
ありがとうございましたm(__)m

トンニャン過去編#33 エミリー・パスト(原題「天使チェリー」)

※トンニャンシリーズの「〇〇の巻」noteなら、ほぼ五回。
これから時間のある時に、一挙に五話アップします。
たまにしかアップできないので、お時間のある時、ゆっくり一話ずつ読んでくださると嬉しいです。
今回は1970年代に描いた、トンニャン過去編「ボビー・グレープ」の続きです。

【「炎の巫女」全国配本書店名110店舗はこちら
https://note.com/mizukiasuka/n/ne4fee4aa9556 】

※トンニャン過去編 全部読めるマガジンはこちらから
https://note.com/mizukiasuka/m/me347e21d7024

次回トンニャン過去編#34 エミリー・パストへ続く
https://note.com/mizukiasuka/n/n36a4d467e613

前回トンニャン過去編#32 エミリーパストこちらから
https://note.com/mizukiasuka/n/nb558e7f23ca1

トンニャン過去編#1最初から
https://note.com/mizukiasuka/n/n32aa2f7dc91d

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