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トンニャン過去編#32 エミリー・パスト(原題「天使チェリー」)

※この物語は「阿修羅王」編・「アスタロト公爵」編の本編であり、さらに昔1970年代に描いたものを、2006年頃に記録のためにPCに打ち込んでデータ化したものです。また、特定の宗教とは何の関係もないフィクションです。

トムとコーラがロッジに戻ると、すぐに吹雪になった。
「今夜、帰れないかもしれないな。これだけの人数泊まれるかどうか、聞いてくるよ。」
「あ、私もくわ」
ボビーにチェリーが付いてゆく。
それを横目で見ながら、ビリーはふとメンバー全員を見回した。
「エミリーがいない。みんな、他にいない者はいないか?」
皆きょろきょろと周りを見回す。
「トーニがいないわ!」
アンが声を上げた。
「エミリーとトーニが?」
 
 
 
四、五時間前の事。
トーニはひとりで滑っていた。本来ならボーイフレンドのトムと一緒に、楽しいスキーになるはず。でも、ひとりだ。
トーニが少し止まって振り返ると、後ろから一人滑ってくる。あれは・・・五年のエミリー・パストだ。いつもグレープ兄弟と一緒の彼女がどうして?
エミリーはトーニの前まで来ると、止まってゴーグルを上げた。
「トーニも、ひとりだったの?」
「・・・エミリーも?」
二人はどちらからともなく、笑いあった。
 
「あなた、トムと一緒じゃなかったの?」
「トムは、コーラとどこかへ行っちゃった」
「そう。コーラと」
エミリーはちょっと額にしわをよせ、それから空を仰ぐように顎をあげた。
「私もね、あぶれちゃった。ふふ・・・私ね、グレープ兄弟のボビーが好きなの。おかしいでしょ、あんな素敵な人に。私みたいなのが」
「そんな、エミリーは綺麗だわ」
事実エミリーは醜くはない。どちらかというと美人の部類に入る。
「ありがとう。そんな事言ってくれるの、あなたくらいよ」
エミリーは微笑んだ。
 
 
 
「まずいな。この吹雪の中で迷ったとすれば・・・」
ボビーは自分が計画して連れてきた責任を感じていた。
「ボビーのせいじゃないわ。皆それぞれ滑っていたし」
チェリーがボビーに声をかける。
 
「大変な事になったわね、トム」
「コーラ・・・トーニを助けに行ってくれないか?」
「え?」
トムの顔は青ざめ、震えている。
「前にも助けてくれたじゃないか。・・・本当は俺が一緒にトーニと滑るはずだったんだ。なのに、コーラと・・・コーラと話がしたくて」
「トム、自分を責めないで。私も、早く気づけば良かった。トーニに、申し訳ないわ」
 
「ヘリの音だ!」
誰かの声でいっせいに外を見ると、吹雪のスキー場にヘリコプターが降りてきた。

続く
ありがとうございましたm(__)m

トンニャン過去編#32 エミリー・パスト(原題「天使チェリー」)

※トンニャンシリーズの「〇〇の巻」noteなら、ほぼ五回。
これから時間のある時に、一挙に五話アップします。
たまにしかアップできないので、お時間のある時、ゆっくり一話ずつ読んでくださると嬉しいです。
今回は1970年代に描いた、トンニャン過去編「ボビー・グレープ」の続きです。

【「炎の巫女」全国配本書店名110店舗はこちら
https://note.com/mizukiasuka/n/ne4fee4aa9556 】

※トンニャン過去編 全部読めるマガジンはこちらから
https://note.com/mizukiasuka/m/me347e21d7024

次回トンニャン過去編#33 エミリー・パストへ続く
https://note.com/mizukiasuka/n/n79654d64e0a1

前回トンニャン過去編#31 エミリーパストこちらから
https://note.com/mizukiasuka/n/n8ae9d99faaf6

トンニャン過去編#1最初から
https://note.com/mizukiasuka/n/n32aa2f7dc91d

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