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トンニャン#29 夜の女王 ブラックエンジェル

※この物語は、「阿修羅王」編、「アスタロト公爵」編の、本編です。
「ブラックエンジェルの巻」のような意。話の位置は前回の「チェリーの巻」の続きです。
なお、この物語で「現在」「今」という場合は「日本民族が滅びてから約1000年後」のこと。つまり、今から何千年後かの未来です。
また、特定の宗教とは何の関係もないフィクションです。

ブラックエンジェルはリオールに近づくと、子供を扱うように、その顎に手を当てた。
「なんだい、これは?」
それは身体が震えるほどに懐かしい、天使の波動だった。
「何で、リオールが天使の波動を?」
「え・・・いや、それは・・・」
リオールは後ずさりした。ブラックエンジェルはかまわず、今度はリオールの両肩に手を置いた。

「あんた、いったい何をやった?まさか、天使を抱いたんじゃないだろうね?」
リオールはなおも後ずさりながら、答える事ができない。
「ブラックエンジェル、やめて。リオールを離して」
「コーラ、こいつはあんたをルシファーから奪っておきながら、天使と浮気してるんだよ。だから天使の波動が、この身に染み付いているのさ」
「違うの。そうじゃないの。」
「なんだい?こいつは、おまえと会うまで、魔女とも人間とも契ってないんだよ。それを今更、天使なんかと」

「違うのよ。私も承知なの!」
驚いたのはブラックエンジェルだけではない。リオールも目をまるくして、コーラを見ている。
「リオールは今まで、まじめすぎたの。だから、今がちょうどいいのよ。
私は悪魔皇太子妃だもの。それくらい大きな気持ちで、見守っていかないとね。だから、大丈夫なのよ」
ブラックエンジェルは、リオールの肩をつかんだ手を離した。

「そうかい。コーラがそれでいいなら、私はいいさ。
でも、無理してないのかい?嫌になったら、いつでも私の元へおいで」
「大丈夫よ。心配ないわ」
それからコーラはブラックエンジェルに抱きついた。
「おや、どうしたね?」
「夜明け前にブラックエンジェルが自分の家に戻った時に、また、頭や、胸が痛くなったり、身体中に痙攣が起こったりしないように、おまじないよ」
「おまじないか。魔女らしいじゃないか」
「おまじないだから、私が何を言っても気にしないでね」

ブラックエンジェルは頷き、自身もコーラに答えるように、そっとコーラを抱きしめた。
コーラはなにやらぶつぶつ言っていたが、小さく
「おかあさん」
とつぶやいた。ブラックエンジェルには聞こえたかどうか。
その短い言葉は、ただささやきの中に埋もれていった。

ブラックエンジェルはコーラ、リオールと別れてから、やはりあの天使の波動が気になった。
コーラは本当に幸せなんだろうか。
ブラックエンジェルは気配を消し、そっとコーラとリオールをつける事にした。

コーラとリオールは飛ばずに月明かりを歩いている。
「コーラ、さっきの天使の波動なんだけど」
「言った通りよ。本音だから。もう、知らない振りしても仕方ないから言うけど、何もかもわかってるの。でも私は大丈夫」
「コーラ」
リオールは言葉が見つからない。

「チェリーから聞いたわ。あの日のうちにクビドに言っちゃったって。
あの子らしいわ。ほんとにクビドの事、好きなのよね。
あ、私がリオールが好きじゃないって意味じゃないから。
ただ、私はチェリーみたいに最初から同じ人をひとすじってわけじゃないから。リオールもご存知の通りね」

コーラは黙ったままのリオールの暗い横顔に、そっとふれた。
「クビドから聞いてるんでしょ。
あれから何度も会ってるのも知ってるわ」

続く
ありがとうございましたm(__)m

トンニャン#29 夜の女王 ブラックエンジェル

※トンニャンシリーズの「〇〇の巻」noteなら、ほぼ五回。
これから時間のある時に、一挙に五話アップします。
たまにしかアップできないので、お時間のある時、ゆっくり一話ずつ読んでくださると嬉しいです。

トンニャン#30へ続く
https://note.com/mizukiasuka/n/n5e06b79e7fbb

トンニャン#28ブラックエンジェルはこちらから
https://note.com/mizukiasuka/n/n085eb3938705

最初からトンニャン#1は
https://note.com/mizukiasuka/n/n2fc47081fc46

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