見出し画像

トンニャン#30 夜の女王 ブラックエンジェル

※この物語は、「阿修羅王」編、「アスタロト公爵」編の、本編です。
「ブラックエンジェルの巻」のような意。話の位置は前回の「チェリーの巻」の続きです。
なお、この物語で「現在」「今」という場合は「日本民族が滅びてから約1000年後」のこと。つまり、今から何千年後かの未来です。
また、特定の宗教とは何の関係もないフィクションです。

リオールはたまらなくなって、コーラの方を向いた。
「言わなくていい」
コーラはリオールの口に指を当てた。

「クビドって、ルシファー様に似てるわ。思い切りの良さ、割り切れる強さ。不思議ね。
リオールのその罪悪感、悩み、苦しみ、その性格は、ミカエルのものかしら。
ルシファー様が兄で、ミカエルが弟って聞いたけど、リオール達は、リオールの方が弟みたいね。
もう、罪悪感は捨てていいわ。罪悪感なら、私の方が先輩なんだから」
リオールは思わずコーラを抱きしめた。コーラも、素直にリオールに腕を回した。

「もう、私の事、嫌いになっちゃったかと思ったりしたのよ。今日、心配して迎えに来てくれて嬉しかった」
「俺、やっとわかったよ。クビドが俺との事があっても、変わらずチェリーと愛し合える訳が」
コーラは黙ってリオールの腕の中で聞いている。

「俺、やっぱりコーラが好きだ。好きだから、罪悪感でいっぱいだったんだ。だから、あれ以来一度もコーラにふれる事が出来なかった」
「待ってたのよ、私。あなたが私にふれてくれるの、ずっと待ってたのよ」
「好きだよ。この世界の女の中で一番好きだ。これで・・・いいんだよな」
「そうよ、それでいいのよ」

リオールがコーラを抱きしめたまま暗がりに倒れた。
「ちょっとリオール、もう夜が明けるわ。城に戻りましょう。誰かに見られたらどうするの?」
「もう、止まらないよ」

ブラックエンジェルは、木陰に隠れて二人の様子を見ていたが、ゆっくりと身をひるがえし、気配を消したまま、その場を離れた。
心配して損しちゃったよ。なんだい、あのアツアツぶりは。

ブラックエンジェルは湖畔に戻ると、休ませていた大きな鳥にまたがった。
もう夜が明ける。その前にねぐらに帰らないと、動けなくなってしまう。
ブラックエンジェルは、夜しか活動できない。昼間は全く魔力がないのだ。だから、昼間は危険な場所には行かず、ねぐらで、一人で寝ているのだ。

コーラはクビドがどうのとか、ミカエルがどうのとか、言っていた。何の事だろう。
ブラックエンジェルは、鳥にまたがったまま考えた。
だんだん眠くなくなってきて、身体は鳥の背にもたれ、うつらうつらしてきた。

チェリーの事も言ってたな。リオールの相手の天使の話しにしては、話題がずれてるような気がするが・・・。

もう、目を開けていられなくなった。
まぶたを閉じると、鳥の背は気持ちの良い羽根布団のように感じられた。
朝の光が少しずつ射し込んできた。ブラックエンジェルは、ねぐらに戻る前に、夢の中に入ってしまいそうだ。

チェリーか・・・。
ブラックエンジェルは寝言ともつかぬ小さな声でつぶやいた。
「チェリー・・・あの人の妹・・・・」

二〇〇六年平成十八年八月十二日(土)
※ブラックエンジェルは、トンニャン過去編(1970年代の作品)から登場する古いキャラクターです。当時の設定では、魔女の天秤から弾き飛ばされたコーラを拾い、育て一緒に魔界を暴れまわった、という関係です。この2006年から二十年ぶりで続きを書き始めた時、コーラとの本当の関係に、作者の私も驚いたのでした。

トンニャン#30 夜の女王 ブラックエンジェル

トンニャン#31 愛と美の女神 ウェヌスへ続く

トンニャン#29ブラックエンジェルはこちらから
https://note.com/mizukiasuka/n/n59e62d353021

最初からトンニャン#1は
https://note.com/mizukiasuka/n/n2fc47081fc46

もしよろしければ、サポートしていただけると嬉しいです。いつも最後までお読みいただき、ありがとうございますm(__)m(*^_^*)