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DAOとはスマートコントラクトの集合体である

こんにちは。岡瑞起です。すっかり夏も終わりに近づいてきましたね。
今日はDAO(自律分散型組織)について書いてみたいと思います。

DAO(Distributed Autonomous Organization)

「DAO(自律分散型組織)の本質って何なのだろう?」

これまでDAOやWeb3に関するいくつかの書籍を読んだりしてみましたが、私が一番「なるほど、これが本質か!」と納得したのが、ブロックチェーンに特化したリサーチメディアHashHub Researchによる次のサイトに書いてあるDAOとは「スマートコントラクトの集合体」という説明でした。

DAOもまた組織ですから、その延長線上で捉えると同じように「契約の集合体」であると言えます。そして既存の組織との大きな違いはこの「契約」が紙とペンとハンコでなされるものではなく、より簡素化された「スマートコントラクト」を契約方法として採用している点にあります。
ですので、最もピュアなDAOとは「スマートコントラクトの集合体」と言い換えることができます。

「はじめてのDAO【前編】|基本概念とその歴史と現状」より抜粋

DAOとは「スマートコントラクトの集合体」。つまり「スマートコントラクトによって運営される組織」という点が、これまでの組織運営とDAOが決定的に異なる点なのです。

えっ?スマートコントラクトって何?と思った人のために簡単に説明すると、スマートコントラクトはプログラムによって契約を自動的に実行する仕組みのことです。こうさらっと書くと、何がそれほど革新的なの?と思うかもしれませんが、既存の組織で契約が実行される仕組みと比べてみると一目瞭然です。

株式会社のような既存の組織における契約を実行するのは、経営者や会社に所属する社員ですよね。つまり人間が契約を実行します。そして、契約がきちんと実行されると信じるのは、契約相手の人、あるいは組織を信頼(トラスト)しているからです。信頼できない相手とは契約は結びませんよね。

でも、信頼していても裏切られることがありますし、裏切るつもりはなくてもちょっとした解釈の違いなどで契約に書いてある通りには実行されないということは有り得ることです。つまり、既存の組織の場合決めたルールがあっても、本当にその通りに実行されるかどうかは究極的には保証されていないことになります。

スマートコントラクトによるトラストレスな組織運営

ところが、DAOでは契約そのものがプログラムで書かれていて、契約が成立すると自動的に契約が執行されるのです。そこに人間は関与しませんし、そもそもプログラムで契約が記述されているので、解釈の曖昧性もなくなります。

たとえば、株式会社を立ち上げる際に、出資額に応じた株式を出資者に配る場合を考えましょう。そのためには、新しく作った銀行口座に、出資者がお金を振り込む必要があります。

一方、DAOを立ち上げるときは出資者がそれぞれ合意した額を送金するということがプログラム化されます。そのためDAOを立ち上げると決めたら、あとは「実行ボタン」を押すだけで、それぞれの出資者の仮想暗号ウォレットからDAOのウォレットへと自動送金されるのです(もちろん事前にそれぞれが仮想暗号ウォレットを作り、DAOに登録する作業は必要になりますが)。

このように、組織を運営していくときのさまざまなルールがスマートコントラクトによって自律的に実行されるという点が、これまでの組織と大きく違う点になります。スマートコントラクトを使った仕組みは、従来のような信頼を必要としないという意味で「トラストレス」な仕組みと呼ばれています。

社会は自分たちが創るものだと実感するために

組織への信頼を失ったり、何を言ってもこの組織は変わらないのではないか、と絶望感を抱くことがありますよね。特に、古い体質の大きな組織だと、意思決定までに多くのステップがあり、そしてそれが実行されるまでにも多くの人の手が入り、何が実行されて何が実行されなかったのか不明確になるということが起こりがちです。このような組織では、どの意思決定がどのような結果につながったのかというフィードバックを得られることができません。その結果、何が良くて何が悪かったのかが学べず、いつまで経っても変わらない、問題解決のできない組織に陥ってしまいます。

ALIFEのアルゴリズムに例えて考えてみても、もしいろいろな新しい解決策を提案して実行した結果、どうなったのかのフィードバックが得られないとしたら、何の進化も生み出しません。いつまで経っても前に進まないランダムな解決策を提示するだけになってしまいます。

スマートコントラクトによる契約の自動実行は、この問題を解決する可能性を持っているのです。もちろんどのようにスマートコントラクトで記述すれば分からないこともたくさんあるでしょうし、そもそもどこまでスマートコントラクトで記述するべきなのか、という大きな課題はあります。

また契約を自動実行するという人類始まって以来の新しい方法での組織の運営は、間違えることもたくさん出てきそうです。けれども何をどのように実行し、その結果どうなったかという知見をお互いに共有し、改良を重ねていける仕組みがあれば、より良いものを生み出していけるということは、ALIFEの進化アルゴリズムが証明している通りです。

そして何より、自分の意思が組織運営に反映されることを一人ひとりが体感することができれば、それは社会全体をも変える力になるはずです。

先日読んだオードリー・タンさんの著書『まだ誰も見たことのない「未来」の話をしよう』に、台湾の投票率が高いといことが述べられていました。特に20代の投票率は2020年の総統選挙で89.63%だったという分析もあるそうです。投票率が高い要因は、自分たちが投票権を行使し政権を選ぶことで、社会が変わってきたことを実感できているからかもしれない、とタン氏は分析しています。実際、台湾には「ソーシャルイノベーション」「オープンガバメント」「若者の政治参加」のための仕組みやプラットフォームがさまざまに用意され、市民の声を政治に反映させるための試みが多く行われています。こうした例にも、一人ひとりの意思が組織運営に反映されるということを実感できるかどうかの大切さを感じます。

以上、DAOの本質はスマートコントラクトにあり、ということについてでした。私自身、まだ実際にDAOの運営に関わったことはなく、あくまで文献を読んで得た知識での理解ですが、政治も含めた社会の在り方を大きくアップデートする可能性を持った仕組みだなと感じています。今後の動向も注目してみていきたいと思っています。

最後まで読んでくださりありがとうございました。


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