機械的なAIと生命的なAI
とある企画の事前会議で「AIの未来はどうなるか?」ALIFEの観点から語ってくださいというお題が出されました。
AIがこれだけ世の中の関心を集めた背景には「AIによって仕事を奪われてしまうのではないか?」という危機感から、AIが一部の専門家の関心事の枠を超え、自分ごととして捉えられるようになったということがあるかと思います。
AIの未来に不安を感じるとしたら「人間かAIか」という対立構造を思い描き、AIを人間の仕事を自動化する機械として捉えるからかもしれません。
一方、ALIFEは生命的なAIを目指しています。ドラえもんで例えると、ドラえもんが四次元ポケットから取り出す道具が「機械的なAI」だとすると、機械で人間(のび太くん)を助けるのが「生命的なAI」です(機械的なAIと生命的なAIという考え方の元は、2017年に認知科学者の高橋英之さんが主催した「身体性と生命性,そして社会性をつなぐ学際的研究会」の議論から生まれました)。
そんなことを考えながら、台湾のデジタル担当大臣として知られるオードリー・タンさんの『まだ誰も見たことのない「未来」の話をしよう』を読んでいたら同じようなことが書かれており、嬉しい気持ちになったのでこちらでも紹介します。
オープンエンドなアルゴリズムの実現を通じてALIFEが目指しているのも、AGIやAIがたくさんいる世界で人間が一緒に働いている未来です。
そして、AIと人間が協力して互いの発見を活かし合ってイノベーションを起こすという動きはすでに起こり始めています。
たとえば、テキストを入力すると絵を描いてくれるDALL-EやMidjourneyといったAIの登場です。人間がテキストを入力して、AIが作成する絵をみる。その結果に触発されて少し変更したテキストを人間が作り出す。このループを回すことで、人間だけでは作り出せなかった絵が「発見」されているようにみえます。
このような試行錯誤の結果見出された「テキスト」にはある意味すごい価値があります。ALIFE的に言うならば、画像を生み出す「gene(遺伝子)」です。そう思っていたら、早速、画像生成AIに入力するテキストがNFTとして販売できるマーケットプレイスも誕生したようです。
AIの発展によってAIと人間が協力しあい互いの発見を活かし合うオープンエンドが加速度的に起こることが考えら得ます。そして、きっと好むと好まざるとに関わらず、オープンエンドのプロセスに巻き込まれます。
ALIFEの研究は、AIと人間が協力しながらオープンエンドなイノベーションを続けていくためには何が必要か。その要素を見つけ出している分野と言えます。
それは、異なる能力や異なる角度で物事をみることができる多様性や、「これまでに見たことがないもの」を受け入れる姿勢、そして解決方法をシェアしていくことの大切さなどです。こうした要素は、人間同士のオープンイノベーションやソーシャルイノベーションにとっても重要な要素であることがオードリー・タン氏の著書『まだ誰も見たことのない「未来」の話をしよう』にも述べられていますが、AIとの共創においても同じように重要であることをALIFEの研究成果が示しています。
人間を機械のように扱うのではなく、自律的に行動し意思決定できる個人として人間らしく扱うことが、オープンイノベーションによって重要なように、AIを人間の仕事を代替する機械として捉えるのではなく、ドラえもんのような生命的な機械として捉え直すこと、そうしたことが求められている時代に突入しているように感じます。
本記事を読んでALIFEやオープンエンドな世界に興味を持った方は、ぜひ拙著『ALIFE | 人工生命』をお手元に取ってみてください。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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