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マリッジ・ストーリー

マリッジ・ストーリーという映画を今更観た。
ネタバレありだから観てない人は読まないで欲しい。

ストーリーはシンプルで、離婚する夫婦が息子の親権を巡って弁護士まで立てて争うというお話。
あらすじだけ聞くと泥沼で暗くて惨めな映画に思える。
確かにそんな映画なんだけど、不思議と夫婦の愛が感じ取れるシーンがたくさんあった。

夫のチャーリーと妻のニコールは離婚調停中なんだけど、それぞれ息子のヘンリーと会うために普段から顔を合わす生活を送っている。
離婚調停中だから2人を繋ぐのは息子の存在だけのはず。

だけど、息子が疲れて寝ちゃったりして2人きりになる時、そのやり取りにはすごくすごく愛が溢れている。

個人的に好きだったのは、息子が疲れて寝た後に妻が夫のボサボサの髪を切るシーン。
社会的にも表面的にも2人の間に繋がりはないはずなんだけど、恐らくこれまでの日常の繰り返しである髪を切る行為はとても価値がある物に見えた。

物語が後半に差し掛かる頃、親権で揉めた夫婦は泣き叫びながら喧嘩をする。
お互いを酷い罵詈雑言で貶し、およそ会話とは程遠いやり取りをするんだけど、最後は泣き崩れる夫に、泣きながら妻が寄り添うシーン。
2人の関係性が終わる決定的な場面だけれど、それと同時に2人の間にあるのは憎悪だけではないことも感じさせられる。

私は結婚の経験はない。
だから、憎悪の感情までが愛に見える2人の関係は羨ましい。

でも、離婚調停中の2人を羨ましいと思えるのは私が観客という視点でお話を観ているからであって、恐らく当人達は目の前の問題にかかりっきりで感情もぐちゃぐちゃだ。

多分現実でも大概の人は日常に溢れている愛には鈍感で、何か目の前の問題や変化ばかりに目が行くんだろう。
それって気付こうと思って気付けるものでもないし、自覚しようとしても実感できないんだろう。

だから、映画や小説を俯瞰する観客の立場で眺める時くらい、日常とか所作の持つ意味に気付いて泣いてもいいんじゃない、と思う。

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