横浜市の防災計画への提案書が26ページになったので、2ページのサマリー版(Rev1.0)を作ってみた。各提案の詳細は随時載せる予定
1. 「自助・共助」の条例
横浜市は川崎市に比べて防災計画が遥かに劣る一番の原因であるとともに、市役所と区役所が防災に関してリーダーシップを発揮できない根本的原因は、他の都市にはない「横浜市災害時における自助及び共助の推進に関する条例」であると思われる。(実際川崎市に聞いたら、そんな条例はありませんと言っていた)また同条例の第5条にも自助共助促進の施策作成や実施の責任主体が区長であり、そしてその主な具体的計画や実施は主に地域住民となった。その為、川崎市と比較して市長や区長の責任範囲が不明確となり、実質的に避難場所の確保や運営まで地域住民が主体となり行うこととなった。
一方、川崎市の川崎市地震対策条例【危機管理本部】では、防災の責任は市長にあることが明記されている。また、避難所運営マニュアル(地震災害対策編)運営主体は市の職員であることが明記されている。これらの条例の違いにより川崎市はリーダシップを発揮することができる。
2. BCP(事業継続計画)
横浜市のBCPは更新されていないし、発動されていない。川崎は、常にドキュメント類を見直し更新している。実際「令和2年4月17日から5月6日まで、川崎市業務継続計画(BCP)を発動いたします。」と政府のコロナ禍の緊急事態宣言に合わせBCPが発動されていた。その後も発動されていた。また川崎市業務継続計画(新型インフルエンザ等対策編)は、令和2年11月に改訂されたが、横浜市業務継続計画(BCP)「新型インフルエンザ等対策編)は、平成27年4月版のままである。(令和5年7月17日現在)
3. 防災計画書
(1) 横浜市震災対策条例 (制定 平成10年2月25日横浜市条例第1号 改正 平成25年9月30日横浜市条例第56号)の第5条3項で、「区長は、各区の地域性に応じて区別防災計画を作成し、その実施を推進するものとする。」と記されている。しかし、ほとんどの区別防災計画書は、市の防災計画書の多くのページをコピー&ペーストしたものである。本来であれば、区のリスク分できに基づき区長がリーダーシップを発揮して、条例にあるように区別の防災計画書を作成すべきである。
(2) 計画書は基本方針のようであり、この防災計画に基づき単年後(もしくは短い期間の複数年度減災計画がない)の減災計画を立案しKPIを設定し、PDCAサイクルを回して単年度で改善していくべきものである。
(3) 地域防災拠点(避難所)数が十分な区と、圧倒的に足りない区がある。川崎市は地震対策条例第8条に則り、圧倒的に足りない拠点を補うために497箇所の拠点補完施設への避難を準備している。地域防災拠点の定員が1000名(川崎市の担当者によると、廊下にも人が溢れている状態)なようだが、1000名を遥かに超える避難者が避難してくる拠点が多く存在する。
4. 地域防災拠点開設・運営マニュアル
(1) 各区防災計画書と同じように、各拠点の特性、リスク分析に基づき拠点毎にマニュアルを作成する。そのために、横浜市の現在のマニュアルは、ガイドライン(現在のマニュアルをベース)と業務マニュアルに分ける。マニュアルは、各班(庶務班、情報班など)の事務分掌に基づき作成し、各班の担当者、もしくは運営担当ではないが拠点でサポートしてくれる地元の人にも、やることが分かるように作成する。現状77ページある分厚いマニュアルを全ての運営委員が持ち歩いて参照するのは不可能である。
(2) ガイドライン部分には、学校の区割りの仕方(要援護者の部屋を3部屋ではなく、想定数に基づき予め部屋割りを行うなど)、備蓄品(水、食料、トイレシートなど)の配備計画を川崎市のように一人当たりの必要数を計算し、それに基づき各拠点に備蓄する方法に変更する。横浜市の場合は、拠点毎に同じ数量を備蓄している。
(3) セキュリティに関するガイドラインを追加する。紙で管理する避難者の個人情報をどうやって守るのか?など(そもそも57万人の避難者を紙で管理できるのか?
(4)学校に生徒がいない前提でマニュアルが作成されている。実際には600名近い生徒がいる中で、2000名近い避難者が避難してくる。混乱した状況で如何に生徒の安全を確保するのか?など生徒がいる状況で災害が起きた場合、要検討事項が多い。
5. 一般ボランティア
市役所、区役所は、一般ボランティア業務(瓦礫の撤去、炊き出し、備蓄品の荷受けなど)は全て、区災害ボランティアが行うという認識である。一方区災害ボランティアは、瓦礫の撤去のみを行う(実際2022年12月に体験した2023年災ボラが導入予定のボランティア業務サポートアプリは瓦礫の撤去のみである)という両者の認識違いがある。早急にこの認識の違いを解消して、拠点における一般ボランティアに依存する活動に支障が出ないようにする必要がある。
6. 以上の問題点を解決するための市役所防災課のリーダーシップの元以下のプロジェクトを提案します。
(1) 想定被害の更新
(2) 横浜市防災計画書の更新
(3) 各区のリスクに合わせた各区防災計画書の更新
(4) 拠点開設・運営マニュアルのガイドライン化と各班の標準マニュアルの作成
(5) 防災計画から単年度の減災実行プランの作成、実行、評価、再実行のPDCAサイクルを回す
(6) 避難訓練は実際の想定避難状況に合わせて実施する
(7) (5)と(6)の結果を受けた各区の防災計画書を更新して次年度の減災プランの作成し、このプロセスを毎年実行する。