見出し画像

近未来の日本について改めて考えた『北関東「移民」アンダーグラウンド』

表紙はどピンクだし、”ついに北関東ベトナム人アンダーグラウンドのボス、「群馬の兄貴」にたどり着く”なんてな内容情報が書いてあるし、どこか面白おかしい話を期待して興味本位で読み始めた本でした。
移民と犯罪を結びつけたルポ、と思ってしまっても仕方が無いような風体の本には、軽い語り口からは想像がつかない重い話が書いてありました。

日本の戦後復興期、高度成長期のむちゃくちゃな感じを振り返るノンフィクションも最近よく売れています。コンプライアンスってなんですか?という時代の話だからこそ、半分笑って読む事が出来ますが、あの頃の日本人も食うことに必死、だから「なんでもアリ」だったのではないかと思います。

今回、著者が追った外国人たちもまさに「食うためのなんでもあり」をやっているだけではないのか、と。それを強く感じました。
一昔前は中国からの労働力輸入が盛んでした。が、もはやあちらが今や先進国だし、よりSFみたいな未来に近づいた国になり、日本は「働きに行っても儲からない国」になっています。そして労働力の輸入元はもっと貧しい国に、そして、その国の中でも成功者が儲かるようになると、もっと本国では生きていけないようなワケあり人材に…という負のスパイラルが始まっています。

日本に来ても「食うためのなんでもあり」を繰り広げなければならない裏には佐々さんの『ボーダー』で描かれたような移民、難民対策の不備が大きく横たわっているのだとも思います。

貧しい国だったはずの国がどんどん成長していったとき、日本はどうなるのだろう。低賃金で、なんでもありの生活を送る側になるのは、同じ日本人になっているのかもしれません。明るい語り口の中で、ずっしりと重いモノを託されたようなルポでした。

とはいえ、このアンダーグラウンドを追いかけて食い込み、溶け込み、その真実の姿を見せてくれるルポライターがいるってことは幸せな事かもしれません。警察ではそうそう手が出せないネットワークが増えてきているからこそ、メディアの大事な仕事だなあとそんなことも思ったのでした。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?