【映画レビュー】『シェフ 三ツ星フードトラック始めました』:明るくなれる素敵なシーンが満載!
「心がつらいときに観たらいい映画はないでしょうか」とお聞きしたら、ある方がおススメしてくれたのが、この映画でした。おススメして下さった意味がわかりました!
素敵なシーンがたくさんある
主人公はレストランの腕利きシェフ。アイデアも実力もあって、仲間からも信頼されている。ある日、批評家が来店することになり、新作メニューを出そうとするが、保守的なオーナーによって、古いメニューを出すことを強制されてしまう。それによって、批評家にこてんぱにけなされてしまったことから、物語は動き出す。
結局、オーナーと対立して店を追い出される。最後には、批評家と大喧嘩するところをSNSで拡散されて、レストランのシェフとしてはやっていけなくなってしまう。
そうして、主人公は、好きな料理を出してお客に喜んでもらうために屋台を自分でやることになるのだが、この批評家と大喧嘩するシーンが素敵なシーンだった。
というのも、自分は追い出され、オーナーの指示で古いメニューをもう一度出すことになって、批評家に酷評されたにもかかわらず、主人公は、料理のすばらしさを熱弁し、そしてそれを作っている仲間の立場を擁護し、文句だけを言っている批評家をこき下ろすのである。
普通なら、オーナーを憎み、残っている同僚を恨み、自分のせいではないと弁解しアピールしたくなるところだが、彼はそうではなかった。うーん、そうきたかと、しびれてしまった。
店を去ることになり、おそらく恋人関係にあったスカーレット・ヨハンソン演じるソムリエの女性と別れるシーンも素敵だ。そのあとこの女性は一度も出てこない。それもまた切なかったりする。
主人公は息子だといってもよい
もう一つの軸として、離婚した元妻と、元妻と一緒に暮らしている息子との関係がドラマになっている。
息子は父と一緒にいたくて、そしてシェフとしての父親の仕事に関わりたいとずっと思っている。父親は忙しくて、これまでそうした息子の気持ちを汲み取ってやれなかったが、レストランを追い出されたことが幸いして、息子と一緒に屋台をやりながら、全米を旅することになる。
この息子が本当にかわいいのだ。父と一緒に過ごしたいと口には出すが、なかなか実現できなくて、あきらめたような寂しい表情を見せるのがなんともいじらしい。そして、父に料理を教えてもらい必死にくらいついて頑張ろうとしている姿も、もういじらしくてたまらない。この映画の本当の主役は、この息子だといってもいいくらいだ。
また、屋台をすることになった主人公のところに、レストランで助手をしていた男が店をやめて駆けつけてくるシーンもすごく素敵だった。なんて情に厚い、いいヤツなんだと思った。
元妻も、別れた夫のことを常に気にかけていて、力になろうとしている。この夫婦はこんなに仲がいいのにどうして別れてしまったんだろうと思ってしまう。でも、元妻は自分の仕事が優先であり、そこを譲るつもりはなさそうなことは垣間見せる。
最後の方では、元妻が屋台を手伝ったりするなど、なんとなく夫婦が再び復縁するのかもという気配も感じさせる。しかし、おそらくそれはないだろう。それも含めて、なんだかいい関係だなと思った。
悩みをひととき忘れさせてくれた
というようにストーリー自体は特にドラマチックなものではないのだが、出てくる人たちと、その人たちの関係が素敵で、粋でカッコいいのだ。なんとなく明るくなって、元気になれる映画だ。
いろんなことをクヨクヨ考えてしまっていた自分にとって、悩んでいることを忘れて、ひと時の楽しい時間をもらうことができた作品である。こういう映画の見方もあるのだな。
ふだん自分が観ているタイプの映画ではないので、たぶん、おススメされなかったら、一生この作品を見ることはなかったと思います。人から勧められてもなかなか観ることができないものですが、これは観てよかったと思いました。落ち込んでいた心が少し明るくなった気がします。
そういう作品との出会い方もあるのですよね。心に効く映画をシーン別に集めてみたいなとも思いました。
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