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読感 part1:白い人(遠藤周作)

漫画の、ジョジョの奇妙な冒険が好きです。

もう第8部まで出ている人気作ですが、
シリーズを通して主人公は、
ジョースター家という家系の人間です。

どの主人公も正義感に溢れていて、
その生き様に惹かれます。

一方で、ジョジョの良さには、
悪役の良さもあります。

悪には悪の信条があり、
どのラスボスにも魅力があります。

それでも、少年漫画なので、
最後は正義が勝つし、
それが私が期待する展開でもあります。

さて、正義とは何でしょうか。

何を正義だと思い、
何を悪だと思うか、
という指標を
正義悪ベクトル
と名付けましょう。

正義←←←←←←悪

このベクトルの方向と大きさは、
十人十色、百人百様、千差万別です。

しばらく生きていて気づいたのですが、
仲良くなったり、
距離を置いたりと、
人とうまく付き合っていくには、
その人の正義悪ベクトルの
向きと大きさを知ることが大事です。

正義感という言葉でイメージするような
正義悪の話というよりは、その人が、
何を快く思い、
何に腹を立てるか、
という話です。

これが分かれば、
その人とどう接すれば良いかが、
とても分かりやすくなるのだと思います。

さらに、その人の正義悪ベクトルが
どのように作られたものなのか、
まで共有できれば、
よりその人との付き合い方について、
適当な判断ができるようになるでしょう。

でもこれは容易ではありません。

正義悪ベクトルを構成する
パラメータはその人の人生全てであり、
相当高次のベクトルだからです。

自分の正義悪ベクトルを
解析することすら難しいでしょう。

遠藤周作の「白い人」は、
或る人間のこの正義悪ベクトルが、
どのように形作られたかの実例を、
生々しく見せてくれます。

自身の容姿、
親からの教え、
宗教、
たまたま見かけた扇情的な光景、
反りの合わない同門、
仕事、
奇妙な偶然。

さまざまな要因が、
さまざまなレベルで
主人公に作用することで、
その性格ベクトルが、
異常な形に作り上げられていきます。

異常と言いましたが、
それは出来上がった形だけを私が見ると
異常に見えるということで、
この本を読んでいる間は
感情移入ができるのです。

それは、遠藤周作の、
感情、情景描写の技巧によるものだと思います。

精緻な表現と、
曖昧な表現を折り混ぜ、
主人公の視点をリアリティを持って
体感させてくれます。

主人公の異常性に没入した読後に残ったのは、
それでも、
人がどんな正義感を持っているのか、
何が正義感を作っているのか、
なんてことは、
正確には解りっこないってことです。


だからこそ、私たちは覚悟を持って、
積極的に正義感について
語らなければならないのだと、
思わせてくれる作品でした。

でも、友人と正義感について語ると
ケンカになることも多そうなので、
お酒の場などではお気をつけて。

最後までお付き合い
ありがとうございました。

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