あなたにとっての「後追い」で組織は強くなる

新年度に入りましたが、まもなく"平成"が終わり、新しく"令和"の時代を迎えようとしています。
お客様との契約や提案書には和暦ではなく、西暦を使用することが全社的なルールになっています。
そのため、「令和元年〜」という記載は個人的にあまり見かけませんが、先日、とある施設で記録の書き方研修を行った際、ケアプランの見直し時期が「〜R2年○月○日」という記載をみて、「"R"eiwa(令和)が来る」と改めて感じました。


Blog(Macで)を書いていても、"れいわ"の変換はまだ一発では出てこないですが、万葉集の巻五、梅花の歌三十二首、序文の「初春の令月にして、気淑(よ)く風和らぎ、梅は鏡前の粉を披(ひら)き、蘭は珮後(はいご)の香を薫らす」のごとく、社会が温かい雰囲気に包まれ、木々が芽吹くよう活気溢れる時代を迎えられるよう、私自身、微力ながら福祉業界に貢献出来るように頑張りたい所存です。

平成最後(?)の投稿になるかもしれませんが、今日は理念研修をさせていただいているある法人様のお話です。
このBlogでもお馴染みの"コア・マネジメント"の概念に沿って、「経営理念」「事業計画書」「人事諸制度」に関する話を体系的にしてきた法人様があります。

理念研修のテーマが一巡したことを機に、法人主体でこの数年間の研修について職員アンケートを行いました。
法人全体と拠点ごとでの集計がされていました。
法人全体の結果はというと、「大変よく理解できた」「理解できた」で約6割という成果です。

正直言って、これまで「経営理念」の「り」の字も意識してこなかった法人様だったので、約6割が肯定的に評価されたこと自体驚きでした。
職層(等級)ごとでの集計がなされていなかったので、どの層に浸透が不十分かは分かりませんが、おそらく、1等級や2等級の若手職層の理解・浸透が課題になっているのではないかと察します。

自由記述欄にも肯定的な意見を多数いただきましたが、

「現場業務で活用できる場が思い浮かばない」

「研修の目的や目標が分からない」

「事業や経営のことばかりなので難しい」

と言った声が寄せられていました。
現場業務(現場職員)だからこそ、理念に沿ったケアや支援が必要だと思うのですが、現場職員=ケアや支援、経営層=経営理念といった誤った認識がされているのでしょうか。

と、とある法人様の理念研修の振り返りをみてきたわけですが、正直いって、年に1回、私の講義とグループワークを3時間足らず受けたところで、何かが激変するわけがありません。
大事なのは、組織や拠点ごとに学んだことをいかに意識して実践できるか、継続できるかが何よりも大事です。

もう少し踏み込んで結果を分析してみると、法人全体でいずれか「理解できた」と回答したのは全体の約6割でした。
しかし、事業所や施設の規模にもよりますが、かなり拠点ごとに理解度のばらつきがあったのです。
何が違うかというと、経営層が理念研修を受講する職員をどのように送り出している(いた)か、に違いがあったのです。

ある施設長は「法人理念の○○というテーマで研修があるから、施設でも実践できるようしっかり聞いてくるように。」と声をかけられて送り出された職員がいました。
一方、「法人必修の理念研修があるから、勤務を調整して必ず受講してきてください。」と送り出したある施設長とでは、受講する職員の研修に対するモチベーションは雲泥の差でしょう。

また、前者の施設長は会議や内部研修の際など、事あるごとに法人理念を取り上げ、私の研修で「こういっていたのを覚えていますか?」と投げかけたり、「あなたはグループワークの際にどう考えましたか?」と研修を良い形で現場で展開し、後追いをきちんとしてくれていたのです。
そうすると、たかだか3時間ばかりの研修が、何倍も効果的な"教材"となります。
それは外部研修を受けた職員が、会議の際に報告、共有し、一人の学びを組織の学びに昇華するプロセスに似ています。
全職員に同じ内容で研修を受講してもらう目的は、職員間で共通言語化することで直ちに現場に落とし込み、理解・浸透を促進させ、成果(結果)につなげることです。

残念ながら、この法人様では経営層による理念研修の後追いの差が、結果的に法人理念の理解・浸透と理念研修に対する酷評につながってしまった、といえます。
このような状況を生む原因として、合意形成(コンセンサス)が十分ではなかったり、当事者意識が欠落しているなど理由はありますが、一人ひとりがその必要性を認識することです。

自由記述欄の肯定的な意見には、

「難しい内容でしたが、私なりに少しずつ理解できたと思います」

「利用者のために出来ることをやっていきたい」

「理念に対して、自分の仕事をどう生かしていけば良いか分かった」

と言った声が寄せられています。
お分かりの通り、肯定的な意見は自分事として捉えられている意見です(否定的な意見は依存的で、他者批判なのです)。

今回のタイトルに「後追い」という言葉を入れていますが、意味は「ハイハイやつかまり立ちができるようになり行動範囲の広がった赤ちゃんが、保護者のかたが視界から消えたとき、後を追いかける行動」を指します。
ハイハイからいきなりシャキシャキ歩きはじめたらビックリするように、「後追い」は乳児から幼児、青年になるための必要な成長過程なのです。
「法人がやっている理念研修なんて大きなお世話」ではなく、「理念研修のきっかけをどう生かしていこうか(まずは真似てみるか)」という姿勢が大事なのです。

今日は理念研修を継続してきた法人様の事例をご紹介しました。
現場に法人理念を理解・浸透させることは、一夜にして成し遂げられることではありません。
だからこそ受講した研修やいいなと思った書籍・映像などをあなたなりに繰り返し繰り返し「後追い」してみください。
それが組織力を高めるために必要なあなたにとっての成長過程です。

管理人

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?