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PDCAの「Check」「Action」を機能させる3+1のポイント

令和6年度介護報酬改定のQ&Aや詳細な通知が発出され、慌ただしく対応に追われている状況かと思います。
そんなか、前回の記事でも「オープンワールド」を自由に冒険するように、法人・施設、事業所の裁量に任される内容が大幅に増え、攻略本のない冒険に挑戦するような状況と書かせていただきました。

また取り組みの多くは、PDCAサイクルを機能させ、アウトプットではなく、アウトカムの取り組みが求められると書かせていただきました。

以前の記事でもPDCAサイクルを機能させるためには、

「Check(評価)」「Action(改善)」を機能させるためには、
①実行する人と評価する人を分ける
②実行するコアメンバーを巻き込む
③取り組み内容を具体的に言語化・数値化する

が必要です。

「2023年の活動報告と2024年への抱負」より

と書かせていただきました。
今回は私のお客様で実践した事例を交え、さらに内容に踏み込んで具体的にPDCAサイクルをうまく機能させる"3つのポイント"をご紹介したいと思います。


①実行する人(Do)と評価する人(Check)を分ける

以前の記事同様、『①実行する人(Do)と評価する人(Check)を分ける』ということが1つ目のポイントです。
「実行する人(Do)=評価する人(Check)」になってしまった場合、目標達成が出来ていればよいですが、「人員不足で現場が大変だったよね(未達でもしょうがない)」「目標値が高すぎたよね(未達でも現状で満足)」といった情が入った評価になってしまうと、施設・事業所が目指しているありたい姿や目標値の達成があやしくなってしまいます。
アウトプットではなく、"アウトカム(取り組み成果・変化)"を追求するためには、実行する人(Do)と評価する人(Check)を分け、客観的なCheck(評価)を機能させることが重要です。

例えば、フロア・ユニット目標であれば、フロア・ユニット職員が実行する人(Do)、フロアリーダー・ユニットリーダーが評価する人(Check)に分けて運用したり、2階の目標を3階の職員が評価、3階の目標を2階の職員が評価といった運用も効果的でしょう。
また、介護職ではなく相談員やケアマネジャーといった専門職が評価する人(Check)になれば、専門的な視点でのフィードバックが期待できます。

また虐待防止委員会や感染症委員会などの各委員会では、構成メンバーに専門職が参加しているため、経営層にあえて評価する人(Check)になってもら、組織的な取り組みを把握してもらうことも効果的です。
各委員会の構成メンバーはリーダー層ばかりではなく、専門性を高めたい一般職層・中堅層も構成メンバーになり得ますので、フロア・ユニットに議題内容を持ち返り、きちんと実行させ(次項参照)、評価するとなると達成状況や評価の視点のバラツキも想定されます。
フロアリーダーやユニットリーダーの協力を仰ぎながら、実行する人(Do)と評価する人(Check)を事業計画書や委員会一覧などの紙面上で明確に分けて運用できるようにしましょう。

②評価(Check)に向けて実行(Do)を継続させるためにコアメンバーを巻き込む

2つ目は、『②実行するコアメンバーを巻き込む』ですが、より正しく書くと『②評価(Check)に向けて実行(Do)を継続させるためにコアメンバーを巻き込む』ということです。

PDCAサイクルを実行しているとよく聞きますが、「Check(評価)」「Action(改善)」が弱く、取り組みが継続されなかったり、期待した成果を出せないといった施設・事業所が少なくありません。

「2023年の活動報告と2024年への抱負」より

以前の記事でも記載したように、「取り組みが継続されなかったり、期待した成果を出せない」という状況に陥らないよう、実行(Do)を継続させるためにお尻を叩く役割としてより多くのメンバーを巻き込むということです。

前項の委員会の例で取り上げたように、一般職層・中堅層も委員会の構成メンバーになるため、委員会での決定事項をフロアやユニットに持ち帰って、実行させる中心になるのも一般職層・中堅層となるわけです。
年齢や経験年数の長い職員相手に、「委員会で決まったから~を取り組んでください」といってすんなり実行されればいいのですが、そんな簡単に進まない印象があります。
そのため、委員会とは別の機会に各委員会の決定事項を改めて共有し、フロア会議やユニット会議でフロアやユニット全体へ周知させたり、リーダー会議でリーダー層に実行(Do)を継続させるためにお尻を叩く役割となってもらよう依頼するなど、実行する人(Do)のバックアップメンバーになってもらえるようにしてください。

そうすることで、おのずと『①実行する人(Do)と評価する人(Check)を分ける』ことになりますし、特定のメンバーが実行する人(Do)、評価する人(Check)になるのではなく、リーダー層と中堅層、一般職層という組織全体で取り組むメンバーを生み出し、強い推進力を生む状況となります。
だいたいの場合、推進していくコアメンバーは経営層やリーダー層となりますが、実行する人は中堅層や一般職層ですから、せめて中堅層とは一体的に取り組める状況を作りましょう。

そのためにも、『①実行する人(Do)と評価する人(Check)を分ける』ことで関わる人数を増やす、各委員会の議題をフロア・ユニット会議やリーダー会議などにも盛り込み、全体の周知や検討事項として取り扱うようにしましょう。
会議や委員会ごとに議題を単体で取り扱うのではなく、知っている人を増やすことで「そういえばどうなった?」という声かけを増やしていければ、『②評価(Check)に向けて実行(Do)を継続させるためにコアメンバーを巻き込む』が実践されている証といえます。

③評価(Check)⇒見直し(Action)⇒実行(Do)の見直しサイクルを機能させる

PDCAは「計画(Plan)→実行(Do)→評価(Check)→見直し(Action)」ですが、一通り流れておしまいになるわけではありません。
"サイクル(循環)"がついていますから、「見直し①(Action)→計画②(Plan)→実行②(Do)→評価②(Check)→見直し②(Action)→計画③(Plan)…」のようにPDCAが途切れなく続いていくイメージで、ありたい姿や目標達成に至って、初めて終了するといった感じです。

中には、「評価(Check)→見直し(Action)」をして、見直し(Action)を反映した実行(Do)の見直しをしない施設・事業所もあるようです。
上手くいっていないことを継続しても、期待する成果は出ません(誤った勉強の仕方をしても一向にテストの点数が上がらなかったり、理解度が深まらないのと同じです)。
PDCAは取り組みの検証プロセスですので、「評価(Check)→見直し(Action)→実行(Do)」に反映させなければ意味がありませんので、その都度、実行(Do)の内容はアップデートしていきましょう。

また、1項目の『①実行する人(Do)と評価する人(Check)を分ける』ことをしないと、ありたい姿や目標値に対する評価(Check)の精度が低くなり、見直し(Action)の方向性がずれたり、誤った判断になりかねません。
となると、計画(Plan)に内容が適切か、実行(Do)がありたい姿や目標達成に向けて妥当な内容だったのかと計画(Plan)や実行(Do)に立ち返って検討する必要が出てきます。
とどのつまりは、計画(Plan)を立案する際の現状分析(Survey)がきちんとできていたかに関わってくるのです。

個人的には、「評価(Check)→見直し(Action)→実行(Do)」に反映させるタイミングで、達成・未達成の現状分析(Survey)がきちんと行われているかどうかが重要と思っています。
「ロジックツリー」や「なぜなぜ分析」などのフレームワークを用いて、達成・未達成の原因の本質まで掘り下げられていればいいのですが、「人手不足」「感染症蔓延」などの理由では次の一手を見つけられません。
②評価(Check)に向けて実行(Do)を継続させるためにコアメンバーを巻き込む』ことで、「評価(Check)→見直し(Action)」の精度を高め、現状分析(Survey)した結果を実行(Do)に落とし込みましょう。

④+1のポイント

PDCAサイクルを機能させるための3つのポイントを紹介してきました。

①実行する人(Do)と評価する人(Check)を分ける
②評価(Check)に向けて実行(Do)を継続させるためにコアメンバーを巻き込む
③評価(Check)⇒見直し(Action)⇒実行(Do)の見直しサイクルを機能させる

当たり前のようなことばかり連ねていますが、現場にいるとなかなか機能させるのが難しいのが実態ではないでしょうか。

上記3つのポイントを機能させるための+1のポイントが『④プロジェクトマネジャーが計画やプロジェクト全体を管理する』ことです。

『①実行する人(Do)と評価する人(Check)を分ける』とは違い、PDCAサイクルを用いて管理する計画やプロジェクト全体(生産性向上推進体制加算に沿った業務の効率化プロジェクト、中長期計画策定プロジェクト、人事考課制度の構築・見直しプロジェクト、広報・ブランディングプロジェクトなど)の進捗状況や達成状況を管理する(マネジメントする)人材が必要となります。
『①実行する人(Do)と評価する人(Check)を分ける』だけでは、実行する人(Do)が計画に沿って取り組み、評価する人(Check)がありたい姿や目標値に対して達成・未達成を評価するという役割を全うすればよいとなりがちで、計画やプロジェクト全体の管理がおざなりになってしまいます(それぞれの担当者がアウトプット的な立ち居振る舞いになってしまう)。

そうならないよう、計画やプロジェクト全体のスケジュールに沿って予定通り進んでいるか(ガントチャートで管理できる)、どう取り組めばよいか手立ての部分でつまずいていないか(How toについて助言できる)、未達成の場合、現状分析(Survey)を踏まえた「評価(Check)⇒見直し(Action)」が出来ているか(フレームワークなどで客観的な視点を持てているか)など、計画やプロジェクトを管理し(マネジメントし)、意図した成果や変化を得られるようPDCAサイクルを管理し、かじ取りが出来る人材が必要となります。

現場全体を俯瞰して管理できるような事務長や課長・係長級といった管理職やフロア・ユニットリーダーなど、現場全体を俯瞰して管理できるような人材が適材といえますが、本来業務とは別にそれぞれのプロジェクトの管理能力(マネジメントスキル)が必要になります。
必要に応じて計画やプロジェクトを管理するための研修を設け、PDCAサイクルを管理できる人材を組織の中から輩出できるような取り組みを行い、PDCAの「Check」「Action」を機能させ自走できる組織を作りましょう。

管理人

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