ため息俳句 あめんぼう
仕事から撤退して良かったことの一つに、肩凝りから解放されたということがある。サラリーマンの頃は肩凝りがひどかった。
どこそこの治療院が良いと評判を聞くと、この面倒くさがりの自分が、ちょこちょこと出かけた。そうしている中で、当時六〇歳を越えていたろう全盲の女性のマッサージ師さんに巡り会った。
何度か通って、気心も多少は通じたあった頃からだったろうか、彼女は時折身の上をそれとなく語ることがあった。盲人の女性たちの置かれた苛酷さを知らされたが、明るく笑う声は透明であった。
あるとき、その彼女が、ふと漏らすようにして云われた。
「生きていくということは、たいへんですねよえ」
自分をいたわる言葉である。
彼女の指とたなごころのあたたかさ。
指先がさぐりあて、もみほぐしてくれる憂き世のしがらみの凝り。
雨となる曇りの水面水馬