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ため息俳句44  花粉症の恋

 この年になるまで、花粉症とは縁がなかった。
 ところが、この春は鼻水とくしゃみの症状があらわれている。まだ、軽度のようであるが、経過が気になる。
 
 以前、花粉症を患う若い女性で、まなざしが憂いを含んでいるようで、目元がまことに色っぽいという人がいた。今は、誰もがマスクをしていて飽き飽きしているが、花粉症がまだそれほど一般的でなかった頃、春先になると必ずマスクで一日を過ごしている。
 その人に若い同僚の青年が恋したのだ。マスク姿がたまらないのだと、酒場で告白した。自分らおじさんどもは、大笑いしたが、本人は真剣であった。そのややフェテッシュ気味の想いであるから、自分たちは楽しく彼の恋の行く末を見守ったのだが、肝心の女性はほどなく他のどなたかと結婚して退職してしまった。
 あの男、今ごろはよい年のはずだが、このマスクの時代に無事生き延びているだろうか。

水仙を揺らさんほどのくしゃみかな 空茶

 
 こんな自分のバカな句はさておき、虚子のこの句は意味深だ。。

マスクして我と汝でありしかな  高浜虚子