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ため息俳句 しだれ桜と狼


 昨日一日休養して、旅の疲れは大分癒えたようだ。

 そうして、今日は秩父の青雲寺(所在地:秩父市荒川上田野690番地)へしだれ桜を見に出かけた。しだれの桜の名所としてこの周辺では広く知られている。


肩に触れしだなびくか桜花  空茶


酔ふてをる人一人無き花見なり


 今日も初夏のような陽気となって、見物に訪れていた多くの人々が軽装になっていた。
 始めて訪れた人は例外なく境内にふわりと立ち上がる幾本もの垂れ桜に魅惑され、見事さを口にするものだ。
 今日も、頃合いあの咲きっぷりで、一時憂き世を忘れさせてくれた。
 この境内のしだれ桜は、エドヒガンサクラであるが、古いものは樹齢600年と云われている。

秩父路にかすむ桜や都めく


 埼玉県の天然記念物に指定されているこのしだれ桜は、文安3年(1446年)清雲寺開山、煤峯香禅師がお手植えしたと言い伝えられているそうだ。 まあ正確なところはさておき、それほどの樹齢であれば、今にしては絶滅したとするニホンオオカミが、ここの秩父地方では山中を跋扈していたであろう。 青雲寺の門前近くから階段を上ると若御子神社が鎮座する。この神社の狛犬は、耳が長く、見るからにオオカミである。 あの三峯神社の神の使いは狼であるということも広く知られている。いわゆる御眷属がオオカミで、一般にはオイヌサマと称され、山里では猪鹿よけ、町や村では火防・盗賊よけの霊験が語られ、信州・甲州、また関東の村や町でお犬様として信仰されてきた。 秩父はそういうと土地柄である。  それにしても、ここのしだれ桜は、ものすごい。 そのオオカミとて、この桜の境内では心が和んだのではなかろうか。

 さて、狼の古名は「真神」といったのだそうだ。

真神まかみとて淋し夜はあれ枝垂れかな





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