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-映画紹介-『ナイアド その決意は海を超える』 人生の目的はゴールではなくその道程なの!

《乱れ撃ちシネnote vol.182》

『ナイアド その決意は海を超える』 エリザベス・チャイ・ヴァサルヘリイ、ジミー・チン監督 2023年 アメリカ

鑑賞日:2024年3月6日 Netflix

【Introduction】
このところ毎朝バスタブに浸りながらNHK朝ドラ「虎と翼」を観ている。

主人公を演じる伊藤沙莉のことはほとんど知らなかったけれど忘備録を検索したら『ちょっと思い出しただけ』に主演した女優さんだった。

『ちょっと思い出しただけ』は時系列と構成が分かりにくくそれなりに面白い作品だったけれど伊藤沙莉のことはほとんど記憶に残っていない。

「虎と翼」の伊藤沙莉はとても上手いので彼女の表情に見入ってしまう。

昭和6年。女学校に通う猪爪寅子(伊藤沙莉)は、父・直言(岡部たかし)と母・はる(石田ゆり子)に次々とお見合いをさせられる。
女学校を出たら結婚し、子を産み、家庭を守るべし。そんな考えに納得できない寅子は、猪爪家の下宿人・優三(仲野太賀)が通う大学で、法律に出会う。
明律大学女子部法科。教授・穂高(小林薫)の言葉から、女性が法律を学ぶ場所があると知った寅子は、母の反対をよそに、弁護士への道を歩み始める。
女性初の弁護士、のちに裁判官となった女性とその仲間たちの物語がいよいよ始まります!
~NHK特別サイトより~

毎朝が楽しみだ。
男尊女卑真っ只中の世の中で女性弁護士を目指す若い女性たちがどれだけ世の中から奇異の目で見られ、頭の古い周囲の男たちからからかわれていたか。
なにしろ昭和6年=1931年だからな~。

今回選んだ『ナイアド その決意は海を超える』の主人公は自らをレズビアンだとカミングアウトしている。
1970年代、彼女もまたどれだけ奇異な目で見られていただろうか。
この作品は64歳でキューバからフロリダまで180キロに及ぶ危険な外洋を53時間かけて泳いで渡るという偉業をなしとげたダイアナ・ナイアドの実話をドキュメンタリー・タッチで描いた作品だ。
感動的な物語だけれどナイアドの性格が悪すぎる、というか個性的すぎるので初めは抵抗を感じながら見ていた。モハメッド・アリの女性版か!

幼少時に性的暴力を受けたこともレズビアンであることもカミングアウトしているダイアナは「ワタシは他の人とは違うの」「絶対に成功するに決まっているわ」「ワタシはナンバー1なの!」など常に豪語する。
マイノリティであることの負い目も全く感じさせずプライドも高く人に嫌われるタイプの嫌味な女性なことは事実だ。
この大冒険のスポンサーを探すために数々のマスコミに登場して呼びかけたが彼女が話題になればなるほど人々は彼女を嫌うようになり水泳業界からも叩かれた伝説の人物である。
本作品はドキュメンタリー映像も挿入し、決してあきらめてはいけない、夢を追いかけるのに年齢は関係ないと自分に言い聞かせて人生を送り続けたダイアナの不屈の精神とエネルギーが画面からほとばしり出る作品だった。

【物語の概要】
マラソン・スイマーを引退してスポーツ・キャスターをしていた60歳のダイアナ・ナイアド(アネット・ベニング)は刺激のない生活に飽き飽きしていた。
ダイアナは30年前にキューバからフロリダまで110マイルの距離をノンストップで泳ぐという前人未踏の記録に挑んだが惜しくも最後まで泳ぎ切ることはできなかった。
ダイアナはもう一回挑戦したいと親友でかつてのパートナーのボニー・ストール(ジュディ・フォスター)に相談し、ボニーは危険すぎると忠告したがダイアナは人の忠告を聞くようなタイプではなかった。

激しい海流とサメや毒クラゲが生息する“水泳界のエベレスト”と呼ばれているキューバからフロリダまでの約180キロにおよぶ危険な海峡をサメ除けのケージを使わずに泳ぎきる史上初の快挙に向けてダイアナはボニーと共に4年にわたる波乱に満ちた挑戦に挑んだ。
二人は優秀な航法士を迎え、スポンサーを募りキューバからフロリダを泳いで横断するチームを結成した。
2011年8月、ダイアナは1978年以来の偉業に挑戦することになった。

【Trivia & Topics】
✥2013年8月21日、5度目にしてダイアナは偉業を達成した。
彼女のキューバからフロリダへの横断は、組織されたスポーツ協会の監督の下で行われたものではなく、後に世界オープンウォーター水泳協会(WOWSA)によってその達成の承認が拒否された。
9時間に及ぶ文書化されていない観測の空白、矛盾する乗組員の報告書、正式な批准を求めるための文書提出の10年近くの遅れ、水泳で従った規則に関する疑わしい主張、そして「日付が遡って改ざんされた文書」。
ギネス世界記録は当初ダイアナの功績を認定したが、WOWSA の調査結果を考慮した後、認定を取り消した。

✥サポート・メンバー。
映画ではサポート船一艇に乗船した数人のサポートメンバーで描かれていますが実際には5艇のサポート船、クラゲ専門の医師、サメを追い払うチームなど40人に及ぶスタッフが全員無償、ボランティアで参加しました。

✥1000回歌った「イマジン」
ダイアナは水泳中にテンポをとるために歌を歌っていました。頭の中には80曲以上のプレイリストがあったそうです。
深夜、真っ暗闇の海中でジョン・レノンの「イマジン」を1000回続けて歌い終わったとき9時間45分が過ぎ去っていました。

✥ナイアドという名前。
父親に命名されたナイアドとはギリシャ語で水の神の精霊という意味。
ナイアドは子供の頃から父親からお前は偉業を達成することのできる子だと言われていました。

✥ボニー・ストール。
ナイアドの過去のパートナーでトレーナーとして最後まで彼女をサポートしたボニー・ストール。演じたのはジョディ・フォスター
撮影当時アネット・ベニングは65歳、ジョディー・フォスター60歳。

13歳の時にマーチン・スコセッシ監督の『タクシードライバー』で12歳の娼婦の役を演じたジョディーは全米映画批評家協会賞助演女優賞や英国アカデミー賞 助演女優賞などを受賞。
アカデミー助演女優賞にノミネートされて高い評価を得た子役だ。https://filmarks.com/movies/33172

『タクシードライバー』のジョディ・フォスター

その後も『告発の行方』(1988)でアカデミー主演女優賞受賞、ゴールデングローブ主演女優賞(ドラマ部門)受賞、英国アカデミー賞主演女優賞ノミネート、『羊たちの沈黙』でアカデミー主演女優賞受賞、ゴールデングローブ主演女優賞(ドラマ部門)受賞、英国アカデミー賞主演女優賞受賞という大女優に成長している。

子役が大人になっても大活躍している数少ない俳優だ。
この作品でジョディーの盛り上がってガッチリした腕の筋肉を目にしてビックリした。どれだけトレーニングを続けたのだろう・・・。

【5 star rating】
☆☆☆

(☆印の意味)
☆☆☆☆☆:超お勧めです。
☆☆☆☆:お勧めです。
☆☆☆:楽しめます。
☆☆:駄目でした。
☆:途中下車しました。

【reputation】
Filmarks:☆☆☆☆(3.9)

Netflix




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