産業保健師の学習ふりかえり ~前編:会社員時代~
1.産業保健師になるために【2005年】
①産業カウンセラー講座
就職のために受講しました。
当時、経験のない看護師から産業保健師への転職の間口は狭かったです。
(まだ特定保健指導もありませんでした)
ただ、産業カウンセラーをもっていれば未経験でも可能という企業があったので受講することにしました。
(結局は資格取得前に労働衛生機関に就職できてしまったのですが)
【よかったこと】
・カウンセリングの初歩(の初歩)を知れた
・沢山のロールプレイができた
・世の中いろいろな人がいると知った(参加者も講師も)
・自分と向き合う必要性を知った(辛かったけど)
・この研修だけではカウンセリングは到底できないと悟った
・資格を保持していたおかげで、メンタル系の肝入り事業の担当にしてもらえた(当時の職場ではわたしだけだったので)
【感想】
受けて損になることはないが必須でもないと思います。
よく受けた方がいいですか?という質問をみかけますが、
本当にどっちでもいい(笑)。
産業保健においてはこの資格でできる仕事が増える/収入が増えるということはあまりないように思います。(資格手当は別として)
ただ、当時のわたしは経験が浅かったので
「産業カウンセラー資格もある保健師」ということで企業や従業員の方にとっての信用や安心感につながっていたのではと思います。
(現在は資格更新していません)
【受講料】
30万くらい
フリーターで放浪していたわたしにはキツイ出費でしたが、
産業保健師になるために必要だと思ったので迷いませんでした。
(貯金という概念がなかったので慌てて稼いだ気がします)
2.労働衛生機関在職中【2006~2016年】
②~⑦は業務として受講しました。
研修や資格の名称は現在と変わっているかもしれません。
受講料は現在のものを参考にしていますが、当時とあまり変わってなさそうです。
その他、看護協会やさんぽセンターなどの細かい研修は除いています。
②THP心理相談員研修(中央労働災害防止協会)
基本的に全員受講していました。ベーシックな研修という記憶です。
【受講料】
約40,000~50,000円
③保健指導者養成セミナー
行動変容の理論から、健診データの捉え方、機序、
生活習慣のアセスメントなど実践に即したプログラムです。
所属先ではこちらのプログラムにそってOJTを受けていました。
2021年からは、
1日→半日×4日間
対面→オンライン に変更したようです。↓↓
【よかったこと】
・保健指導の基本を研修とOJTでしっかりトレーニングできた
・今でも知識と技術が基盤になって応用できている
【感想】
先輩方はこちらのプログラムの研究協力に携わっていたそうです。労働衛生機関の強みだったと思います。感謝です。
【受講料】
約50,000円
④特定保健指導実践者研修
業務に従事するために必要でした。ただ、③の学習がベースにあったので特別な研修という感じはしませんでした。
【受講料】
約30,000円
⑤登録産業看護師(日本産業衛生学会 産業看護部会)
現行の産業保健看護専門家制度の前にあったものです。
経験をある程度(3年?)積んでから研修を受講しました。
【よかったこと】
・実践と理論の学習ができた
・講師が豪華だった
・学会発表のサポートになった
・他の企業の看護職と接する機会になった
【感想】
実践と理論を結び付けて考えられるような、講義だったように思います。
自社では体験できないこと(環境測定のデモなど)
もあってよかったです。
【受講料】
0円?
⑥健康学習学会
いわゆる「健康教育」の学習のため
【よかったこと】
・石川雄一・善樹先生の存在を知れたこと(インパクトー!)
・健康教育ではなく「健康学習」という考えに共感
【感想】
ごめんなさい。会がエネルギッシュすぎました。
心がついていけず内容があまり入ってこなかった記憶です(笑)
今なら沢山のセミナーがありますが、
当時は健康学習という考え方で集団教育を学んだり実践できる場が少なかったのでエネルギー高めのやる気のある方が多かったのでは?と思っています。
のちにこちらの学会で学びと実践を継続した方々にお会いしていますが、元気で講師力があり各分野で活躍されている印象です。
【受講料】
約10,000円
⑦ヘルスカウンセリング(SAT療法)
行動変容のサポートに向けた対人支援の学習と実践のため
【よかったこと】
・SATの考えに触れたこと
・構造化された技法を知ったこと
・対人関係の理解にも役にたった
【感想】
受講してしばらくはロールプレイや業務の中で実践していたので、役立ち感が高かったです。
ただ、当時のわたしは上級編を自費で学習する向上心はなく時間経過とともにうすれていきました。
最近もう一度SATについて学びなおすのもいいかなと思っています。
HPはちょっと古めかしくみえますが(失礼)、
研修の中身はよかったはずです。
【受講料】
約30,000円?
⑧大学院(看護学修士課程)
研究的思考を学ぶ(研究の入り口を学ぶ)
複数の事業を担当してきたものの効果評価に疑問があったのと、特定保健指導の評価や品質管理について課題感をもっていました。
仕事はわりとスムーズにできるようになったものの自分の中でどこか行き詰った感覚がありました。
ちなみにわたしは短大卒業後に保健師学校に進学したので学士はありません。大学卒業と同等以上の学力があると認められれば受験資格をえられます(みんな認められそう)
専門科目の概要
・看護学研究法
・看護コンサルテーション論
・看護教育論
・看護クオリティマネジメント論
・地域看護学(講義・演習など)
【よかったこと】
・すべて!
・研究の基礎を体系的に学べた
・マネジメントに必要な学びに触れられた
・ゼミ生の背景が、地域保健、学校保健、精神看護、看護管理…と多様で看護の幅広さにふれられた
・アカデミアとのつながりができた
・国際保健や臨床心理、医療経営や医療ジャーナリズムなどといった他の専攻の講義も受講でき視野が広がった
・指導教授がすてきだった(とても大事)
・学割で小笠原に行けた🚢(とても… )
【感想】
事業評価や職場の人材育成において学びを共有でき、実務に還元できたのはよかったと思います。
しかしそれだけでなく、マネジメントやコンサルテーションも含めて体系的に学べたことは産業保健というビジネスの領域で働くうえで役立っています。
長期的かつ応用のきくリターンがあり、何より学ぶ喜びがありました。
指導教員も重要でした。
けして楽ではない研究を気持ちよく続けるためには、
自分の内側から湧きあがる動機と、
指導教員との関係が重要です(人間関係大事)。
彼女の人を育てる姿勢を身をもって体感できたことも宝物です。
【受講料】
約200万円/2年間
教育訓練給付金等は使用していません。
当時の収入は非常勤(週4日契約)で年収400万程度。
なので全く余裕があるとはいえません。
とはいえ、大好きな旅行や遊びを我慢したくなかったので、
空いていた実家に帰り、あわてて貯金をしました(遅い)。
また、収入を減らさなくて済むように大学院と仕事を両立できる働き方を職場に相談しました。
3.お金について
お金大事ですね。
学習のためには、基本的には金銭と時間が必要。
それに加えて、居住地や家庭の事情などが重なる難しさもあると思います。
もし本当に学びたいのであれば、
困難に感じる事情があっても、
どうしたらできるか?他の手段はないか?と考えられるといいと思います。
ただし、その時はひとりで考えずにぜひ経験者に相談を。
新たな視点に気づいたり思いがけない協力が得られることもあります。
例えすぐに行動できなくてもその後に役にたつかもしれません。
時々、自分は何もしていないのにネガティブな意見ばかりいう人がいますが、スルーしちゃってよいですね。
では実際のところ収入アップしたのか?
これについては、
大学院修了しても、その後の給与には一切反映しませんでした(笑)。
おそらく昇進昇格の機会にはなりえるのでしょうが、
わたしにとってそれは幸福感を上げるものではありませんでした。
ただ、長期的にみると、
わたしのキャリアの一部として積み重なり、他の経験と相まって現在の金銭報酬の支えになっています。
また時間の使い方にも余裕ができて幸福度は上がりました。
総じて、
金銭の有形資産だけでなく、自身の健康や自分にとって心地よい時間を確保できるなど無形の資産を増やすことができたと思います。
4.まとめ
保健師ライフ前半の学習をまとめました。
業務時間外で勉強することはほとんどありませんでした。
先輩方の有志の勉強会にも一度も行きませんでした(笑)
だからといって、無勉強ということではなかったように思います。
おそらく
・OJTがあった
・インプットしやすい環境だった
・実践の場が多かった
・リフレクションしていた
ので、業務を通した学習の循環がおこりやすかったように思います。
次は、独立してからの後半を記録しようと思います。
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