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L.O.P.E.S.S 【 Lunatic Of Party Endanger Suck Shit 】 狂人がパーティーを台無しにした件について 〜 北極ピアノテロ vol.2〜

先手を取れず苛立った便所男は執拗に2世に罵声を浴びせながらlopessのリハーサルは進んでいく。

重装備の2世は足を引きずりながら準備をしていた。

それを助けることもなく淡々と自身の準備をする雨男と芋男。

ニット帽の女は既に準備を終え、読書に耽っていた。

準備を終えたチームlopessは控え室へ向かう。



――――――――――――――――――――――――――

「ええか、先はとれんかった。まぁしゃあない、お前らがグズなせえや。やけど後の先は取るで。死ぬ気でやれや」

プレイボーイを読みながらやる気なさげに便所男は言う。

狭く、熱気がこもる控え室。

、、、

本番が近づき、怖いもの見たさの狂人たちが店内に集まり、ざわざわ、と音がしている。


狭い密室で、メンバーの体臭は獣のような臭いになっていた。


「ほな、いこか」





暗く澱んだ雰囲気。

便所男が客に丁重に挨拶をする。

その背後で静かにはじまる演奏。

アンプの上に腰かけるジェホバ2世。

痛みを押し殺し、震える指で弦を弾く。

機械のように、鍵盤を押す教師。ひょろ長い芋男。

長髪をゆらゆらさせながら赤い楽器を鳴らす雨男。

客席から太鼓をコッコッ、と鳴らすニット帽の女。

ドロリと、濁ったような音。

突き刺すように固い鍵盤の音。

茶化すような太鼓。

嗚咽を繰り返す便所男。

ずくんずくんと痛むような2世の音。

スキンヘッドの男はニヤニヤとその様子を眺める。



、、、 、



とわいとわい

とわい とわい とわい

痛み 痛み

月の光

焦げるにおい

がたりごとり

クーラーの排気音

氷の割れる音

とわいとわい

とわい とわい とわい

体内を流れる血脈

その音を聴く

感じる

掴めたり 掴もうとしたり

あなたがたは 狂っている

我々は 我々は、、、

、、、 、、、


便所男は2世のギターを奪い取り、スキンヘッドに叩きつける

激しい攻防が続く

夜は耽る


、、、





ざわざわとする店内。

息を切らし、膝をつく便所男。

見下ろすスキンヘッド。

「今日はこんなもんで勘弁したるわ」

勝敗は誰の目にも明らかだった。

「ええ試合でしたわ。でも次はこうはいかんので」

三戦の構えをといたスキンヘッドはニヤリと笑い、便所男の肩を叩く。

「終電の時間や。またの」

そう言ってスキンヘッドは、店主から報酬を受け取り、店を後にした。

便所男は折れたギターを杖代わりに立ち上がる。

その顔は10歳は老けたように疲れ切っていた。

「今日は俺らの負けや。まぁしゃあない。命があるだけましや」

そう言って観客の方を向き、丁寧にお辞儀をする。

「本日はありがとうございました」




負けはしたものの、試合は盛り上がり、商売は上々だったようだ。

店主から労いとして、lopessメンバーは料理を提供されていた。

雨は、やんでいた。

次の試合へ向け、改めて決意を胸にする便所男。

救急車で運ばれていくジェホバ2世。

既に帰路へついている芋男。

残飯を漁る雨男。

ニット帽の女は車の中で日記をつけていた。

そんな1日。テロがあった日。


fin

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