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「気候」市民会議という名の免罪符 vol.2

前回からの続き。

それでも自分は、この気候市民会議が
市民参画という形(手法)で市民自らの手で
気候危機解決に寄与する運動
(若しくはその礎)を作り上げていくことに
一定の必要性と希望を感じていた。

市民一人一人が意識を持って行動することにより
世論を形成し政治を動かし政策を変えていく。
各地域から声をあげていき地方自治体からボトムアップで
施策を作っていく。
なんて素敵なものなんだ。さすが発祥の地欧州。なんて思っていた。

さて、そんな気候市民会議も6月から本番が始まり、
今日時点で第5回までを終えている。
会議自体は次の第6回が最後となるが
実はその後からが本番といっても過言ではない。
市がちゃんと取組みを行い進めていくか
市政のウォッチドッグと市民の働きが重要になってくるからだ。

そしてここからが自身の加害性の話になる。

これまでの気候市民会議を振り返り
参加した市民の人物像を思い返すと
(これは完全に自分の主観だが)
全員いわゆる健常者である、という事だ。
そこには車イスを利用している人も
視覚や聴覚に困っている人もいないように見える。

参加市民は無作為抽出で選ばれ、
その後参加の意志を示した人の中から
参加枠の上限の数だけ選出される(する)。
(参考までに、前回と同様のリンクを貼っておく↓)
https://www.tokyo-np.co.jp/article/209283

無作為抽出した中にはたまたま、しょうがい者がいなかったのかもしれない。
無作為抽出した中にはしょうがい者がいたが、参加しようと思「わ」なかったのかもしれない。
無作為抽出した中にはしょうがい者がいたが、参加しようと思「え」なかったのかもしれない。
無作為抽出した中にはしょうがい者がいて、参加の意志を示したが選出されなかっただけかもしれない。
実際のところはどうか分からない。
(ここではしょうがい者と表記するが、よりよい表現は未だ模索中である…)

では例えば、実際に聴覚しょうがいを抱えた方が
参加市民にいた場合問題なく会議に参加できていたのだろうか。
、、、いや、できなかったであろう。
当然のように手話通訳士がいなかった。
筆談ができるような環境も用意されていなかった。
そこには社会的障壁を除去するような
合理的配慮の提供があったわけではなかった。
そしてそれは会議設計を行っている準備期間中にも
気にする発言をする人は誰一人いなかった(自分の知る限りでは)。
そう、私自身も含めて。

一例を挙げたが、何も聴覚しょうがいに限った話ではない。
私が私自身に感じている加害性の本質はそこではない。
この気候市民会議そのものが、マッチョで新自由主義的で
非障害者優先主義、健常者優先主義、能力主義的なところにある。

会議の中で参加市民は、気候危機に関する現状と対策について
インプットとアウトプットを行う。
会議当日の時間や会議の回数(全6回)が限られている中で、
毎回一定程度の成果が求められる。

参加者の中には当然のことながら様々な特性の人がいるだろう。
言語化するのが苦手な人、知識を咀嚼するのに時間を要する人
だがこれらの特性の人が充分に意見を発することができるような会議だったか。
間違いなくそうではなかった。

限られた時間や決まった回数で成果を出さなければいけない。
それは一定程度正しいとは思う。
なぜなら「気候変動は紛れもなく危機的で喫緊性を伴うもの」であるからだ。
だけど、それを大義に掲げ、会議設計の都合上
ついてこれない(若しくはついてくるのが難しい)人をふるい落とし
声(意見)が挙げられない、若しくは挙げにくいシステムで
運営を行ってしまった事に非はないのだろうか。
まさしくその在り方こそ、今の社会の縮図なのではないか。

非民主(独裁)的、経済成長至上主義(資本主義的)、新自由主義的、
男性優位社会、植民地(帝国)主義、などがノーマルな社会において
抑圧や搾取、無いものにされてきた、今でもされている声が
数え切れない程あった(ある)はずではないか。
それを「気候」市民会議の名の下、
本来なら積極的に批判し反旗を翻していかないといけない
既存のシステムと同様のやり方で再生産してしまったこと、
自分が一番嫌でやりたくないこと、
本来ならその在り方を変えたいと活動している
アクティビストであるはずなのに加担してしまったこと。
いかに自分が特権的な立場にいるか痛感してもしきれない。

まだ最後の第6回会議が残っているが
この時点で自分のやれることは既にとても限られていると思う。
というより、限りなく無いのではないかとすら思う。
今から何をしようとただの自己満の域を出ないかもしれないが
だけどそれでも、やれることをやろうと、
それがせめてもの禊だと、そう思っている。

vol.2終わり

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