現代語訳「我身にたどる姫君」(第一巻 その31)
夜とて何年も安眠できぬまま、心ならずもこの世に生き永らえてしまったが、ただどうにかして皇后宮に自分の思いを伝える機会が欲しいと人知れず心中で悩んでいた。しかし、わずかの情愛でも表に出てしまうものなので、中宮は面白くなく、いつも恨みを買っていた。ましてや、「忍ぶの露」があるとは夢にも思っていなかった。
(続く)
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皇后への恋慕に苦しむ関白の続きです。人臣最高位の座にいながら、相当未練がましい様が描かれています。好色な男のよくある描写ですが、見方を変えると作者が作り出した「魔性の血」の空恐ろしさを感じます。
ところで、最後にある「忍ぶの露」は何を意味するのでしょうか。「忍ぶ」は「人知れず」という意味で、「露」ははかないものの例えとしてよく引用されます。関白が想像もできない「誰も知らないはかないもの」の存在を提示しつつ物語は続きます。
それでは、また次回にお会いしましょう。
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