古語訳『僕は、まだ』(ななみつき)

『僕は、まだ』(作詞:ななみつき)

  https://www.nicovideo.jp/watch/sm35893923
  https://youtu.be/pAcn6-Qv764

【 古語訳 】

s-『僕は、まだ』(ななみつき)_1

s-『僕は、まだ』(ななみつき)_2


懸《か》きたる夢に置き処《どころ》なきこと
思ひ寄りしは暁《あかつき》の市中《いちなか》で
一の車に揺られ見放《みさ》きたるまま
玻璃《はり》の窓を伝ふ雨に触れぬ

止まりしままの沙漏《さろう》と
流るるこの世の移りを
見ゐるばかりの吾《われ》が
後ろに負《お》ひたる
あやに重き葛籠《つづら》の中

入れたるままの思ひを
吾《われ》は未《いま》だえ放てず
絡《から》繰《く》り仕掛けの音《ね》の文《あや》無き歌を
無沙汰《ぶさた》に差し置きける
弥勒《みろく》の世なむ在《あ》り給ふや

選び渡りし言の葉に味気《あぢき》無ければ
取り立てたるはただ虚言《そらごと》のみ
昏《く》れ行く武蔵《むさし》の城下
玻璃《はり》の窓に映りし吾《われ》から目を側《そば》めぬ

未《いま》だ見つけられず

匂《にほ》ひたる一の覚えは去りて
残りたるは凡夫《ぼんぶ》の吾《われ》のみ
忘られば果てが来《こ》むや
今はただ思ひ憂《う》きことなれば

夢の中に置き捨てにし思ひを
吾《われ》は未《いま》だ見つけられず
つれなき音《ね》で綴《つづ》りし詮《せん》無き歌を
聞き入りたる人の在《あ》る
弥勒《みろく》の世ぞ求めて
歌はん


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