現代語訳「我身にたどる姫君」(第二巻 その15)

 以前から「命に替えてでも」と思い焦がれていた女三宮の容姿に酷似しているが、姫君のひたすら美しく愛らしいところはこの上ない。すっかり心を奪われた権中納言は、じっと見つめながら心中でどうしようもなく取り乱していた。
「このような時に、古《いにしえ》の人も言ってはいけないことを口にして過ちを犯したものだ」
 あれほど恋い慕っていた女三宮への思いを忘れてしまいそうな姫君の美貌に、我ながらあきれたことだと権中納言は思った。
(続く)

 姫君は父・関白が連れてきた異母妹だと頭では理解しているものの、その美しい容姿にすっかり心を奪われ、道ならぬ恋心を必死に押さえている権中納言の姿が描かれています。
 以前にも触れたように、皇后の忘れ形見である姫君と女三宮は互いに容姿が似ており、しかも男たちを惹きつけてやまない「魔性の血」を共に受け継いでいます。

 それでは、また次回にお会いしましょう。


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