現代語訳「我身にたどる姫君」(第二巻 その5)

 北の方以外に愛する女がいるとは思いも寄らなかった権中納言は、にわかに思い乱れ始めた関白の様子に合点がいかず、「いったいどういう事情なのか」と不審に思っていた。しかし、これほどの思いを長年知らなかったのも恥ずかしく、事情を尋ねる人には「父には昔から他に女がいたようだ」と答えていた。
(続く)

 姫君は関白邸に引き取られることになりましたが、そこには関白の息子である権中納言も住んでいます。皇后の死去後、関白があからさまに取り乱し、果ては見知らぬ少女を自分の娘と称して迎える様を目の当たりにし、権中納言は事情が飲み込めずに首をひねっています。
 ちなみに、権中納言は屋敷にやって来た腹違いの妹が、音羽山で心を奪われ、いつの間にか姿を消してしまった女だとは気づいていません。

 それでは、また次回にお会いしましょう。


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